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兵庫県立芸術文化センター「生で聴く“のだめカンタービレ”の音楽会」に注目のピアニスト、石井琢磨が登場!たっぷりと語った
「のだめ」、YouTube、そしてウィーンでの生活について (2/2)


クラシック音楽が自然に聴かれるためのきっかけになれば


■"TAKU-音TVたくおん" 観ました。すごくたくさんアップされているんですが、ウィーンのカフェで飛び込みでピアノを弾かせてくださいって交渉する動画とか、面白いですね。あれもクラシックを身近に、という活動の一環なわけですね。
https://www.youtube.com/@TakuonTV/about

石井心がけているのは誰も傷つけないこと。これを一番最初に掲げていて、その次にクラシック音楽をどう聴いてもらえればいいだろうか、という課題があるわけです。演奏動画だけをポーンと上げてもなかなか観てもらえない。そこを工夫して、だったら向こうはカフェ文化だし、自分はすごくスイーツが好きなので、もし弾いちゃダメって言われてもスイーツは食べられますから、甘いものを食べて楽しくおしゃべりして、交渉してっていうところから企画にしたら面白いんじゃないかっていうことで始めたんですよ。

■楽しんで、味わって、音楽も聴こえてくるように...。

石井そう。だから観る方は、初めは演奏交渉の動画?と思って見始めるわけじゃないですか。だけど最後まで観るとクラシック音楽っていいなっていうことがわかる構成になっているんです。僕もwin-winなんですよ。だって甘いもの食べられるし。

■日本でもそうなればいいですね。飲んだり食べたりおしゃべりして楽しんでいる中に、音楽もあるっていうような文化になれば。

石井それがクラシックになるとみんなちょっと身構えちゃうところがもったいないな、とウィーンに10年ぐらい住んでいて思うんです。やっぱりいろんなところでワルツとかが普通に流れてくるんですよ。日本でクラシックって、なかなか当たり前のようには流れてこないでしょう?そういう面でも自分の活動が、クラシックが自然に聴かれていくための、1つのきっかけになればいいなと思ってます。

■今も普段はウィーンで暮らしているんですか?

石井今は2拠点ですね。ウィーンと東京に家があって行き来している状態です。ウィーンにはだいたい4ヶ月ぐらいいられれば、という感じですね。半年は向こうで過ごしたいんですけど、おかげさまで日本での活動がすごく多くなってきています。

■石井さんがウィーンの生活で感じたこと、考えたことなどを教えてください。

石井旅行で行くウィーンと暮らすウィーンはやはり違うんです。外国人として異国の地で10年生活するっていうのはなかなかタフなことで、それだけの時間、旅行者ではいられないから現地に馴染んでいかないといけない。でもそこではどうしても自分は外国人なわけですよ。外国人でいることによって差別だとかもちろん受けますし、いろいろな経験をしたんですけど、一番学んだことはとにかく柔軟性を持つこと。文化がまったく違いますから、いろんな物事を多角的に見て自己解決のために頭を柔らかくしないと対処できない。そのことにある時気づいたんです。それ以来、音楽に対してもいい表現ができるようになったと思いますし、YouTube活動にも繋がっていったんですね。クラシックのアーティストってこうだよねっていうことも、柔らかく考えるとまた違う視点で見ることができる。それがウィーンに住んで学んだことかな、と思います。

■クラシックのアーティストに対する固定されたイメージを自分から変えていこう、というような発想もそこには含まれるんですね。

石井そうです。例えば演奏会ってトークなしで行われることがウィーンでも多いんですけど、やっぱりお客さまとしては喋ってくれた方が親近感がわくし、それでより楽しんでいただけるなら、しゃべらない方がいいよというのが業界の雰囲気だったとしても、お客さまの視点に切り替えてやっていくべきだと思うんです。それで音楽を深く知ってもらえるならば、クラシック業界全体としてもいいよねっていう流れになっていくんじゃないかなと、今は考えています。

「弾き切ったあああー!」そんな充実感に溢れたプログラム

■今回のプログラムについて伺いたいと思います。石井さんは2日目の登場でプーランクとガーシュウィンを弾くということなんですが、作品の説明をしていただけますか。まずプーランクの三重奏から。

石井ブーランクの三重奏は、オーボエとバソン(ファゴット)とピアノによるトリオです。プーランクはフランスの作曲家でちょっとおしゃれな音楽を作ることを得意としていて、そんなプーランクの香りがとてもよく出ている作品。言い換えれば少しフランスの香りがする作品になっています。ピアニストにとって大変なのが第3楽章で、1小節も休みがなく最後まで駆け抜ける楽章なんですよ。普通はオーボエとファゴットが演奏してるあいだに、ピアノが休んでる時間が必ずちょっとあるんですが、それがない。とにかくピアノが最後まで弾き続けているっていう楽章なので、そこを「がんばってー!」という気持ちで聴いていただければうれしいと思います。

■なるほど。それからガーシュウィン。20世紀前半の、プーランクの作品と同じぐらいの時代の曲ですね。プーランクがフランスの香りなら、こちらはアメリカ。いかがでしょう?

石井これは「のだめ」の物語の中でも、一番重要と言ってもよいほどの作品です。ガーシュウィンというのは、ジャズとクラシックの融合を図った作曲家なんですね。彼自身もピアニストで、この作品も非常に技巧的な面があるんですけど、一番聴いて欲しいのはとにかく最後の大団円。すごく盛り上がって終わるんですよ。アメリカの音楽ってこれだよね、ジャズってこれだよね、っていうのを見せつけながら、大きく盛り上がるんです。最後までいろんな要素があるんですけど、聴いていても弾いていても気持ちいい。そんな曲です。

■やっぱり気持ちいいんですか、あの曲は?

石井最高ですね。「弾き切ったあああー!」っていう気持ちをすごく感じる作品です。

■では演奏が終わった直後の、石井さんの表情にも注目しておきますね。最後に「のだめ」を楽しみにしているお客さまにメッセージをお願いします。

石井「のだめカンタービレ」の世界がとてもよく表現された音楽会となっています。ファンの方にはおなじみの曲もたくさんある中で、僕がプーランクの三重奏曲とガーシュウィンの『ラプソディ・イン・ブルー』を演奏します。「のだめ」の世界観と石井の演奏を、楽しんでいただけるコンサートになると思うのでぜひ、ご来場ください。よろしくお願いします。

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(2023年6月27日更新)


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(C)二ノ宮知子/講談社

生で聴く
"のだめカンタービレ"の音楽会

兵庫県立芸術文化センター
KOBELCO大ホール
S席-6800円 A席-5800円 B席-4800円 
2公演通し券-12800円 
Pコード:236-032  チケット発売中
※通し券は2公演同じお席となります。

チケット情報はこちら


●8月12日(土)
シンフォニーの土曜日
ロッシーニ:
歌劇「ウィリアム・テル」序曲より
『スイス軍の行進』
ベートーヴェン:
交響曲第7番 イ長調 op.92
ブラームス:
交響曲第1番 ハ短調 op.68

●8月13日(日)
コンチェルトの日曜日
プーランク:
オーボエ、バソンとピアノのための三重奏曲
 【オーボエ】池田昭子(NHK交響楽団)
 【ファゴット(バソン)】:河村幹子
 (新日本フィルハーモニー交響楽団首席奏者)
 【ピアノ】石井琢磨
ガーシュウィン:
ラプソディ・イン・ブルー
 【ピアノ】石井琢磨
チャイコフスキー:
ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.35
 【ヴァイオリン】高木凛々子

【企画・指揮・お話】茂木大輔
【管弦楽】関西フィルハーモニー管弦楽団

【問い合わせ】
キョードーインフォメーション
      :0570-200-888