《ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2015》
3月19日(土)より、シネ・リーブル梅田にて1週間限定公開
4監督(佐藤快磨、堀江貴大、藤井悠輔、ふくだ ももこ)インタビュー
昨年話題を呼んだ『トイレのピエタ』の松永大司監督や『グッド・ストライプス』の岨手由貴子監督などを輩出した、《ndjc(若手映画作家育成プロジェクト)》の上映会が、3月19日(土)~25日(金)までシネ・リーブル梅田にて1週間限定公開される。
日本映画・映像振興施策の一環として文化庁より映像産業振興機構(VIPO)が委託を受け実施・運営する《ndjc》は、2006年にスタートし今年で10年目を迎えた日本映画の活性化を目指したプロジェクト。優れた若手映画作家を対象に、映像製作技術と作家性を磨くために必要なワークショップや35ミリフィルムによる短編映画製作を実施することで、次世代を担う日本映画界の映画監督を発掘・育成している。今年も、脚本審査を通過し、ワークショップを経た4作家(佐藤快磨、堀江貴大、藤井悠輔、ふくだ ももこ)の最終課題である35ミリフィルムによる短編映画がついに完成、約30分の短篇作品がオムニバス形式でお披露目となる。そこで、監督らにインタビューを行った。

――“文科庁委託事業の若手映画作家育成プロジェクト”のどういったところに魅力を感じて今回応募されたんですか?
藤井:フィルムで撮れるということと、正直なところやっぱり助成金で映画を撮れるということですかね。
ふくだ:35ミリフィルムで撮れるということもですけど、助成金が出てオリジナルの脚本で撮れることが大きかったです。今まで自主で撮ったことがなく、卒業制作も学校から資金が出たので、自分でお金を集めて映画を撮るとなると、制限があって面白いものが撮れないなとわたしは思っていて。ある程度の制作費をもらって、好きに撮れるのはすごく魅力だし、年齢も経験も関係なく、選出していただけたのが良かったです。
堀江:プロデューサーと繋がれることが大きかったです。自主ではそれがないので。大学院で映画を撮っていたのですが、プロダクションが入って、プロデューサーがいて、その中でどう映画を作るのかを知りたかったというのもあります。
佐藤:PFFアワード2014に前作『ガンバレとかうるせぇ』が入選したんですがスカラシップにはもれて、これからどうしようかなと思っていた時に、『グッド・ストライプス』(岨手由貴子監督)とか『トイレのピエタ』(松永大司監督)を観て、《ndjc》から商業デビューしていて、こんなデビューができたら幸せだなと思って応募しました。
――ndjcの大きな魅力のひとつ。35ミリフィルムでの撮影はいかがでしたか?
佐藤:フィルムは初めてでしたし、もっと制限されることが多いのかと思っていたのですが、「こう撮りたい」という希望を最初に話したら意外と多めに用意してくださって。撮影中はデジタルと変わらずに何も気にせずに撮らせてもらえました。ハイスピードのシーンでは回転がとても速くてちょっと焦りましたが(笑)。
堀江:ぼくは、ハイスピードで撮ろうと思ってシナリオに書いていたんですが、フィルムでハイスピードは本当に大変なので「ハイスピードでなくとも成立する撮影を考えよう」と言われて、ハイスピードでは撮らせてもらえませんでした。でも、結果的には良かったかなと思っています。撮影中はフィルムという感覚はなく、緊張もなかったんですが、ラッシュで映写されたものを観て初めて実感が持てました。
ふくだ:学生時代に卒業制作で撮った作品が学校の規定で16ミリだったんです。それで35ミリには憧れていた部分もありました。このプロジェクトは35ミリなのでそこがいいなと思いましたし、フィルムで撮らせていただいて幸せだなと思いました。
藤井:普段、映画を観ていてフィルムで撮っているかとか分からなかったのですが、今回、DCP(デジタル)とフィルムの2パターンで試写をして、違いに気づいてすごく感動しました。
――脚本はどのように書かれたんですか?
佐藤:人を好きになった瞬間から世界が変わり、それがあるきっかけから壊れ始めても、繋がろうとする男を描きたいと思って書きました。
堀江:大阪・西成にある月極コインロッカーに関するドキュメンタリーを偶然見て。それをモチーフに、父親を主人公に“感動の再会ではない再会”を描きたいと思ったのが初めです。女子プロレスにも以前から興味があったので、女子プロレスラーの娘と父親が再会したらどうなるだろうと思って話が出来ていきました。
ふくだ:まず、明るい映画を撮りたいと思って。結婚をテーマに、ちょっと変な家族を描けば明るくなるんじゃないかなと。父親の再婚相手が男性で、父親が女装している姿を見た娘がそれらを受け入れることで家族がひとつになっていくという話を書きました。
藤井:ぼくは今までも男の話を撮ってきていて、今回も男、兄弟、バディものの雰囲気を出したいと思いました。テーマとしては、赤塚不二夫さんの「これでいいのだ!」という言葉が好きで、全ての出来事を前向きに肯定するような意味があると思うのですが、それを映画を通して感じてもらえればいいなという思いで作りました。
――どの作品もキャスティングがとてもいいですね。監督の希望ですか?
藤井:たぶん、みんなそうだと思いますが、まず自分の希望を出して、俳優さんたちのスケジュールと予算が合えば実現という感じでした。
ふくだ:わたしの場合、希望していたのは板尾さんだけで。主人公の女性はプロデューサーの意向でソニンさんになりました。ソニンさんに決まってから、設定していた主人公の年齢も上げて、結果的にはいい作用になったなと思っています。
――切り取られた物語の前後を想像させることができるのが映画の力とも言えると思いますが、約30分という制約の中で出来上がった作品について思うことは?
堀江:映画の中では過去の家族の話がメインにはなってきますが、最終的には未来の家族やこれからの親子の関係を想像させるものにしたいと思っていました。それを感じてもらえたら嬉しいです。
ふくだ:私が何をやりたいのかがこの30分に出ているのでわたしの名刺代わりになる作品になったと思います。でもやっぱりそれぞれの人物をもっと掘り下げて描きたい部分もあるので長尺を撮りたいです。
藤井:30分という尺に合わせるなら登場人物を少なくすることも出来たんですが、やりたいことをぶつけたいという意気込みで撮りました。出来上がった作品に満足しています。
佐藤:ぼくは、二人が出会ってから別れるまで構造的にシンプルにだったので、この二人の感情をこぼさずに撮りたいと思いました。出会う前の二人の家族構成とか背景も一応考えたんですが、ぼくがそれらを決め付けるより、30分をしっかり描くことで前後がついてくるのかなと思いました。
――作品からは監督の個性だけでなく制作プロダクションの色も出ていると思います。プロダクションとの相性はいかがでしたか?
藤井:男二人の話で、決闘シーンもあるので、ぼくは脚本の段階で東映さんだろうなと思っていました。もともと、60年代、70年代の東映映画、『仁義なき戦い』や『トラック野郎』シリーズなどが好きで、あのようなバディものを撮りたいなと思っていました。
ふくだ:正直なところ、アスミックがいいなと思っていました(笑)。それでブースターと言われて、知らない名前だったので最初は戸惑いましたが、プロデューサーは『るろうに剣心』や『予告犯』などを手がけたフリーの福島さんという方で。福島さんは大手に負けたくないという気持ちで参加してくださり、破格のキャストやスタッフを揃えてくださり、本当にいい出会いが出来たと思っています。
佐藤:名作と言われる映画をあまり観ていなくて不勉強なんですが、『ピンポン』や『ジョゼと虎と魚たち』が大好きだったので、アスミック・エースの名前は知っていたので、決まったときは嬉しかったです。撮影中は同じ服ばかり着ていたので、プロデューサーが服を買ってくださいました(笑)。
堀江:僕は東宝と聞いて真っ先に父が喜ぶなと思いました。地元の岐阜のTOHOシネマズでも上映されるような映画を作りたいと思いました。プロデューサーと考えや趣味が一致したので、この出会いは本当にありがたいです。
――作家性より商業監督を目指している?
堀江:ぼくは奨学金の借金が沢山あるので、東宝作品のような商業映画を手掛けてみたいと思っています(笑)。
ふくだ:少女漫画原作の映画とか撮りたいです。少女漫画の女の子の心理は女性の方がよくわかると思うので、単純に。ハハハ(笑)。
(2016年3月18日更新)
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