ホーム > インタビュー&レポート > より美しく、よりマッシブに。原点回帰の傑作『音速の世界』を手に ツアークライマックスのBIGCATに向かう音速ラインにインタビュー
――2月に発売されたニューアルバム『音速の世界』は“これぞ音速ライン”という、バンドの磨き上げられた姿だなっていうのが率直な印象だったんですけど、今回はどういうアルバムを作ろうというのはあったんですか?
藤井(vo&g)「今まさに言った(笑)“これぞ音速ライン”というものが結果出来ましたね。だからタイトルもストレートに『音速の世界』と付けたんですけど」
――’09年リリースのベストアルバム『おとし玉~ベリーベスト音速ライン』も1つの区切りだったと思うんですけど、紆余曲折を経て原点回帰しようというムードがあったんですか?
大久保(b)「最初に僕が言い出して」
藤井「“藤井さん、昔みたいな曲の作り方しなよ”って言われて。でも、言われたら意識しちゃって出来なくなって」
大久保「確かにそうなるわな(笑)」
藤井「で、一旦はうやむやに煙に巻いて(笑)、徐々に昔に戻っていったという」
――感覚を取り戻すというか。
藤井「宅録好きだった頃の自分に戻ってね」
――そう提案したっていうことは、何か思うところがあったんですか?
大久保「今までの4枚のフルアルバム『風景描写』(‘05)『100景』(‘06)『三枚おろし』(‘07)『風恋花凛』(‘08)って、ちょっと元の路線というか、僕ららしさとは段々ズレてきてるような気がしちゃって。だったらベストも出たことだし、1回仕切り直してみたいなって思ったことがきっかけなんですよね」
――藤井さんは自分の中での曲の作り方の変化だったり、音速ライン自体の楽曲性の変化みたいなものは感じながらやっていたんですか?
藤井「楽曲というより、“切なさ”を捉える視点が変わったというか」
――なるほど。
藤井「思い出を振り返って切なくなるというよりは、ちゃんと今を生きることに対する切なさの方に変わった」
――バンドとしてキャリアももちろんなんですけど、人としても年齢を重ねているから、やっぱり感覚は変わってきますよね。
藤井「そうですね。ホントに歳をとればとる程、一日一日大事にしなきゃって思うんで、後ろ(=過去)を向いて切なくなってる時間はなくて。ちゃんと今を生きて、その先にちゃんとした未来があるっていう考えじゃないと、人生を楽しめないっていう感じですね。やっぱりね…みんなでポジティブなメッセージを鳴らした方が、音楽はいいんじゃないかって」
大久保「うんうん」
藤井「一日一日を噛み締めて、みんなで前を向いてポジティブにいこうっていう…そういう曲の方が今はたぶん求められているんじゃないかっていうのもあったし、自分でも聴きたかったし」
――やっぱり年齢も20代とかだと、“ポジティブ”1つでもちょっと恥ずかしかったりね。
藤井「そうそう(笑)」
大久保「カッコ悪いよってね(笑)」
――どの曲も最後に希望の光を持たせても…みたいなね(笑)。ホントに人生一周廻って、結局そうじゃないと何のために音楽を聴いて、それに携わってるのか? みたいなことにもなりますもんね。
藤井「泣きたくて音楽を聴く人ももちろんいると思うんですけど、どっちかって言うとみんなでポジティブに今を鳴らす…その方が絶対いいんじゃないかって。その方がライブも楽しいと思うし」
――インディーズ期や1stアルバムの頃の“これぞ音速ライン”っていうあのメロディライン、コーラスの気持ちよさを踏襲しながら、+強さがあるっていうのを、今作では特に思いますね。やっぱり“ヤワ”じゃないっていうか。その辺はレコーディングでも意識しながら作ったりはしたんですか?
藤井「“希望を鳴らす”っていうのは、結構テーマとしてありました。聴いてて思いっきり切なくて胸が苦しくなる、っていうだけじゃない方にサウンドは持っていきましたね」
大久保「昔とはだいぶ音に対する考え方とか作り方は変わってきていて。今回は特になんですけど、ドラムの音をかなり吟味しながら作りましたね。いつもだったら1つ元になる音を作ってそこからバラして使っていく感じだったんですけど、1曲1曲作り直したというか。“曲が呼んでる音はコレなんだ”っていうのが自分の中にもあったので、そういうところは今回はだいぶ変わったと思いましたね」
――ドラムがレギュラーメンバーでいないだけにね。
藤井「そうなんですよ。それが2人で活動している意味というか。固定メンバーじゃないから遊べるっていう部分があるから、そこは考えましたね」
――今回はベストアルバム以降に書き下ろした曲が多いんですか? それとも過去の曲も入ってる?
藤井「いや、全曲書き下ろした新曲ですね」
――それもなかなか珍しいんじゃないですか? かなり昔に作った曲だけど寝かしてました、みたいな曲が、過去のインタビューを見ていても今まではだいたいアルバムに1~2曲はありそうでしたけど。
藤井「確かにそれはそうですね。制作期間が2年半あったんで、出来たら録って出来たら録ってって、今回の曲以外に10曲くらいまだ録ってあって。昔の曲を引っ張り出す必要もなかったんですよね」
――ベストアルバム以降にその創作モードに入って書き下ろした曲たちが、アルバムを満たすだけの数とクオリティがあったってことですね。
大久保「そんなのホント初めてですね」
藤井「曲はいっぱいあるからね。携帯にまだ300件くらい入ってますから」
――マジで!? 鼻歌とかで?
藤井「まぁギターだけとかなんですけどね。だからこのままいくと、作った曲を全部リリースする前に死んじゃいますよ(笑)」
――(笑)。
大久保「画家みたいに後で発掘されるんじゃないの?(笑)」
――後でデモトラックス集とかBOXが出てね(笑)。
藤井「あの世でチェックしときます(笑)」
大久保「レーベル作って出しときます(笑)」
――何十年後かにインタビューしたら大久保さんしかいなくて、あのとき笑って話してたのに…って(笑)。あかんあかん!(笑)
大久保「コワイコワイ(笑)」
――今回はタイトルもバシッと『音速の世界』と言い切って。
藤井「もうおちゃらける必要はないなと。『三枚おろし』とかね(笑)。もう今回は直球でいいんじゃないかって」
――さっきの話にもありましたけど、ド真ん中にいくのってなかなか振っ切れないとできないですもんね。しかし、このメロディとドライブ感…聴いててめちゃくちゃ気持ちいいです。
藤井「ありがとうございます!」
――今回のアルバムは出来上がったときに今までと違う達成感はありました?
大久保「いや~それはすごくありましたね」
藤井「ホントに一点の曇りもないって言える、やり切った感があります」
――振り返ればアルバムの1枚目はまず“らしさ”を出して…。
藤井「2枚目はそれだけじゃないって部分を出してって…そこからいろいろやってきて、ようやくひと回りしたんだと思います」
大久保「修正に次ぐ修正をしてね(笑)」
――アハハハハ(笑)。もちろん核は変わらないんですけど、基本前作に引っ張られますからね。前回こういうものを作ったから今回は…って、モノを造る人としてはあるでしょうし。
藤井「そうですね~。直近のミニアルバム『空になる』(‘10)が、移籍問題もあったし結構不安だったのもあって、歌詞を読み返すと“つながりたい”ばっかりで(苦笑)。そこでツアーを廻って、長い間リリースもなかったのにライブにものすごく集まってくれて…これは確実にみんなとつながってるって思えたので、それもデカくて。やっぱりお客さんみんなと歳をとっていきたいし、そうやっていくには、前を向いて、ポジティブなメッセージをみんなで鳴らせたら一番いいですよね。だから、このアルバムが生まれたんだと思う」
――ベスト盤のリリース、レーベルの移籍もそうですけど、ライブから得た信頼感が大きかったんですね。
藤井「ホント、ありがたいなぁって」
――音速ラインって、どメジャーな音楽シーンがある中でちょっとわき道を並行して走ってるような…そこに飛び込んで競争してるというよりは、自分たちでマイペースに下道を走ってるようなイメージがあるんです(笑)。
大久保「確かにそれはある(笑)」
藤井「メインストリームにはいかないという(笑)」
――けど、ちゃんとその時代の流れにはついて来てるっていうね。スゴいプロデューサーがバックについたとか、大型タイアップで展開されてとかじゃない中で、こうやってちゃんとシーンをサヴァイブして、ちゃんとライブをやれば楽しみに待ってる人がいるって、スゴいことだと思いますよ。
藤井「そうですよね。難しいことですよね。やろうと思ったら出来ないかも…狙ってやるもんじゃないというか」
――そして、今回も結構な本数のツアーを廻っていますね。
藤井「今までで一番長いですね。初めてです」
大久保「いつもの倍くらいありますね」
――キャリアを重ねて一番体にムチ打つという(笑)。
大久保「ハッハッハ(笑)」
藤井「でも、(大久保は)まだ俺のデビューした当時の年齢になっただけですから」
大久保「それよく言うよね~」
――そうなんや!
藤井「そりゃまだ体力ありますよ」
――それにしても、デビュー=上京ということもなく、一個人としての生活環境をちゃんとキープしつつ音楽を続ける、しかもメジャーでそれをやり続けられているのはスゴく貴重ですね。
藤井「確かに」
大久保「逆に(藤井さんは)デビューが遅かったのが間違いじゃなかったのかもね。デビューがもっと早ければ、周りに流されて続けれられてなかったかもしれない」
――東京に行って、違う環境になって、あれやってみてこれやってみてなんかよく分からない方向に行って(笑)、それでイヤになっちゃって、やめなくてもいいのにヘンに音楽やめちゃうっていう人もいるんでね。人としてもバンドとしても軸をちゃんと持っていたから、わき道を走っててもちゃんと今ここに着いてる(笑)。
大久保「ハハハ、確かに(笑)」
――ライブに向けては何かありますか?
藤井「今回はホントにメッセージがポジティブなので、ライブを観終わって“よし、明日もがんばろ”っていう気持ちになってくれたらいいなぁ」
大久保「今回のツアーはホントに本数が多いし、割といっしょに各地を廻ってくれるファンの人もいるので、そういう人も飽きさせないようなセットリストで、完璧な流れで魅せたいなと。そこで培ったものを最後の大阪・東京で爆発させたいですね」
――3月、4月に各地を廻って、5月にフィナーレ的な感じで。5月13日(金)の心斎橋BIGCATは、大阪ワンマンとしては過去最大の会場ですから、盛大なクライマックスになりそうですね。本日はありがとうございました!
Text by 奥“ボウイ”昌史
(2011年5月11日更新)
Album
『音速の世界』
発売中 2800円
YOSHIMOTO R and C co.,LTD.
YRCN-95154
<収録曲>
01.マーチ
02.サンデーモーニング
03.打ち上げ花火
04.深海のkkr
05.music
06.SとNと赤と青
07.二人のレシピ
08.イマジン先生
09.マジックワード
10.空はマボロシ
11.天才207
12.今日を生きよう
13.4track children
おんそくライン……写真左より、大久保剛(b)、藤井敬之(vo&g)。’03年結成。’05年にシングル『スワロー』でメジャーデビュー。同年末に菅原健生(ds)が脱退し、現体制に。ソングライティングを手掛ける藤井が福島県郡山市在住のため、他のメンバーが福島まで出向いて曲作りを行うという、切なくも懐かしい珠玉のメロディとドライブ感のあるサウンドが持ち味の“スローライフ主義”遠距離ロックバンド。現在までにシングル11枚、ミニアルバム5枚、アルバム4枚、ベストアルバム2枚をリリース。また、先の東北大震災を受け、藤井が発起人となり被災者の支援を目的とした『ONandON』(=絶え間なく)というプロジェクトがスタート、チャリティーソング『一人じゃない』を、5月18日から配信開始。6月8日(水)には現在展開中の全国ツアー『音速ラインTOUR2011音速の世界』の中から、藤井の出生地であり活動拠点、現在も居住している郡山HIP SHOT JAPANでのライブを全編収録したDVDを含むシングル『Nir』を、完全限定生産でリリース予定。
音速ライン オフィシャルサイト
http://onso9line.com/
『音速ライン TOUR 2011 音速の世界』
【大阪公演】
チケット発売中 Pコード125-377
▼5月13日(金) 19:00
BIGCAT
スタンディング3000円
清水音泉■06(6357)3666
※小学生以上は有料、未就学児童は入場不可。
チケットの購入はコチラ
【東京公演】
チケット発売中 Pコード124-268
▼5月20日(金) 19:00
STUDIO COAST
スタンディング3000円 2F指定-3000円
VINTAGE ROCK■03(5486)1099
【東北振替公演】
一般発売5月14日(土) Pコード138-326
▼6月8日(水) 19:00
仙台 darwin
オールスタンディング3000円
ノースロードミュージック仙台
■022(256)1000
※この公演は4/16(土)の振替公演です。
チケットはそのまま有効。詳細は問合せ先まで。
一般発売5月28日(土) Pコード124-370
▼6月18日(土) 18:00
club SONIC iwaki
オールスタンディング3000円
ノースロードミュージック仙台
■022(256)1000
※この公演は5/7(土)の振替公演です。
詳細は問合せ先まで。