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ムソルグスキー: 歌劇「ホヴァーンシチナ」より前奏曲「モスクワ川の夜明け」(リムスキー=コルサコフ(6/19)、ショスタコーヴィチ(6/20)編曲)
ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番 イ短調 作品77
ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」(ラヴェル編曲)

アラン・ブリバエフ
アラン・ブリバエフ(指揮)

ヨシフ・イワノフ
ヨシフ・イワノフ(ヴァイオリン)
(C) éric larrayadieu / naïve

 首席客演指揮者、アラン・ブリバエフを迎えるセンチュリーの6月。予告されていたロシア音楽シリーズはムソルグスキー作曲「歌劇ホヴァーンシチナ」より、前奏曲「モスクワ川の夜明け」で幕を開ける。歌劇本編の荒々しさと対比するような美しい作品だが、ムソルグスキーがスケッチのみを残して世を去ったため、リムスキー=コルサコフ版をはじめとする複数の版が作られた。今回はリムスキー=コルサコフ版(6/19)、ショスタコーヴィチ版(6/20)を演奏する。

 今回の定期で注目を集めそうなのが、ソリスト、ヨシフ・イワノフとのショスタコーヴィチ、ヴァイオリン協奏曲第1番だ。4楽章の規模の大きな構造を持ち、ショスタコーヴィチらしい複雑な感情表現も読み取れる作品である。特に第3楽章「パッサカリア」からガデンツァを経て、切れ目なく狂騒的な第4楽章に突入する展開は、全編の核心とも言える圧倒的な熱量に満ちている。この作品は1955年、作曲者から名ヴァイオリニスト、ダーヴィッド・オイストラフに献呈されたもの。1986年生まれ。2003年モントリオール国際コンクール第1位、’05年にはエリザベート王妃国際コンクールでも第2位と観客賞を受賞したヨシフ・イワノフはすでに、この曲の新たな担い手としてふさわしいキャリアの持ち主とも言えるかも知れない。白熱の共演が期待できる。

 そしてブリバエフがその個性を際立たせるであろう「展覧会の絵」。数多くのオーケストラや指揮者が取り組む作品だが、ラヴェルの洗練を聴かせるか、ムソルグスキーの野趣を聴かせるか、あるいはそれら配合の妙によって大きく印象が変わるのがこの作品の魅力である。友人の遺作展で見た10の絵の印象を、作曲者の心象を表す5曲のプロムナードで繋いだ組曲。奇怪な曲、ユーモラスな曲、華やかな曲などを経て、最後に大きく響き渡る「キエフの大門」に、ブリバエフはどのような風景を見せてくれるだろうか。

【指揮】志村健一 【演奏】日本センチュリー交響楽団
【合唱】大阪音楽大学ザ・カレッジ・オペラハウス合唱団
【出演】マイネマイヌク/待山一生(ドラムス)/Ryuta(キーボード)

「LIVE・A・LIVE」(スクウェア・エニックス)より
『LIVE・A・LIVE』(作曲 下村陽子/編曲 鹿野草平)

「キングダムハーツII」(スクウェア・エニックス)より
『Dearly Beloved』『Scherzo Di Notte』(作曲 下村陽子/編曲 鹿野草平)

「MOTHER2 ギーグの逆襲」(任天堂)より
『グッドフレンズ/バッドフレンズ』『スマイルアンドティアーズ』(作曲 鈴木慶一・田中宏和/編曲 辻田絢 菜)

交響組曲『ファイナルファンタジーVII』(『ファイナルファンタジーVII』より/スクウェア・エニックス)
(作曲・編曲監修 植松伸夫・編曲/竹岡智行/鹿野草平/木村裕)


志村健一(指揮)

(C)s.yamamoto

 6月7日(日)、日本センチュリー交響楽団は、ザ・シンフォニーホールで開催されるGame Symphony Japan Concert in Osaka(GSC)に出演する。GSCとは、プロデューサーであり、これまで多くのゲーム、アニメ、映画音楽の指揮を務めて来た志村健一が、昨年立ち上げたコンサートシリーズ。東日本を中心に、これまで9回を数えるが、関西ではこれが初めて。待望の開催となる。

 ゲーム音楽が、広くオーケストラのレパートリーとなりうることを構想し、高い水準の演奏を展開して来たのが、このGSCだ。植松伸夫や下村陽子など、当代一流のサウンドクリエーターの世界観を表現するために、登場するのは常に最高のプレイヤーたち。アコースティックなサウンドで数々のゲーム音楽に参加するバンド、マイネマイヌク、そしてドラムスの待山一生、キーボードのRyutaらGSCには欠かせないメンバーたちとともに、ここ、関西では大阪音楽大学ザ・カレッジオペラハウス合唱団と、日本センチュリー交響楽団の演奏が全編にフィーチャーされる。

 今回、特に注目を集めそうなのが、ほぼ90分にわたって繰り広げられる交響組曲「ファイナルファンタジーⅦ」。作曲者の植松伸夫が編曲監修も務め、主人公クラウド・ストライフの物語を追体験するように音楽は構成されている。とは言えゲームを離れ、独立した作品としても高いクォリティを誇る作品。「FF」ファンならずとも聴き応えは十分だ。ザ・シンフォニーホールならではの荘厳なパイプオルガンの響き、さまざまな表情を見せる合唱を伴って、日本センチュリー交響楽団が繰り広げる新世代のオーケストラ・サウンド。新たなステージに挑むセンチュリーの、縦横無尽の迫力を、ぜひ感じ取ってほしい!

 

ボブ佐久間

ボブ佐久間

ボブ佐久間

ボブ佐久間


(C)s.yamamoto

 5月9日にいずみホールで行われた「四季コンサート2015 春」。センチュリーはポップスコンサートの第一人者、ボブ佐久間の指揮により、カラフルな演奏を繰り広げました。コンサートは午後3時開演。ヴィオラ・ソロでスタートする『ユー・レイズ・ミー・アップ』から、会場は華やいだ雰囲気に包まれます。演奏しているのはセンチュリーなのに、普段のクラシックコンサートとはどこか違った味わい。ポップスコンサートならではの、くつろいだ親密な空気がそこにあります。指揮台からボブ佐久間氏は「僕のコンサートでは、堅苦しくならないで、手拍子を打ってもらっても、口ずさんでもらってもかまいません。ただし著しく隣の人に迷惑はかけないように…」とご挨拶。柔らかく、どこかユーモラスな口ぶりに、会場から笑いがこぼれます。

 「タイム・トゥ・セイ・グッドバイ」から、「ガーシュイン・メドレー」まで、さまざまな風景を繋げるように展開した前半に続き、後半1曲目「ロマンティック・シャンソン」ではコンサートマスター、後藤龍伸がヴァイオリン・ソロを全編に渡って披露。アコーディオンの音色を取り入れたような『パリの空の下』、そしてカデンツァのような『バラ色の人生』など、この日の聴きどころのひとつと言って良い演奏が繰り広げられました。そして「ロマンティック・スタンダード・バラード」以降は、一気呵成。甘いストリングスの響きやビッグバンドの大迫力まで、会場の手拍子もまじえたポップス・オーケストラならではの魅力が全開となり、アンコールの『ダニーボーイ(ロンドンデリーの歌)』が優しく演奏されて、コンサートは終了しました。

 「クラシックのコンサートとポップスのコンサートというのは、まったく別なんです。だからセンチュリーが僕を主催公演に招いてくれたというのは、とても意味のあること」。開演前にボブ佐久間氏はこのように語ってくれました。

 「僕は名古屋フィルの時代に、オーケストラの中に名フィル・ポップス・オーケストラという別ブランドを立ち上げて、クラシック以外のあらゆる音楽を編曲して演奏しました。なぜ、ポップスコンサートなのか、と言うとオーケストラの楽しみ方を拡げていきたいから。咳払いするのも憚られるような雰囲気の中で音楽を聴くのじゃなくて、僕のコンサートでは、そんな堅苦しい垣根は取っ払っていきたい。みんなオーケストラと言ったらクラシックのものって考えてるんだけど、そうじゃないんだ、ポップスのオーケストラっていうすごく楽しいものがあるんだよということを伝えていって、よりたくさんの人に聴きに来てもらいたい。これは今、全国のオーケストラにとっても急務だと思うんです」。

 実はセンチュリーが主催公演の中で、クラシック以外の曲を中心にプログラムを組むこともこれまでなかったこと。オーケストラの新たな魅力を提案するボブ佐久間氏とのコンビネーションは、これもまたセンチュリーのひとつの「挑戦」なのです。