ホーム > インタビュー&レポート > 「演技を越えて山の男の顔になっていく。 本人の顔なのか、役柄の顔なのかわからなくなるぐらいでした」 『エヴェレスト 神々の山嶺』 岡田准一、阿部寛、平山秀幸監督が出席した会見レポート
「山登り、寒さ、肉体労働と、自分の苦手なものばかりある話だなと思いました(笑)」。平山監督は原作との出合いを、ユーモアを込めてこう語る。
「ただ、軟弱な小説が多いなか、約20年前に書かれたこの原作には〝これでどうだ、文句あるかっ!〟というような主張の強さがあったんです。これはキッチリ受け止めなきゃいけないと思いました。そこで、映画化するのなら、スタジオで撮影して雪は発泡スチロールなんて考えられない、現地に行かなくては、とまずプロデューサーと脚本家と僕で標高3800メートルの地点にまで行ったんです。すると、そこからヒマラヤ山脈がドドーンと見えた。その雄大な景色を見て、これは監督やる羽目になっちゃうなと覚悟決めました(笑)」。
撮影は昨年3月、ロケハンで行った場所よりもさらに高い標高5200メートル付近で行われた。高山病予防のため、10日間かけて少しずつ歩いて登って行ったという。その様子を岡田准一は「空気が平地の半分しかない場所ですから、撮影はもちろん大変でした。気温も風が吹くと一気にマイナス20度になるし。そうなるとスタッフ、キャスト全員集まってひとかたまりになっていないとほんとうに命を落としてしまう、そんな現場でした。でも、阿部さんが薬や食料をたくさん持ってきてくれていたので、みんななにかあったら阿部さんに言うんです。そしたら、薬でも食べ物でもなんでも出てきて、ほんとうに助かりました」と、まるで異次元ポケットを持つドラえもんのように阿部寛を紹介すると、阿部は「行く前に周囲からずいぶん脅かされたんですよ、向こうではなにがあるかわからないからって。でも、ほんとうに具合いが悪くなった人もいて、薬は持って行ってよかったです」と語り、さらに現場の印象については「4500メートルを超えると突然氷河が現れたりして世界が一変するんです。僕らはここに〝お邪魔させてもらって〟仕事をしているんだって思いました。大自然の機嫌を損ねるとそれこそ生死にかかわるんだって強く感じました」と言う。でも、二人とも初めは「大変だった」と言いながら、最後には「山での撮影はとても楽しい、幸せな時間でした」と結んだのが印象的だった。大変ではあったけれども、充実した仕事となった実感がうかがえた。平山監督は、二人の顔が変わっていくのを見ているのが楽しかったと言う。「二人とも、演技を越えて山の男の顔になっていくんです。途中から、もうどこまでが岡田さん、阿部さん本人の顔なのか、どこからが役柄の顔なのかわからなくなるぐらいでした」。これには阿部のこんな証言も。「撮影とは関係のないところでも岡田君がくっついてきて、自前のカメラで僕の写真を撮るんです。あるとき写真を見せてもらったら、そこに写っているのは僕ではなくて、僕が演じた羽生丈二という役の男なんです。岡田君が演じているのは、羽生をずっと追っている深町というカメラマンなので、そうか、彼は、もう役に入っているんだなと感心しました」。
プライベートでも5、6年前から登山を始め、昨年はついに仲間内で山岳部まで結成したという岡田。「阿部さんが演じられた羽生という人物は、山に行ってないと死んだも同じだという極端な人なんです。僕が知っている登山家の人たちは、自然とか気候とか自分たちが勝てないものがあるということを知っていて、山に遊ばせてもらっているという感覚を持っている、やさしい素敵な人たちです。自分もそうなりたいなって思います」。この映画で伝えたいものはなにかという問いには「男と男の映画になっています。歩くこと、登ることが生きることにつながり、生き抜くこと、やりぬくことの熱さが少しでも観ている人に伝われば」と力をこめて答えた。
取材・文/春岡勇二
(2016年3月 3日更新)
●3月12日(土)より、TOHOシネマズ梅田ほかにて公開
出演:岡田准一 阿部寛 尾野真千子
ピエール瀧 甲本雅裕 風間俊介
テインレィ・ロンドゥップ
佐々木蔵之介
原作:夢枕 獏「神々の山嶺」(角川文庫・集英社文庫)
監督:平山秀幸
脚本:加藤正人
音楽:加古隆 ※「隆」の文字は「生」の上に「一」が入ります。
主題歌:イル・ディーヴォ「喜びのシンフォニー」(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル)
【公式サイト】
http://everest-movie.jp/
【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/165592/
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