ホーム > 劇団 石塚朱莉 > 第21回 鈴木紗理奈さん

 

 

 

Profile

鈴木紗理奈(写真左)
すずきさりな●1977年7月13日生まれ、大阪府出身。1992年、第6回全日本国民的美少女コンテストで演技部門賞を受賞。以後、グラビアやシンガー、テレビのバラエティ、ドラマ、映画、CMなど多岐にわたるフィールドで活躍。2017年7月、『キセキの葉書』(ジャッキー・ウー監督)でマドリード国際映画祭最優秀外国映画主演女優賞を受賞。

 

石塚朱莉(写真右)
いしづかあかり●1997年7月11日生まれ、千葉県出身。ニックネームはあんちゅ。NMB48チームBII。趣味は映画鑑賞。2016年夏、悪い芝居の『メロメロたち』で初舞台、初主演を果たし、2017年4月、悪い芝居『罠々』に出演。9月、劇団アカズノマを旗揚げ。2018年4月、柿喰う客の七味まゆ味を演出に迎えて、同劇団の人気作『露出狂』をABCホールにて上演した。また、第2回公演『夜曲 nocturne』(作・横内謙介、演出・七味まゆ味)が2019年1月24日(木)~27日(日)ABCホール、31日(木)~2月3日(日)新宿村LIVEにて上演される。

NMB48公式サイト
http://www.nmb48.com/

Stage

タクフェス第6弾『あいあい傘』
チケット発売中 Pコード:488-131

【大阪公演】
▼11月30日(金) 18:30
▼12月1日(土) 12:00/17:00
▼12月2日(日) 12:00
▼12月3日(月) 14:00(★)
▼12月4日(火) 13:00

梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ

全席指定-7500円

[作][演出]宅間孝行
[出演]星野真里/宅間孝行/鈴木紗理奈/竹財輝之助/弓削智久/大薮丘/前島亜美/越村友一/柿澤仁誠・佐田照(Wキャスト)/モト冬樹/川原亜矢子/永島敏行

※(★)アフタートークショーあり([出]宅間孝行/鈴木紗理奈/前島亜美/越村友一)。
※未就学児童は入場不可。
※一部Wキャストあり。

[問]キョードーインフォメーション
■0570-200-888

チケット情報はこちら

 

劇団アカズノマ『夜曲』
12月8日(土)一般発売

【大阪公演】
▼1月24日(木) 19:00
▼1月25日(金) 14:00/19:00
▼1月26日(土) 13:00/18:00
▼1月27日(日) 16:00

大阪・ABCホール

【東京公演】
▼1月31日(木) 19:00
▼2月1日(金) 14:00/19:00
▼2月2日(土) 13:00/18:00
▼2月3日(日) 16:00

東京・新宿村LIVE

全席指定(一般)-4500円
全席指定(学生)-3000円

[作]横内謙介
[演出]七味まゆ味
[出演]石塚朱莉/古賀成美/汐月しゅう/七味まゆ味/丸山厚人/森下亮/他

劇団アカズノマ
http://akazunoma.me/

2016年に京都の劇団・悪い芝居の『メロメロたち』で初舞台を踏み、2017年に上演された同劇団の『罠々』でも稀有な存在感で魅せたNMB48の石塚朱莉さん。演劇の魅力を広く伝えるべく、2018年4月、自らが劇団アカズノマを旗揚げ。柿喰う客の七味まゆ味さんを演出に迎えての第1回公演『露出狂』を上演し、大盛況のうちに終えました。そして2019年早々、同じく七味さんの演出で第2回公演『夜曲』の上演が決定! 舞台人としてさらなる高みを歩んでいる石塚さんが、脚本家、演出家、俳優として活躍する諸先輩方に「演劇のいろは」をお聞きします!

今回は女優の鈴木紗理奈さんにご登場いただきました。2018年10月から初舞台のタクフェス第6弾『あいあい傘』が幕を開け、ただいま全国を巡演中。宅間孝行さんの演出を受け、テキ屋の仲間・ヒデコ役を熱演されています。今年3月の放送終了を迎えるまで、22年続いたフジテレビのバラエティ番組『めちゃ×2イケてるッ!』で、時には体を張りながらコメディエンヌとして活躍し、ざっくばらんな親近感のあるキャラクターで魅了してきた鈴木さん。その間、ドラマはもちろん、数々の映画にも出演され、2017年7月に『キセキの葉書』(ジャッキー・ウー監督)で、マドリード国際映画祭最優秀外国映画主演女優賞を受賞されました。舞台、映画、コメディとジャンルは違っても大切にしていることはすべて同じと語る鈴木さん。その一貫した思いとは?

 

エンタメの真髄

鈴木紗理奈
(以下、鈴木)

私、初舞台なので教えられることはないですよ…!

石塚朱莉
(以下、石塚)

(笑)。よろしくお願いします。宅間さんは第15回の「劇団石塚朱莉」にご登場いただいたんです。稽古場ではとても厳しい方だそうですが、実際どうでしたか?

鈴木

私は「厳しい」と言った方がええやろなっていう場面では「厳しい」って言っていたんですけど(笑)、稽古を終えてみて、何でこれで厳しいと言われているんやろうっていう感じでした。指導することが理に適っていて、芝居が良くなることとか、エンタテインメントの真髄のことを言われていて。ちょっと言葉がきついから厳しく聞こえるかもしれないけど、宅間さんの言っていることを聞いてたらお芝居もすごくうまくなるし、エンタテインメントへの理解も生まれるし、こんなことを教えてくれる人はいないなって思いました。だから私は優しさしか感じなかった。

石塚

エンタテインメントの真髄というのは?

鈴木

すごく共感したことで、まず、芝居していると見えたらあかんっていう。「ああ、芝居がうまいな」って言われたら、それは下手くそやってことやからなっておっしゃっていたんです。

石塚

宅間さん、インタビューをさせてもらった時もおっしゃっていました。

鈴木

私がすごく信頼する人と同じところからものを見てたんやって思って、その一言ですごく信頼して。私も、自分はいかに鈴木紗理奈をリアルで生きられるかということを自分の中で掘り下げていて、アホに見えるところはほんまにアホに見られなあかんし、「器用やね、鈴木紗理奈は」じゃなくて、「ほんまにアホやな、こいつ」と思われることの方が大事やっていうことを『めちゃ×2イケてるッ!』(以下、『めちゃイケ』)で学んできて。『めちゃイケ』では「そういうふうに思われたら損やん」っていうことも歯を食いしばってまでやったこともあったけど、でも、それが大事やったなっていうことを積み重ねていて。その結果、「ああ、紗理奈が言うと説得力がある」ということになったので、「これを信じてきて良かったんや」ということと同じことを、宅間さんは舞台稽古初日におっしゃっていたんです。エンタメの真髄は、いかにリアルに見せるかっていうこと。それはスキルの部分もあるけど「まず芯は、生きてないとダメだよ」って。あとは、ト書きに引っ張られるな、セリフに引っ張られるなということ。怒ったセリフを怒って言うなとか。宅間さんは、スキルアップすることしか言ってない。私はそういう印象やったから楽しくてしょうがなかったかな。

石塚

そうなんですね。すごく怖いって聞いていたので…。

鈴木

全然怖くない。たっくん、超優しいで(笑)。

石塚

たっくん(笑)。

鈴木

マブダチ(笑)。…って言っても怒られへんくらい、全然怖くない。すっごい愛の塊のある人やと私は思った。まあ、怖く映る人には映るのかな。それは分からへん。私が鈍感なのかもしれない(笑)。

 

公演ごとに芝居を変える?

石塚

宅間さんは劇中の音楽にもすごく力を入れているとおっしゃっていたんですけど、『あいあい傘』での音楽はどうですか?

鈴木

すごいと思う。シーンごとに流れる曲で芝居を理解したこともあるし、“この音楽が流れるのに、この芝居求められてんねや、超難しい!”と思ったこともあったし。どう見せたら宅間さんの求める芝居に応えつつ、BGMに乗せる芝居をできるんやろうとか。大事な場面では曲が流れていて、それがすごくいいの。

石塚

演技プランを劇中音楽によって変えたこともありましたか?

鈴木

ある。ちょっと変えようと思って、でも、それに引っ張られるなと言われたこともあるけど、私はラストのシーンで「あいあい傘」のそもそもの趣旨説明をする芝居があるんですけど、曲を聴いて芝居プランを変えました。

石塚

初日の幕が開いてからも、お客さんの反応でセリフとか演技を変えることもあるんですか?

鈴木

バンバン変えてる。宅間さんには変える前に言わないといけないけど、私はバレへんところでめっちゃ芝居変えてる(笑)。たまに「あそこのシーンやけど」って注意されることもあるけど、その日のお客さんの空気とかを見て変えてる…(笑)。ウケへんかったところはパッとやめて。だから相手役の人に怒られる(笑)。「好き勝手やって」って。でも好き勝手じゃなくて、私の中ではその日はこうした方がいいっていう、忘れたから取り繕うということではなくて、一応私の中で考えていることやねんけど…。私はバラエティが長いからか、台本はあくまでも方向指示器やと思っていて。一言一句、台本に書いていることをしゃべる必要はないと。まあ、そういうことをしちゃうから、ちょっとだけ共演者に迷惑かけてるかも…(笑)。でも、それをやったらあかんっていう宅間さんが一番、本番でアドリブ入れてるねん。宅間さん、超好き勝手やってんの!

石塚

そこに翻弄されるんですか?

鈴木

翻弄されるというより、「宅間さんも好き勝手やってるから、私もやろ~!」って勇気をもらう。宅間さんとモト冬樹さんはガンガン、アドリブ入れてる。だからめっちゃ尊敬する。観る回によっては、宅間さんは全然違うかも。

 

演じるときに大切にしていること

石塚

紗理奈さんは映像にもたくさん出られていますが、演じることに対して映像と舞台などで違いはありますか?

鈴木

私は全部同じと思っていて。ドラマ、映画、バラエティも、それぞれのセオリーがあって、ルールは違うけど、本人にちゃんと軸があって、言っていることに命が吹き込まれているか、吹き込まれていないか、その一言を聞いたときに本当に言っている言葉に聞こえるか、聞こえないか。どんなフィールドに行っても、必ずこのことを心掛けてる。一番大事なことはそこだと思うから。

石塚

舞台も映画も、変わらなくて…。

鈴木

変わるのはスキルの部分というか、見せ方だと思う。「ああ、本心で言ったんやろ、それ」って思われるようにセリフを言えているかがプロのエンターテイナーの生業やと思うから、常にそれさえあったら下手でも何でもいいと思ってるというか。生きている言葉になっているのかっていう、そこだけかも。

石塚

すごい…かっこいいですね。

鈴木

全然かっこよくなくて、それしかできへんだけ。

石塚

いえいえ、すごくしっくりきました。

 

セリフの覚え方

石塚

単純に私が気になっていることなんですけど、初舞台で、セリフってどうやって覚えましたか?

鈴木

稽古の前に全部覚えていったの。それがルールやって聞いて、そうしなあかんねやと思って。台本は200ページくらいあんねんけど、ほぼほぼ覚えていって…。私もみんなどうやって覚えるんやろって思って、周りの人に聞いて。ドラマやと1シーンだけ覚えたらいいから、ざっくりと読んで何回か声に出して言ったら覚えられるけど、200ページとか…。で、私は、まずは自分の声で全員のセリフを言って、それをすべてレコーダーに吹き込んで、ひたすら聞いてた。

石塚

自分の声で。

鈴木

うん。それである程度頭に入ったら、役者志望の友達に私以外のセリフを言ってもらって、一緒にセリフを読みながらまた録音したものを常に聞いてた。それが一番覚えられた。流れも入ってきて。ドラマやったら1シーンが終わるごとに台本を読めるし、他の人のところも理解していなくてもできるけど、舞台はそれではダメやから、流れで覚えなあかんから。そしてスマホのレコーダーで録音したものを、運転している時も、歩いている時も聞いて、ひとり言のように人のセリフを言ってた。

石塚

そうなると、誰の役でもすぐ芝居に入れる感じですか?

鈴木

たぶん、私ができないほうなくらい、『あいあい傘』に出られている方は全員が全員のセリフを覚えていたと思う。今日はあの人が稽古に遅れているから、その役やってとか、今日は稽古に入れないから代役をやってとか、それを全員がぱっとこなせる。

石塚

そうなんですね! 自分のボイスレコーダーで。ちょっとやってみます。

鈴木

常に台本持つのは無理やん。寝る前は台本持って読むけど、普段行動している時に台本を持つのは無理やから、音声を聞いてた。そしたら覚えられた。

 

映画『キセキの葉書』に出演して

石塚

去年、『キセキの葉書』で「マドリード国際映画祭」最優秀外国映画主演女優賞されましたが、そのことが演技に対しての自信につながりましたか?

鈴木

『キセキの葉書』ではお芝居をした感覚がなくて。撮影していた10日間は、私としてはお芝居したというより、生きた心地というか…。その時、子育てがすごく大変だったので、母としての気持ちとかスッと入り込めたんでしょうけど、そうじゃない役の時もその感覚になるようにしようと思いました。そのためには何が必要かといったら、やっぱり経験だと思ったので、いっぱい傷つかなあかんし、いっぱい苦労もせなあかん。その言葉をスッと出せる経験をしないといけないなと思ったので、「あ~、また苦労しなあかんのか…」っていうふうにも思いました。言葉にリアリティを持たせるために。スキャンダラスな人生をちゃんと送っていないと、いい芝居はできないなと思いましたね。

石塚

それを思うとしんどいですね…。

鈴木

そう。超しんどいやんって思ったけど、でも、母として経験した苦労がその映画で報われたと思った。「ああ、親になってなかったら、こんなふうに言わんかったやろうな」っていうことがいっぱいあったので。いい役ばっかりではないじゃないですか。悪い女の役の時も、「それ知ってる、知ってる、その気持ちになったことある」ってならないとダメなので…。例えば若い男を転がしたりとか(笑)。やっぱり経験やなとは思います。私は不器用なタイプなので。だから「あ~、苦労か~」と(笑)。石塚さんは今、何歳なん?

石塚

21歳です。

鈴木

恋愛はしたらあかんのよな? でも私は、だからこその説得力もあると思うから、それはそれで突き詰めたらいいと思う。

石塚

そうですね。多分、縛られている時は今しかないので…。

鈴木

ただ、私が言ったことはあんまり参考になれへん(笑)。今日、石塚さんはどう感じてんねやろって思いながら、私はこれしか言われへんから、石塚さんに合わせずしゃべってんねんけど(笑)。

石塚

紗理奈さんのことは、バラエティですごく活躍されている姿も見ていて、私もアイドルとしてバラエティ的なことをやらなきゃいけない…、やらなきゃいけないというわけじゃないですけど…。

鈴木

やらなきゃいけないと思う仕事はやったらあかんで。やりたい人に負けてしまうからね。

石塚

ああ、そうですね。だから、今、こういうふうにやっていったらバラエティもお芝居も幅広くやっていけるんだなと思って、無限の可能性を感じました。

 

バラエティで学んだこと

石塚

バラエティで一番学んだことって何ですか?

鈴木

「リアルを生きろ」です。怒られるんです、キャラと違うことを言ったら。「何であのセリフを言ったん?」って呼び出されて。「面白いと思って言いました」「じゃあ、どういう意図で?」って。それを伝えると、「それって鈴木紗理奈は言うかな」みたいな。最初にも言ったように、宅間さんも同じことを言っていて。「ヒデコってそんなふうに言うかな?」とか。その人として生きろっていうことやと思うんですけど、ただ、『めちゃイケ』は、18歳の時に「こんなキャラです」って出したことを22年間やらされ続けてきた(笑)。「今は子どもも産んだし違うセリフも出るよ!」っていう時も、「え? 鈴木紗理奈ってそんなヤツやった? そんな丸いことを言うっけ?」みたいな(笑)。

石塚

私は14歳でNMB48に加入して、大人になったのでもうちょっと大人びたことを言いたいんですけど…。

鈴木

でもファンの人はしっくりこないやろ? 14歳の時のままのキャラを求めるやろ。私はそれを22年やってきた(笑)。その時はもう嫌やと思っててんけど、今、そのジャブが効いてて。今、バラエティに出せてもらった時に、22年間守ってきたキャラでポンって言ったら、人よりウケたり、説得力になるから、やってきてよかったって思ったの。なので、14歳の時に提示したキャラを続けつつ、いつか脱出できる時のために経験を積めばいいと思う。それで得た武器はまだ出さずにしまっとく。今は「もう14歳ちゃうし」って思うかもしれないけど、後から必ずジャブが効いてくるから。なので楽しんで(笑)。

石塚

はい! わかりました!

 

タクフェス第6弾『あいあい傘』

石塚

今ご出演されている『あいあい傘』はどんなお芝居でしょうか?

鈴木

温かいですね。小学校の時に習ったようなことが詰まっているんですけど、忘れているんですよ、大人になったら。仕事せなあかんし、お金がないと生きていかれへんしっていうこともあったりして。その時に大事にせなあかんものが人の心じゃないこともあったりするから、忘れているんですよ。『あいあい傘』は、「そうそう、家族が一番大事で、友達に支えられてた」とか、すっごいシンプルだけど忘れていることを思い出させてくれる舞台です。で、今すぐ帰って、家族とか大切な人とかに会って「ありがとう」って言いたくなる。非常に優しい、温かい作品です。

石塚

『あいあい傘』は舞台の開幕と同時に映画も公開されましたが、紗理奈さんは映画はご覧になったんですか?

鈴木

観てないの。舞台の顔合わせの日、みんな観てきたみたいやけど、その情報を聞いていなくて、私だけ観てないの。

石塚

映画と舞台、どっちから先に見ようか悩んでいて。

鈴木

舞台だけでいいんじゃないの? うそうそ(笑)。う~ん、どうやろ…。分からんけど、映画は公開が終わる前に見ないとあかんしね。

石塚

舞台が全公演、終わったら映画も観られる予定ですか?

鈴木

もちろん観る。比べる。どっちがいいか観る。でも、どっちが先がいいのかね、分かんない。それは観た人が判断するやろね(笑)。

 

取材:石塚朱莉(NMB48)
撮影:福家信哉
企画:葛原孝幸
構成:黒石悦子
文:岩本和子

 


 

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