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南日本放送・MBCラジオ、FM WINGのパワープレイにも
抜擢された龍之介のオリジナルアルバム『ともしび』
約2年ぶりにリリースされた自主レーベル第4弾作品に
込められた思いやライブ活動についてインタビュー! (1/2)

龍之介というアーティストがいる。メジャーでの活動を終え、2005年に自主レーベル「UNBALANCE」を立ち上げ、これまでライブ盤を含めアルバムを3作、リリースしてきた。そしてこの春、第4作目となるアルバム『ともしび』をリリースした。
アーティスト活動をしていく中で経験した様々な出来事を元に作られた7つの曲は、ワルツあり、懐かしさを覚えるフォークソングあり、カントリーあり、ブルースありと、まさに七色の光で彩られた、一曲一曲に聴き応えのある作品に仕上がっている。(公式サイトに“試聴用再生機”があるので、ぜひそちらで聴いてみていただきたい!)
そして、その『ともしび』を抱えて、5月から全国ツアーへと旅立った。関西では京都・磔磔でのライブを経て、5月19日(土)に大阪はPOTATO KIDに登場、ワンマンライブを行う。そこで、この機会に最新アルバムについてはもちろん、自主レーベルで活動することや、全国ツアーについて、そして『ともしび』が2つのラジオ局での5月度パワープレイに選ばれたことなど、話を聞いた。

--ぴあ関西版WEBです。今日はよろしくお願いします。4月25日に自主レーベルのUNBALANCEより4作目となるアルバム『ともしび』をリリースされました。まず、この『ともしび』のコンセプトから聞かせてください。

龍之介:誤解を生む表現かもしれませんが、当初は『ともしび』というタイトルじゃなくてもよかったんです。最初は、『龍之介 UNBALANCEレーベル作品集 第4作』とか、そういうタイトルでいいかなとか思って。3作目の『御伽奏子』(アルバム/2010年リリース)の時もそうでしたが、なぜかというと、作品一つ一つが色濃い世界を持っているからなんです。1曲1曲に情景が浮かぶし、ストーリーがあるし、ある意味、短編映画みたいなもので。7本の映画を撮って、それをひとまとめにした映画作品集があったとして、その作品集にタイトルをつけるのは難しい。ただ、いずれにせよタイトルは必要だから、何を作るにしても、ずっと前から“次のアルバムは『ともしび』にしよう”と思っていたんです。それからだんだん、いろんなことがリンクしていくんですよね。

--タイトルはいつから考えていたんですか。

龍之介:『御伽奏子』を作っている頃(2009年~2010年)から考えていました。次のアルバムは『ともしび』だと思っていて。言葉に温かみがありますしね。そして、実際に『ともしび』というアルバムを作って、出来上がりとしては、すごくシンプルな編成で、歌詞を歌い上げるという、龍之介らしい作品になりました。

--先ほど“だんだんリンクしていった”とおっしゃいましたが、収録曲をはじめ、様々な要素が『ともしび』という言葉に、意識せずとも集まってきたという感じですか?

龍之介:そうですね。『灯りの消えた街で』という作品の軸となる曲があって、それが入っているアルバムとしても『ともしび』というタイトルは合っているなと思いました。アルバムタイトルを先に決めるのは、アルバムタイトルそのものに強い意識を置いてないからなんですけど、だけど今回は、蓋を開けてみたら『ともしび』というタイトルに吸い寄せられるように、作品、アレンジ、選曲、音作りと、いろんなものが「ともしび」という言葉に吸い寄せられたんだと感じましたね。

--作品を作られる間に訪れた出会いも、そうですか。

龍之介:はい。12月に大槌町の吉里吉里という町に行って、そこで一晩、焚き火を囲んで歌を歌ったり、酒を飲んだり、飯を食って、たくさんの話をして。その日は偶然にも月食があって、たくさんの星を見て。そういことも繋がってくるというか。

--吉里吉里での出来事も、アルバムに反映されているそうですね。

龍之介:吉里吉里ではapeというところでライブをしたんですが、焚き火を囲んでのライブで。焚き火は、『ともしび』と合っているし、ここの炭を持って帰りたいと思って、apeの店長さんの了承を得て持って帰ったんです。それで、その炭で絵を描いて。そしたら、ジャケットのデザインを手がけてくれた兼古さんが「この絵は子どもが描いたみたいだけど、すごくいい絵だね」と評価してくれて、それをモチーフにジャケットデザインのアイデアが練られて、作品化に至りました。

--そういうふうに、何かに吸い寄せられるようにして集まってくることをどう捉えますか?

龍之介:『ともしび』は制作期間を9ヶ月ぐらいかけて完成させたわけですが、出来上がるまで『ともしび』のことばかり考えてきたからか、いろんなことが偶然のような必然のような……。よくわからないけど、とにかく一つ一つの整合性がついていくんですよね、不思議と。これは、思いついてぱっとやってもそうはならないんですよね。じっくり考えて、ちゃんと練ってやっていくと、ある一つの到達点にたどり着いて。それを思うと、アルバムを作るために時間をかけたかいがあったなと思いましたね。

--その到達点は、練っていく間に見えてきたものですか?

龍之介:そうですね。『灯りの消えた街で』という曲は、震災をきっかけにして生まれて、アルバムに入れていますが、アルバムはあくまでも龍之介の「作品集」だから、あんまりそういうことを声高に言いたくないというか…。震災を経て生まれた曲があるとか、被災地でもらった炭で絵を描いたとか、そういうことを声高に言えない理由は、「これはひとつの作品集である」という思いがあって、そこをわかってもらいたくて…。だけども、「灯りの消えた街で」のような鎮魂歌とも言えるような曲も含まれているし、被災地の方に一日でも早く元の生活を取り戻してほしいという思いもあるから、こういうけっして派手ではないジャケットになりました。あと、タイトルが『ともしび』ということで、「温度」みたいなものも伝えたかったんです。

--そうやって声高に言いたくないと思っても、震災はみんなが経験したことで、みんが避けて通れなかったことですよね。いろんな経験をしていく中で歌を作っていく限り、そこは通ってしまいますよね。

龍之介:そうなんですよね。とはいえ、どうしても避けては通れないですよね。日本中が大変な思いをしているという状況で、アーティストの表現の一つは、世相を反映することだと思いますし、今を生きている人が今を描くとそうなるのは必然で…。もちろん、あえて作品にしない人もいると思いますが…。

--そうですね。ただ、この『ともしび』を聴いて思ったのは、龍之介さんのほかの作品と比べての一番の違いは、龍之介さんの歌によくある”痛み”がないことだったんです。

龍之介:『ともしび』は、優しい歌や、ファンタジックな歌、時に懐かしい感じだったり、元気出そうよってという曲があって、くすって笑ってもらえたらいいなと思うようなへんてこりんな歌も入れてみたり、で、最終的には「おやすみ」で終わる(笑)。それは、痛みを排除しようとしてそうしたわけじゃなくて、何か本能的に…。僕の歌には思いっきり負の方に寄った歌がたくさんありますが、今回そういった歌が入っていないのは、声高に言いたくないと言いつつも、やっぱり震災の影響が大きかったと思います。

--今のこの時代に出す作品としては、自然の成り行きでしたか?

龍之介:自然とそうなりましたね。本当にまっすぐなアルバムだと思います。意図してやったわけじゃないから、自分で言うのも恥ずかしけど(笑)、時間をかけて作って、歌を通じて優しい気持ちになってほしいとか、緊張状態を解いてくれたりとか、くすっとでもいいから笑ってほしいとか、そういうことを伝えたいと思ったんだと思います。今、被災地が一番大変だけど、日本中も大変ですよね。苦しみとか、痛みとか、そういうものと闘うことにも疲れてきて。ただでさえ心が緊張状態で、悲しかったり、落ち込んだりして。そういうところに悲しい歌をぶつけるというのは違うというか。だから、そうなっていったんですよね…。

--前作の『御伽奏子』をリリースして2年が経ちましたが、『御伽奏子』から全国ツアーをするようになりましたよね。それより前は東名阪と札幌でライブをして。そういった全国ツアーでの経験も含めて、この2年での心境の変化を聞きたいのですが。

龍之介:全国を旅していると、昔から応援してくれているファンの方たちだけじゃなくて、初めて会う方ともたくさん会いますよね。いろんな場所に行って、お客様からお金を頂いて、演奏する。その時に、ライブをやるからにはやっぱり、にこっとして帰ってもらいたくて。心のとげを抜いたりとか、凍てついたものを解かしたりとか、しばらく笑ってなかったけど僕のつまらないMCで笑ったとか、聴いてくれる方にそういうふうに思ってもらいたいと思うようになりました。

--現在は自主レーベルで、お一人で運営していて。ライブでのお客様とのやり取りもダイレクトだと思いますが、そういうことも大きいですか。

龍之介:大きいですね。本当に大きい。メジャーでやっていた時は、マネージャーさんというフィルターがあったんですよね。頂くメッセージ1通にしても、マネージャーさんのフィルターがかけられて、“あなたの作品は素晴らしいですよ” “あなたのことが好きですよ”っていうようなことだけが僕に届いてという温室栽培で。でも、自分でやるようになって雨風にさらされるわけじゃないですか。ライブの感想でも、正直なご意見を頂きます。そういう経験は、要素の一つとして自分の作品に反映されていますね。

--そういう中で、いろんな思いが芽生えていって。

龍之介:そうやって、いろんな人との出会いとか、自分が経験したことが色濃く作品に出るということは、作品に真っ直ぐ向き合っている証拠だと思うんです。そこは正直に、まっすぐに、こうありたいという自分の理想に向かっているという自負はありますね。

--『ともしび』は今までの作品の中で一番納得するものができたと、公式サイトの「龍之介の手記」に書かれていましたね。

龍之介:はい。ただ、常に自分の作ったものに満足していないというか。これはものを作る人の性分だと思うんですけど、気持ちはもう次に向かっているというか、“もっともっと”と思っている自分がいるんですよね。ただ、この作品は、龍之介が2012年という、震災の翌年に出したアルバムであり、唯一無二のとてもいい作品になったと思っています。2012年の龍之介が今、この日本に放ちたかったアルバムで、これからこのアルバムも背負って生きていくわけですが、「龍之介というアーティストが2012年、この世に残した作品です」と思うと、自分ではよくやったと思います(笑)。



(2012年5月17日更新)


Check
2000円(税込)/UBLC-0004/2012.4.25発売

『ともしび』

01. 夢を見上げて
02. 或る庭師のワルツ
03. 灯りの消えた街で
04. 線香花火
05. ドントウォーリーマイフレンド
06. うわさのホーボーおじさん
07. RIVER

公式サイトの“視聴用再生機”はこちら!

●公演情報

龍之介CD発売記念ツアー2012
「ともたび」

▼4月22日(日) 下北沢LOFT
▼5月12日(土) 熊本 BATTLE-BOX
 [共演]トラックマツモト(OA)
▼5月13日(日) 福岡 B.B. Kenchan
 [[共演]鬼平ブルーストリオ〔坂田“鬼平”紳一(Dr.Vo)/染維宏一(Ba.Vo)/山本慎也(Gt.Vo)〕
▼5月15日(火) 広島 OTIS!
▼5月17日(木)京都 磔磔
 [共演]アッシュ&ザ・トレイズ(村上“アッシュ”篤史バンド)/バギィ真平
▼5月19日(土)大阪 POTATO KID
▼5月20日(日)名古屋 SLOW BLUES  
▼5月27日(日)千葉市若葉文化ホール
▼6月1日(金)郡山 ♯9  
▼6月2日(金)盛岡 Club Change 
 [共演]松本哲也 (Vo&Gt.松本哲也 / Gt.石川照幸 / Ba.志田明彦 / Dr.照井仁)
▼6月3日(日)八戸 いわぶち響堂
▼6月5日(火)函館 想苑 
▼6月8日(金)札幌 mole  
▼6月9日(土)札幌 musica hall cafe   
▼6月10日(日)旭川 アーリータイムズ 
▼6月12日(火)帯広 Home Bound
 [共演]さざなみしおん
▼6月13日(水)釧路 えいが館
 [共演]ヒートボイス

『ともしび』発売記念ツアー2012
「ともたび」ダイジェスト
龍之介/『夢を見上げて』


『龍之介CD発売記念ツアー2012 「ともたび」ツアーファイナル公演』
▼6月23日(土)19:00
恵比寿天窓.switch
前売3500円(整理番号付)
当日4000円
※1drink別。

[出演] 龍之介(ボーカル、ギター)/畠中文子(ピアノ)/阿部美緒(バイオリン)/河辺靖仁(バイオリン)/田中景子(ビオラ)/大沼深雪(チェロ)/山本慎也(ブルースハープ)

[問]龍之介事務所アンバランス
unbalance@e-mail.jp

龍之介公式サイト
http://www.ryu-web.jp/

●プロフィール

龍之介

りゅうのすけ/1978年生まれ、千葉県出身。趣味は将棋、園芸。2000年、プロデューサーに頭脳警察のPANTA氏を迎え、ビクターエンタテインメントよりシングル『ラブソング』でデビュー。以降、2002年までにシングル4枚、アルバム1枚をリリース。その後独立し、2005年に自主レーベル「UNBALANCE」を立ち上げる。ライブは、東京、名古屋、大阪、福岡、札幌を中心に、全国各地開催している中、下北沢ロフトでのワンマンライブは恒例となっている。ギター弾き語りを中心に、ヴォーカルギター、バイオリン、チェロ、ウッドベース、ピアノ、パーカッションの6人編成による、通称「アンバランスサーカス楽団」によるものや、龍之介の唄とギター、ウッドベース、ピアノの3人編成、そして様々なアーティストと積極的にコラボレートするなど、演奏スタイルは多岐にわたる。4月25日にビクター時代含め通算5枚目となるアルバム『ともしび』をリリースし、現在はCD発売記念の全国ツアーを敢行中。