ホーム > 劇団 石塚朱莉 > 第9回 ヨーロッパ企画 上田誠さん、諏訪雅さん
ヨーロッパ企画
(上田誠(写真左)・諏訪雅(写真右))
よーろっぱきかく●京都を拠点に活動する劇団。近年は物語性よりも「企画性」に重点を置いた“企画性コメディ”を掲げ、「迷路コメディ」「ゲートコメディ」などをテーマにした作品作りに取り組み、2017年には作・演出の上田誠が第61回岸田國士戯曲賞を受賞。結成以来、創作のベースを京都に置きながら、さまざまな形で作品を発信し続ける。舞台のみならず、テレビ、ラジオ、各種イベント、ショートムービー制作、ウェブコンテンツなど、舞台で培ったさまざまな技術を活かしたコンテンツ制作を展開している。
石塚朱莉(写真中央)
いしづかあかり●1997年7月11日生まれ、千葉県出身。ニックネームはあんちゅ。NMB48チームBII。趣味は映画鑑賞。2016年夏、悪い芝居の『メロメロたち』で初舞台、初主演を果たし、2017年4月、悪い芝居『罠々』に出演。9月、劇団アカズノマを旗揚げ。2018年4月、柿喰う客の七味まゆ味を演出に迎えて、同劇団の人気作『露出狂』をABCホールにて上演する。
公式サイト
http://www.nmb48.com/
「出てこようとしているトロンプルイユ」
Pコード:
▼11月1日(水) 19:00☆
▼11月2日(木) 19:00★
▼11月3日(金・祝) 13:00/18:00★
▼11月4日(土) 13:00
▼11月5日(日) 13:00/18:00★
▼11月6日(月) 19:00
▼11月7日(火) 19:00
▼11月8日(水) 14:00
☆の回は終演後スペシャルイベントあり
★の回は出演者によるおまけトークショーあり
ABCホール
全席指定-4500円
※未就学児童は入場不可。
[作][演出]上田誠 [音楽]滝本晃司
[出演]石田剛太/酒井善史/角田貴志/諏訪雅/土佐和成/中川晴樹/永野宗典/西村直子/本多力/金丸慎太郎/川面千晶/木下出/菅原永二
★他、各地で公演あり
チケット情報はこちら
2016年7月、京都の劇団・悪い芝居の『メロメロたち』に出演し、女優として初舞台を踏んだNMB48の石塚朱莉さん。役者としての第一歩を踏み出したばかりの彼女が、さらなる高みを目指すべく、脚本家や演出家など演劇界の諸先輩方に「演劇のいろは」をお聞きします!
今回お話を聞いたのは、ヨーロッパ企画の主宰で作・演出を手がける上田誠さんと、旗揚げメンバーの諏訪雅さん。京都を拠点にしながら全国区で活躍されているヨーロッパ企画は、メンバーそれぞれが得意分野を活かし、舞台だけはなく、映像、ラジオ、イベント、Webコンテンツなど、さまざまなフィールドで活動されているマルチ集団です。2017年には、昨年上演した『来てけつかるべき新世界』で、上田さんが「演劇界の芥川賞」ともいわれる岸田國士戯曲賞を受賞。諏訪さんはNMB48のWebオリジナルドラマの、脚本・演出を手がけています。元々、ヨーロッパ企画の舞台が大好きなこともあり、興味深々の石塚さん。お二人に、ヨーロッパ企画の芝居の作り方から、現在ツアー中の新作公演『出てこようとしているトロンプルイユ』のことまで、たっぷりと話を聞きました! 後編をどうぞ!
ヨーロッパ企画の活動について
石塚
ヨーロッパ企画さんは「ハイタウン」とか「京都ニューシネマ」とか、本公演以外にもたくさんのイベントをされていますよね。
上田
結構やってますね。僕らは劇団ではあるんですけど、元々は企画集団とも言っていて。劇団にしてはめちゃくちゃイベントをやる劇団で、映像を作って上映イベントをやるっていう流れも結構昔からやってたんです。本公演は年に1回やっているんですけど、それ以外の時期にいろんなイベントをしたり、最近は呼んでいただくことも多くなりましたね。
諏訪
僕らみたいに、毎年カウントダウン公演やってる劇団もそんなにないよね。
上田
カウントダウンは十何年やってますね。演劇でカウントダウンやるって、なかなかないですよね(笑)。「ハイタウン」は2年に1回やってるフェスみたいなイベントで、京都の元・立誠小学校のいろんな教室を使って、演劇とか音楽とかイベントを企画して。お客さんが “この演目の後はあっちであの演目観よう”とか、自分でコースを作って楽しむことができる。そうやって、新しいお楽しみを提供できたらいいなぁと。あと、周りに仲のいい劇団がたくさんいるんですけど、あまり一緒に何かをやることがなくて。劇団同士で学園祭みたいなことをやれたら楽しいやろうなって思ったんです。
石塚
「ハイタウン」は、やってる方もお客さんもめちゃくちゃ楽しんでる感じがいいですよね。ヨーロッパ企画さん見てたら、“演劇とか劇団っていいなぁ!”ってすごく思います。
上田
もちろん、楽しいばかりじゃないですけどね。でも、いろんな形の集団がある中で、僕らは“劇団”やからあまりストイックになりすぎずにやれてるんやと思う。個人だと一回一回が勝負で、全部一人で考えていかなきゃいけないけど、劇団だったらみんなで考えられるというか、あまりやったことがないことにも、気負わずに挑戦してみようと思えるんだと思います。
石塚
劇団としての強みですね。
上田
でも、最強メンバーが集まってるというよりは、僕らは助け合いで成り立っているんですよね。それだけに、一人で外部に出たときは、通用しなさが露呈しちゃう。僕はヨーロッパ企画のメンバー以外の人に書くことが慣れていないから、あまり知らない人が出るドラマの脚本を書くときとか、どうやって書けばいいのか分からなくなってくるんですよ。役者も、ヨーロッパメンバーとの絡みは慣れているけど、一人で長いせりふを喋ることって劇団ではあまりやらないから、難しいんじゃないかなぁ。
諏訪
確かに、アウェーに弱いですね(笑)。ホームでやりすぎてると、急に外に出たときの対応が難しい(笑)。
相手とキャッチボールをすること
石塚
私、諏訪さんが書かれたNMB48のショートドラマに出させていただいたんですけど…、私の演技、どうでした?(笑)
諏訪
華があっていいなと思います(笑)。ちゃんとキャラクターも作ってきてくれるし、ありがたいですね。
石塚
素敵な役者さんになりたいんですけど、何かアドバイスありますか?
諏訪
う~ん、“受ける”ことかなぁ。演劇は、稽古していく中でなんとなく相手の出方が分かって、こうしようって練っていくことができるんだけど、映像はその場で作らないといけないから、相手のお芝居をうまく受けることが大事になってくるんですよね。だから自分で準備していくことプラス、相手の演技をうまく受け止められるようになったら素晴らしい女優さんになると思います。
石塚
確かに、自分の演技のことばかり考えて、相手のせりふがきても受けずにただ自分のせりふを投げるだけでした。ちゃんとキャッチボールすることが大事ですね。ありがとうございます!
上田
それでいうと、ヨーロッパ企画はエチュードで作るから、聞く力がつきますよね。
諏訪
そうやね。反応の取り合いするからね。
石塚
ヨーロッパ企画さんは、テンポのいいやり取りが続きますもんね。
上田
その場でやりとりしてる空気感が好きなのかもしれないです。その分、長期間の公演をやるときに新鮮さを保つのが大変。初めて聞いた感じを保つのに結構体力を使いますね。
諏訪
毎公演、始まる前に忘れる努力をしています。“はい、忘れた!”とか言って舞台出たりして(笑)。
上田
ダメ出しもそのことばっかり。例えば『ビルのゲーツ』は、ビルのゲートを開けてどんどん上に進んでいく話なんですけど、30回上ったビルを31回目も何が起こるか分からない感じで上るのって、結構体力がいりますよね。僕らの劇はローカロリーに見えるけど、そこは割と努力してますね。
石塚
流れが大体分かってくると、体力の配分を考えちゃうじゃないですか。100の力を出さないとダメな場面やけど、100の次に120出さなあかん場面があるから、ちょっと抑えたい。でも100でやらないとダメだなとも思うし。そういう力の配分も難しいですね。
諏訪
でもいつも100出さんといけないわけでもなくて。
上田
抜くポイントをうまくつかんで見せるのもプロの仕事やと思うんです。あと、僕らは公演中も補い合ってやれているというか、ある人が“今日あんまりウケへんなぁ”って思うときでも、他の人の演技がハマってウケるとかはあります。自然とフォローし合える体制ができていますね。
石塚
お二人の話を聞いていると、劇団って素敵やな~って思います。
上田
いいですよ。オススメです! 石塚さんも劇団石塚朱莉をぜひ実現させて…。どんな劇を作りたいんですか?
石塚
正直なところ、演劇のこと、まだあまり分かってないんですよ。でも観た人が明日、いつもの自分よりももっと元気に生きてもらえたら、と思うんです。
上田
メンバーは、どんな人を集めて、どうしようとかありますか?
諏訪
主演はこの人がいいとか、自分がやりたい! とか。
上田
台本が遅いこと気にしなければ、僕でも…(笑)。
石塚
ぜひ、劇団石塚朱莉で書いてください!(笑)
新作『出てこようとしているトロンプルイユ』
石塚
新作は『出てこようとしているトロンプルイユ』ですね。トロンプルイユってだまし絵のことなんですよね。
上田
そうなんです。今回は絵と絡めてコメディを作ろう、と。エッシャーというだまし絵を描く画家の作品で、『非難からの逃走』という、絵の中の人物が出てこようとしている絵があるんです。絵の中に吸い込まれそうっていう作品はありますけど、絵から出てこようとしてるのって面白くないですか?(笑)。2次元なのに出てこようとしている感じが。それで、これは劇にできるんじゃないかと。出てこようとする絵を役者が囲んで“すげえ出てこようとしてるなぁ!”とか、“いや、こっちのほうがより出てこようとしてるよ!”とか言ってたら、何か劇になるんちゃうかなって(笑)。
石塚
面白そう!(笑)。
上田
だまし絵がたくさん出てくる劇になると思います。“こんな仕掛けはどう?”とか、メンバーに話を聞いてもらったり、舞台美術さんと話し合ったりするところから始まり、じゃあどんな話にしよかなぁって考えて。
石塚
それって、仕掛けを先に考えて、物語を作っていくってことですか?
諏訪
僕らの場合、仕掛け表が配られるんですよ(笑)。前の『来てけつかるべき新世界』やったら、小道具のドローンとか、パトローとか、いろんな仕掛けが十数個あったよね。
上田
大体の人は“こんなテーマにしたい”ということから始まると思うんですけど、僕はどんな仕掛けを見せたいかが先なんです。作っていく中で、最終的にはテーマにたどり着くんですけどね。でも、みんなで“こっちのほうがおもしろいんじゃない?”とかアイデアを出し合いながら作るほうが面白い。『ビルのゲーツ』のときも、ビルを開けて上っていくだけだったのを、“それだけだとこの劇ちょっとしんどいですね”って、メンバーが言ってくれたので、途中でホットドッグを出すシーンを入れたりして。
石塚
なるほど~、そういうところから生まれるんですね。
上田
あと、前回ぐらいからはみんなで役割分担しながら作ることをしていて。『遊星ブンボーグの接近』までは、上田コメディという感じだったんですけど、『来てけつかるべき新世界』では、酒井(善史)君がロボットのデザインを作ってくれたし、今回は絵を描くのが得意な角田(貴志)さんが絵の監修をしてくれていて。諏訪さんはチラシデザインで、とか、みんなで作っている感じが強くなりましたね。
対談を終えて
上田
僕らのことめちゃくちゃ褒めてくれるので、うれしかったですね(笑)。難しくもなっていきがちな演劇の世界の中で、面白いことをやりたいと言ってくれるのはすごくありがたいし、希望がわきました。頑張ろう! と思いました。
諏訪
劇のことにすごく関心をお持ちのアイドルだなぁ、という印象で(笑)。うれしいですね。今後も、劇を愛していってほしいと思いました。
石塚
私はもうヨーロッパ企画さんが大好きで、もちろん劇場でも観ますし、DVDでも何回も観てるんです。だから今回、作品の作り方とか裏話も聞けたし、次回公演の構想を聞けたのもすごくうれしかったです! ちなみに、上田さんが客演で女優さんを呼ばれるときって、どんなところに注目してオファーされるんですか?
上田
僕らの場合、すごいハードルがあるわけでは全然なくて。しかも僕が決めるわけじゃなく、みんなと話し合うんです。そこでみんなが“最近こんな人と出会ってどうだった”っていう話をして…。つまりは、そのときに仲がいい人ですね!(笑)。
石塚
そうなんですか! じゃあ会議の手前に皆さんと仲良くすればいいんですね!(笑)
諏訪
石塚さんも、普通に名前挙がってたよね(笑)。
上田
悪い芝居にも出てるんだったら、僕らも出てくれへんかなぁ? って(笑)。
諏訪
でもスケジュール取られへんやろうなぁって諦めたんよね。
石塚
えー! いつかぜひお願いします!
第10回は11月上旬更新予定です。
取材:石塚朱莉(NMB48)
撮影:奥田晃介(松鹿舎)
構成・文:黒石悦子
企画:葛原孝幸