ホーム > 劇団 石塚朱莉 > 第6回 梅棒 伊藤今人さん

 

 

 

Profile

伊藤今人(写真左)
いとういまじん●1983年1月14日生まれ、東京都出身。「梅棒」の構成・振付担当。日本大学芸術学部在学中から所属劇団「ゲキバカ(旧劇団コーヒー牛乳)」の本公演、その他外部団体に出演し、合わせて100本以上の舞台作品に出演している。ミュージカル『ボンベイドリームス』振付・出演、KREVAの新しい音楽劇『最高はひとつじゃない2016 SAKURA』、Office ENDLESS produce『チックジョ~~』などに出演。​最近ではミュージカル『キューティーブロンド』振付を担当。他、GReeeeNのライブの演出・振付なども手がける。


石塚朱莉(写真左)
いしづかあかり●1997年7月11日生まれ、千葉県出身。ニックネームはあんちゅ。NMB48チームBII。趣味は映画鑑賞。2016年夏、悪い芝居の『メロメロたち』で初舞台、初主演を果たす。2017年4月、悪い芝居『罠々』に出演。

公式サイト
http://www.nmb48.com/

Stage

梅棒 7th ATTACK『ピカイチ!』

Pコード:457-875

▼7月4日(火)19:00
▼7月5日(水)14:00/19:00

森ノ宮ピロティホール

一般指定席-6800円
ユース席-3000円(当日座席指定/要身分証明書)

[演出]伊藤今人
[出演]梅棒
[ゲスト]千葉涼平/吉川友/YOU/パイレーツオブマチョビアン/suzuyaka/一色洋平/KENZO MASUDA/MOMOCA/魚地菜緒/後藤健流

※未就学児童は入場不可。
※ユース席は、公演当日18歳以下の方を対象にしたチケットです。公演当日、引換券窓口にて座席指定席と引換え下さい。
※一部ステージや演出が見えづらいお席になる場合がございます。予めご了承ください。

[問]キョードーインフォメーション
[TEL]0570-200-888

スペシャルカーテンコール、
アフタートークが決定!

<大阪公演>
●7月4日(火)19:00公演
 →スペシャルカーテンコール
●7月5日(水)14:00公演
 →アフタートーク
(千葉涼平、吉川友、梅棒2名)

<福岡公演>
●7月8日(土)18:00公演
 →アフタートーク
(千葉涼平、吉川友、梅棒2名)
● 7月9日(日)13:00公演
 →スペシャルカーテンコール

<名古屋公演>
● 7月12日(水)19:00公演
 →スペシャルカーテンコール
● 7月13日(木)14:00公演
 →アフタートーク
(千葉涼平、吉川友、梅棒2名)

チケット情報はこちら

2016年7月、京都の劇団・悪い芝居の『メロメロたち』に出演し、女優として初舞台を踏んだNMB48の石塚朱莉さん。役者としての第一歩を踏み出したばかりの彼女が、さらなる高みを目指すべく、脚本家や演出家など演劇界の諸先輩方に「演劇のいろは」をお聞きします!

今回お話させていただいたのは、ダンスエンタテインメント集団「梅棒」を率いる伊藤今人さん。演劇的な世界観をダンスとJ-POPで構築し、緩急つけながら、表情豊かに笑いあり、涙ありのノンバーバルコメディを繰り広げる梅棒。このダンスカンパニーで作・演出を手掛け、外部作品でもダンサー・振付家として活躍。一方で、劇団「ゲキバカ」にも所属し、俳優としても数々の舞台に出演するなど、マルチに活動する伊藤さんに、言葉を使わない作品作りやパフォーマンスについてお聞きしました。

 

梅棒のパフォーマンス

石塚

今人さんは、いつからダンスをやられているんですか?

伊藤

高校のダンス部に入ったのが最初かな。でも元々、俳優になるのが夢で、中学1年生のときからずっと地元で演劇をやっていたんです。それで、日本大学の芸術学部に入って演劇を学びつつ、大学1年生のときにダンスサークルに入って、同期とダンスチーム「梅棒」を作って。それが今もずっと続いているっていう流れかな。だから、本来、僕は役者なんだけど、趣味としてダンスをやっていたカンパニーが大きくなってきたっていう感じです。

石塚

梅棒さんは、ダンスと演劇を融合させたパフォーマンスですよね? なぜ組み合わせようと思ったんですか?

伊藤

梅棒を始めたときから、J-POPで踊っていて。お客さんの反応が分かりやすいし、楽しんでくれるから、最初は普通に楽しく踊っているだけだったんだけど、あるときに、ちょっと演劇の要素を入れてみようと思ったんです。ミュージックビデオって5分くらいの間にストーリーがあったりするじゃないですか。そういう感じで、誰かが恋して、奪い合って、結ばれてみたいなのを踊りながら表現したらどうなるかなってやってみたのが始まりです。元々、演劇とダンスのどちらもやっていたから、どちらの要素も取り入れるということは、自然なことだったのかもしれない。

石塚

そうなんですね。一つの作品の中で、すごく激しい曲だったり、静かな曲だったり、感情によって曲の雰囲気が全然違いますよね。その感情がシーンによってバラバラだから、そこにもっていくのが大変そうやなって思うんです。

伊藤

基本的には演劇だから、その人の感情に合わせた選曲をしているし、ミスマッチを狙って、悲しいシーンなのに楽しい系の曲にしてみたりもする。それで稽古場でその気持ちを作っていったりとか、そこにマッチするように演技プランを考えてもらったりしていく。だから、稽古を重ねていくうちに、自然にできるようになる。単純に曲だけ聴くとバラバラで大変だなって思うかもしれないけど、役者としては演劇の舞台に出ているのと一緒。ちゃんとストーリーに沿って感情の流れがあるから、そんなに難しいことはないと思う。

 

作品の作り方

石塚

お稽古はどんな感じで進めるんですか? 出来上がるまでの過程というか。そもそも、台本ってあるんですか?

伊藤

セリフが書いてある台本はないんだけど、曲ごとにどういう場面が展開されるかを書いたものはあります。で、その日に稽古する曲に対してまずは踊る部分に振りをつけて、そこから役者の動きをつけていって、全部通してみるっていうことを、曲ごとにやっていくっていう流れかな。

石塚

構成はどんなふうに考えてるんですか?

伊藤

まずやりたいお話を書き出してみて、場面ごとに区切ってみる。で、場面ごとに使いたい曲を探したり、どうしても使いたい曲があれば、曲に合わせてシーンを作って、その前後を固めていくっていうこともあるし。でも基本的には、お話の場面を描いていくことから始めるかな。

石塚

お話が軸で、そこから肉付けしていくように。

伊藤

最近はそういう感じが多いかな。でも、どうしても使いたい曲っていうのもいくつかあるから、そこを先に決めて、曲ありきで考えることもある。

石塚

選曲の基準はあるんですか? やっぱり有名な曲ですか?

伊藤

そうだね。なんで有名な曲がいいかっていうと、より多くの人の思い出に残っているから、観ているときに自分自身と重ねてみたり、自然と感情移入できるんだよね。知ってる曲がかかると、純粋に楽しんでもらえるしね。

石塚

口ずさんだりしますもんね。

伊藤

だから、楽しんでほしいときにはそういう曲を使うことが多いかな。“この場面でこの曲使うんだ!”って驚いてほしいときとか、クライマックスのバトルシーンで“この曲いいよね!”って思いながら観てもらいたいときとか。でも、すごく繊細な感情表現とか人間関係を描いているときは、有名な曲が入ると邪魔になることもあるんです。全体のセットリストを見たときに、あまりにも売れている曲でコテコテすぎるなっていうときには、あえて外したのを入れたりもする。

石塚

うまい具合に組み合わせて。

伊藤

ずっと賑やかな曲ばっかりだと聴いていても疲れちゃうでしょ。だから、アコースティックな曲を入れてちょっと耳を休ませるとか。そういう振れ幅は、セットリストのバランスを見ながら考えてますね。

 

言葉を使わないこと

石塚

今人さんは役者もされているから、喋りたくなっちゃいません? 私だったらきっと、言葉を発したくなっちゃうなと思ったんです(笑)。セリフ、ほとんどないですもんね。

伊藤

ちょっと喋るときはあるんだよ。語り部みたいに、最初に出てきて喋ったり、状況説明したり。で、もちろん喋りたくもなるし、セリフが持っている力も知っているし。でもセリフだとお客さんの心にグサッと刺さるときもあれば、すごく安易に感じるときもあるんですよね。喋ったら楽なんだけど、喋らないからこそ演じる側に負担が生まれて、もがいて出てくる表現がすごく面白かったりする。お客さんもその方がシンプルに見えて、誤解しなかったりするからね。

石塚

逆に伝わりやすくなるんですね。

伊藤

喋るっていう行為に走るのは簡単だと思うけど、喋って本意を伝えることこそ難しいと思っていて。ミスリードされることもあるし、喋ることによって面白さが減ってしまうこともあるし、伝わりすぎてお客さんの想像を奪ってしまったりもする。この人はこういう声なんだ、こういうトーンでこんな感じで怒ってたんだ、とか。身体のパフォーマンスだけで見せるとお客さんは想像する余地があるんだけど、喋っちゃうとそれがすべてになっちゃうからね。

石塚

お客さんの想像する幅を広げるというか。自由に考えられますもんね。

伊藤

もしかしたらそれが一番の理由かもしれない。終演後に書いていただくアンケートにも、登場人物の後日談みたいなのをイメージして書いてくれている人とかいるんですよ(笑)。絵を描いたり、四コマ漫画にしたり。

石塚

え~! 楽しいですね!(笑)。

伊藤

言葉の表現だとそんなことないかもしれない。きっとあのときこういうふうに言ってたんじゃないかとか、あいつはこんな気持ちだったんじゃないかとか、好きに想像して楽しめるから、その後のことまで考えてもらいやすいのかも。それが僕らの持ち味の一つなのかもしれないですね。

石塚

お客さんそれぞれにイメージが膨らんでいるから、面白いですね。

 

説得力のある表現

石塚

梅棒さんの映像で、オタクの装いをした人たちがバリバリに踊っているシーンを観たんですね。今までだと、ダンサーの方とかがオタクを演じるのを観たら、違和感しかなかったんです。ただネタ的に入れているような気がして…。

伊藤

面白そうだからっていうだけで、オタクの恰好をしてダンスやるみたいな企画があまり好きじゃなかったんだ?

石塚

そうなんです。でも梅棒さんのダンスは“アリだな!”って思ったんですよ。その人たちの感情までちゃんと読み取ってダンスにしているのがマッチしていて。ダンサーの方が役の感情を読み取るのって、どんなふうにしているのかなって思ったんです。

伊藤

基本的には演劇だと思って作っているからね。なぜここで踊るのかとか、なぜここで感情が高ぶるのかっていうのは、ちゃんと役作りをして臨んでいて、ただ形だけで見せていないからそう感じてもらえたのかも。

石塚

説得力というか、ちゃんとした筋を感じました。

伊藤

セリフを使わない分、ごまかしも効かないから、よりはっきり動機を作ったうえで見せないと説得力が生まれない。だからみんな役作りを一生懸命するんだよね。例えば“僕は10年アイドルを追いかけているんだ”って、言葉で説明すると簡単だけど、10年アイドルを追いかけている人の動きとか感情を、曲に合わせて踊りの中で膨らませて伝えなきゃいけないから、普通の演劇の役作りとはまた違う大変さがあると思う。

石塚

私、まだ映像でしか拝見できていないので、次はぜひ劇場で観たいと思っていて。次回作の梅棒 7th ATTACK『ピカイチ!』は、どんな作品になるんですか?

伊藤

次は学園モノです。とんでもない転校生が来たことによってめちゃくちゃにされた高校生が、転校生を倒して元の楽しい学校に戻すんだっていうお話。その高校生を30歳過ぎた僕たちが演じるわけ(笑)。そこに説得力を持たせられるかが大事だよね。“そんな高校生いるわけないじゃん”って思うかもしれないけど、それがストレスにならずに、面白くなればいいと思っていて。映像を観て“アリだな!”って思ってもらえたように、納得してもらえる演出をしたいなと思う。ドタバタコメディなので、きっと気軽に楽しんでもらえると思います!

 

対談を終えて

伊藤

自分の経験に基づいて具体的に質問してくれたから、すごく答えやすかった。朱莉ちゃんはどういう女優さんになりたいの?

石塚

舞台女優になりたくて。悪い芝居の作品を観たときにすごく思ったんです。

伊藤

そうなんだ!じゃあ朱莉ちゃんにとって山崎(彬)君(悪い芝居作・演出)はカリスマなんだね。

石塚

白黒だった世界に色を吹き込んでくれた感覚です(笑)。私がお芝居を観たときの気持ちとか感動をいろんな人に広めたくて、女優さんになりたいなって思ったのがきっかけです。

伊藤

へ~!すごい! 演劇作品自体への憧れって、素敵な動機だね。舞台女優としてステップアップするには、演出家さんとの出会いがすごく大事だと思う。演出家さんによって芝居のやり方とか捉え方が全然違って、今までのやり方が通用しないことも出てくるから。凝り固まらない方がいいかもしれない。僕もそういう経験があって今の自分の芝居に繋がっているから、いろんな演出家さんのもとで経験を積むのがいいと思うよ。いろんなやり方を知って、それが全部肉になっていくと、すごくいい女優さんになると思う。

石塚

ありがとうございます! 今人さんはバリバリのダンサーさんだと思っていたんですけど、すごく演劇に熱い方で楽しかったです。いつか一緒にやらせていただけるように、ダンスも頑張ります!

第7回は7月更新予定です。

 

取材:石塚朱莉(NMB48)
撮影:奥田晃介(松鹿舎)
文:黒石悦子
企画:葛原孝幸
企画・構成:岩本和子
取材協力:梅棒


 

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