筒井俊作(写真左)
つついしゅんさく●1982年11月3日生まれ、東京都出身。2002年に演劇集団キャラメルボックス入団。同年『裏切り御免!』で劇団公演の初舞台を踏む。舞台『ショーシャンクの空に』(2013年、演出:河原雅彦、脚本:喜安浩平)、『おおきく振りかぶって』(2018年、脚本・演出:成井豊)など、外部作品にも多数出演。
公式サイト
http://www.caramelbox.com/
石塚朱莉(写真右)
いしづかあかり●1997年7月11日生まれ、千葉県出身。ニックネームはあんちゅ。NMB48チームBII。趣味は映画鑑賞。2016年夏、悪い芝居の『メロメロたち』で初舞台、初主演を果たし、2017年4月、悪い芝居『罠々』に出演。9月、劇団アカズノマを旗揚げ。2018年4月、柿喰う客の七味まゆ味を演出に迎えて、同劇団の人気作『露出狂』をABCホールにて上演する。
公式サイト
http://www.nmb48.com/
キャラメルボックス『夏への扉』
〈キャラメルボックス 2018スプリングーツアー〉
【東京公演】
チケット発売中
Pコード:482-994(一般)、483-000(ユースチケット、小中高生シート、OVER60割引)
▼3月14日(水) 19:00
▼3月15日(木) 14:00
▼3月16日(金) 19:00
▼3月17日(土) 12:00/16:30
▼3月18日(日) 13:00
▼3月20日(火) 19:30
▼3月21日(水・祝) 13:00
▼3月22日(木) 19:00
▼3月23日(金) 19:00
▼3月24日(土) 12:00/16:30
▼3月25日(日) 13:00
サンシャイン劇場
全席指定-7000円
ユースチケット(24歳以下)-4000円
小中高生シート-1000円
OVER60割引-4000円
[劇作・脚本]成井豊+真柴あずき
[演出]成井豊
[出演]畑中智行/大内厚雄/筒井俊作/原田樹里/木村玲衣/金城あさみ/竹鼻優太/元木諒/石川彩織/島野知也/矢野聖
[ゲスト]井俣太良/百花亜希
※未就学児童は入場不可。
[問]キャラメルボックス■03-5342-0220
【兵庫公演】
チケット発売中 Pコード:482-994
▼3月28日(水) 19:00
▼3月29日(木) 14:00
明石市立市民会館 大ホール
全席指定-7000円
ユースチケット(24歳以下)-4000円
小中高生シート-1000円
OVER60割引-4000円
[劇作・脚本]成井豊+真柴あずき
[演出]成井豊
[出演]畑中智行/大内厚雄/筒井俊作/原田樹里/木村玲衣/金城あさみ/竹鼻優太/元木諒/石川彩織/島野知也/矢野聖
[ゲスト]井俣太良/百花亜希
※未就学児童は入場不可。
[問]キャラメルボックス■03-5342-0220
2016年に京都の劇団・悪い芝居の『メロメロたち』で初舞台を踏み、2017年に上演された同劇団の『罠々』でも稀有な存在感で魅せたNMB48の石塚朱莉さん。9月には、演劇の魅力を広く伝えるべく、自ら劇団アカズノマを旗揚げ。そんな石塚さんが、舞台女優としてさらなる高みを目指すべく、脚本家、演出家、俳優として活躍している演劇界の諸先輩方に「演劇のいろは」をお聞きします!
今回ご登場いただいたのは、演劇集団キャラメルボックスの俳優・筒井俊作さん。2002年に入団後、劇団公演を中心に数多くの経験を積み、今や看板俳優のひとりとして活躍されています。次に控えるのは、7年ぶりの再演となる『夏への扉』で、主人公の飼い猫ピート役。初演でもピートを演じ、存在感を発揮した筒井さんに、役者としての“動き”や“発声”のこと、役作りについてなど、演じるうえで大切なことをお聞きしました。
空間を埋める、ということ
石塚
今日は「空間を埋める」ということについて聞いてみたくて。
筒井
出た!
石塚
前回出た『罠々』(2017年4月/悪い芝居)でも、(作・演出の)山崎彬さんに「空間を埋めろ」ってずっと言われてて。
筒井
埋めてたじゃないですか!
石塚
いやー、難しすぎて。私はまだ2作品しか出ていないというのもあって、舞台の使い方とか自分の身体の使い方を全然把握しきれてないですし。キャラメルボックスさんは毎回大きい劇場でやられているので、ますますどうやってるのかなって。
筒井
それはでも年齢を重ねても、舞台経験が多くても、難しいところではあると思います。だから具体的に「こうしたらいいよ」というのは難しいんですけど、キャラメルボックスの場合は(演出の)成井(豊)さんの好みもあって、役者が身体全体を使って舞台上を動き回るっていうのがベースにあるんですよ。だから僕たちは、劇団に入って初舞台を踏む前から感情をより大きく感じて、身体をダイレクトに動かすっていう訓練を受けるんです。
石塚
へえー!
筒井
でもそれは普通の生活の動きとはやっぱり違うので、最初は戸惑うところですよね。
石塚
それはどういう感じですか?
筒井
感じた感情を大胆に大きく出す、という感じかな。
石塚
動きだったり言葉だったり?
筒井
細かく言うと声量だったりも。成井さんが新人に説明するときに「センテンスの中で強弱をつけろ」って言うんですけど。
石塚
どういうことですか?
筒井
例えば「僕は・今朝・パンを・食べました」のように、センテンスが4つに分けられるとすると、どれが一番言いたいことかを決めるんです。基本的には1個、長い文章でもせいぜい2個くらいで、そこを強調するんですよ。「パン」が大事なのか、「今朝」が大事なのか、みたいなね。
石塚
ああ! それによって全然違ってきますもんね。
筒井
そうなんです。全部立てると押しつけがましくなるけど、何かを立てないと何が言いたいかがわからなくなる。ただ、そればっかりでもダメなんですけどね。うちの若手はそればかりやろうとして迷走していく期間もあります。
どこにいても観ているお客さんはいる
石塚
難しいなあ、お芝居。全然わかんないなって最近思ってて。
筒井
それで『罠々』のあのお芝居!? しかも2本目で! 僕は感心しますよ。
石塚
うそ。ほんとですか?
筒井
素晴らしかったです。すっごくよかった。あんな華奢な子が出てきて、あれだけパワフルなことをされると、もう持ってかれます、観客のハートは。
石塚
嬉しい! でもほんと「空間を埋める」のは難しかったです。
筒井
確かに難しいところですね。ただ、逆パターンもあって。フォーカスを別の役者さんに当てるために「空間を埋めない」っていう。
石塚
ああ~。ただそれ、役者さんによってはその場にいるだけで目がいってしまうみたいな人いませんか。
筒井
出ました名優! いますね。
石塚
台詞もないのに絵になる役者さん、いますよね。別の人のシーンやのに、どうしても目がいっちゃうなって。
筒井
わかる。しかも年齢関係ないんですよね。雰囲気というかオーラというか。
石塚
生まれ持ってるような。
筒井
すごくよくわかります。
石塚
私、筒井さんにもそれを感じたことがあります。舞台『トンマッコルへようこそ』(2016年5月)で、別の方々が会話をしていて、筒井さんは森の茂みで手榴弾か何かを捜しているようなシーンがあって。そのときに私は、会話してる人じゃなくて筒井さんをずっと観ちゃったんですよ。
筒井
ありがとうございます。それがいい悪いは演出家さんによるんですけど、僕は板の上にいる限りは気を抜きたくないんですよ。台詞がなくても舞台の隅っこにいても、お客さんの1人か2人は必ず観ているので。それは100%の確率で。
石塚
何回も観てるお客さんなんかは特に細かいところを観たいって思いますしね。
筒井
だから台詞がないときでもちゃんと自分の役を埋められるように、というふうに常に考えてますね。
石塚
細かいとこまでみっちりみっちりやっていくほど、作品の完成度は上がっていく…。
筒井
そう思います。キャラメルボックスは劇団なので、台詞がない役とかも劇団員がやるのですが、そういう役こそ「あそこが埋まってない」「ただの自分に戻ってる」みたいなことを言い合って。育ててもらいましたね。
キャラメルボックスの若手の育て方
石塚
キャラメルボックスさんって新人の方が毎年のように入ってきてますよね。
筒井
それには狙いがあって。キャラメルボックスって「俺が主役をやる」「俺が何をやる」よりは「全員で面白お芝居をつくろうぜ」って集団なんです。だから全員でいいものをつくるには、常に新しい風が入ってきたほうがいい。世代が変わると考え方も変わりますからね。だからほぼ毎年、新人が入っています。
石塚
次の公演の『夏への扉』は、若手の木村玲衣さんが出られますよね。
筒井
そうそう、『トンマッコルへようこそ』にも出てた子ですよ。
石塚
私、その頃から木村玲衣さんが大好きで。
筒井
え!? それ、調子に乗るから言わないで!(笑)
石塚
え!(笑)
筒井
うそ、ありがとうございます(笑)。
石塚
若手の方がそうやって前に出てるのはすごく素敵だなって。
筒井
キャラメルボックスって、若手や新人だから台詞のない役で下積みをさせる…とかではなくて、新人にもドラマを背負うパートをまかせるんです。成井さんは、大体3年から5年後くらいまで考えて、「この人にいつかこういう役をやらせたい」という布石としてどんどんドラマを当てていくので。
石塚
へー!
引き出しを増やす理由
筒井
僕も、24歳のときに65歳の役をふられて。
石塚
ええ!?
筒井
座組の中に、客演も含めて40代後半の諸先輩方がいる中で、24歳の一番の若手がなぜか65歳の役をやるっていう。白髪でメイクして。成井さんからのダメ出しは「全然おじいさんに見えない」なんですけど、「そりゃそうだろ」って思いながら(笑)。
石塚
年齢が全然追いついてない。
筒井
そうなんですよ。人生経験もなにも追いついてないのに。しかも育ててきた子供を手放す役どころで。
石塚
うわー。役作りはどういうふうになさったんですか? だって本当に知らない感情ですよね。
筒井
もう想像でしかないんですよね。とにかく新聞、小説、映画、なんでもいいからそういう気持ちが表現されてるものの資料を読み漁って、想像しましたね。それで内面(気持ち)をつくったあとは、これが厄介な…外面の表現になってくる。
石塚
動きの部分。
筒井
一歩間違うとコントになっちゃうから。これはもう見て学ぶしかないですね。ご高齢の方を見つけたら「どういう仕草をするんだろう」ってとにかく研究する。
石塚
そうか。細かい仕草に年齢って出ますもんね。
筒井
ああいう姿勢になるのは腰が痛いからなのかとか、膝が痛いから一瞬ああいう体勢になるのかとか、そういうのをずーっと見ながら、考えて考えて考えていくしかなかったです。
石塚
はー! その細かい動きが最終的に65歳の人になるんですね。
筒井
めちゃくちゃ苦労したんですけど、あのときやっててよかったなって今は思いますね。
石塚
どういうところがよかったんですか?
筒井
役を突き詰めていくと、最終的に自分の引き出しになってくるんですよね。そうすると、例えば『ショーシャンクの空に』というお芝居に出させていただいたときに、僕は大小さまざま5、6役やらせてもらったんですけど、中にはパッと出てきて今までの伏線を全部回収していなくなるキャラクターとかもいて。その1シーンだけのキャラクターをゼロからつくりあげようとすると、すごく大変なんです。でも今までやってきたいろんな役の引き出しから持ってくることで、つくりやすくなる。
石塚
引き出しを増やしていって、「この感情はあのときの感情に近いんじゃないか」みたいな感じですか。
筒井
そうです。役のスタート地点が少し近づくっていう。今はもう歳をとった役も何度もやっていますが、やっぱり最初に演じたときの経験が生きてきますしね。財産になりました。
石塚
じゃあひとつひとつちゃんとつなげていったら、いい役者さんになれる……かも!
次回公演『夏への扉』は7年ぶりの再演
石塚
キャラメルボックスさんが春に上演される『夏への扉』は、どんな話ですか?
筒井
原作は、ロバート・A・ハインラインさんが1956年に書かれたSF小説なんですけど、日本ではいまだに好きなSF小説ランキングでベスト5に絶対に入っているような評価の高い作品で、今回は2011年の再演なんです。
石塚
ロングセラー小説なんですね。
筒井
親友に裏切られた男が、親友の策略によってコールドスリープさせられちゃって、はるか未来に無一文で投げ出されちゃうっていうお話で。でもその男が諦めずに、その絶望的な状況の中でも自分にできることを一つひとつ重ねていくうちに、最後は“夏への扉”が開けるんじゃないか…みたいな。
石塚
タイトルはそんな意味が込められてるんですね。筒井さんはどんな役なんですか?
筒井
僕は主人公が飼っている猫のピートという役です。
石塚
猫の役! それこそ難しそう。
筒井
いやー初演のときは何回猫カフェ行ったか(笑)。
石塚
あははは!
筒井
舞台でニャンニャン言うわけじゃないんですよ? でもさっき言ったようにすごく人気のある小説で、しかもピートがまた人気のあるキャラクターなんですよ。それを俺が!?ドラえもんじゃないんだぞ?って思いながら。
石塚
(笑)
筒井
だから緊張しちゃって、すごく苦労しました。ただ、その公演中に震災(3.11)が直撃したんです。公演も4、5ステージ中止になって。でも再開しました。
石塚
すごい…。
筒井
内容的にも、どんな困難な状況でも一歩一歩進もうぜっていうメッセージ性のあるお芝居だったので。だからやる意味があるんじゃないかっていうことで、いろんなお芝居が中止になる中でやらせていただいたんですね。ただ物理的に劇場に足を運べる方が少なくて。
石塚
そうですよね。
筒井
でも来てくれたお客様はすごく楽しんでくれたので。今回はそれに対する「ありがとうございます」って想いと、観に来られなかった方々にもやっぱり観ていただきたいなっていう想いもあって。主人公と猫のピートは初演と同じふたりがやるんです。
石塚
それは本当にたくさんの人に足を運んでほしいですね。私も行きたいです。
筒井
ぜひ観に来てください、木村玲衣も出ますので。
石塚
楽しみです!
対談を終えて
筒井
連載も読ませていただいてたし、『罠々』も観てたので、僕、最初から好印象なんですよ。それでお会いして、すごくまっすぐな方なんだなって思いました。
石塚
ありがとうございます。
筒井
こうやって直接お話しした印象と、舞台上でのパワーの差がすごくて。
石塚
今日は自分でも声ちっちゃいかもって思ってました(笑)。
筒井
いやいや、いい意味で言ったんですよ。つまり舞台上ではあれだけギアを上げられるわけじゃないですか。こんな言い方、僕がするのはおこがましいけど、それってすごい舞台に向いてるなって。
石塚
ええー。すごく嬉しいです。
筒井
『罠々』でもすごくパワー感じましたもん、嘘偽りなく素晴らしかった。
石塚
ありがとうございます! 今日、お話させていただいて楽しかったです。もっといっぱい聞きたいことあったので、またどこかで聞けたらなと思います。
筒井
ごめんなさい。僕の一個一個の返答が長かったから(笑)。
石塚
私も深く深く聞きたくなってたので。本当にありがとうございます。
筒井
こちらこそありがとうございます!
取材:石塚朱莉(NMB48)
撮影:福井麻衣子
企画:葛原孝幸
構成:黒石悦子
文:中川實穗