ホーム > 劇団 石塚朱莉 > 第13回 文楽人形遣い 吉田幸助さん

 

 

 

Profile

吉田幸助(写真左)
よしだこうすけ●1966年2月17日生まれ、大阪府出身。1980年7月、吉田玉幸に入門、吉田幸助と名乗る。1981年朝日座で初舞台。2015年、第34回国立劇場文楽賞文楽優秀賞など、さまざまな賞を受賞している。2018年4月、吉田玉助を襲名する。

 

石塚朱莉(写真右)
いしづかあかり●1997年7月11日生まれ、千葉県出身。ニックネームはあんちゅ。NMB48チームBII。趣味は映画鑑賞。2016年夏、悪い芝居の『メロメロたち』で初舞台、初主演を果たし、2017年4月、悪い芝居『罠々』に出演。9月、劇団アカズノマを旗揚げ。2018年4月、柿喰う客の七味まゆ味を演出に迎えて、同劇団の人気作『露出狂』をABCホールにて上演する。

公式サイト
http://www.nmb48.com/

Stage

『うめだ文楽2018』
チケット発売中 Pコード:481-366

「傾城恋飛脚 新口村の段」
▼2018年2月2日(金) 19:00
▼2018年2月3日(土) 11:00/15:00
▼2018年2月4日(日) 11:00/15:00

グランフロント大阪 北館4F
ナレッジシアター

全席指定-4000円

[出演]豊竹希太夫/鶴澤寛太郎/吉田幸助/吉田玉勢/吉田簑紫郎/桐竹紋吉/吉田玉誉/吉田簑太郎/桐竹勘次郎/吉田玉彦/桐竹勘介/吉田簑之/吉田玉延/吉田玉征

[ゲスト]
桂南光(2/2(金)19:00)
NAOTO(2/3(土)11:00)
三戸なつめ(2/3(土)15:00)
石田靖(2/4(日)11:00)
三浦しをん(2/4(日)15:00)

※未就学児童は入場不可。車椅子席ご希望の方は問い合わせ先まで。

[問]うめだ文楽事務局■06-6314-8262

「傾城恋飛脚 新口村の段」あらすじ
大坂の飛脚宿で働く忠兵衛は遊女・梅川と恋仲になり、公金300両の封印を切って梅川を身請けする。雪の降る中、2人は死ぬ覚悟で忠兵衛の故郷・新口村にたどり着く。隠れる2人の前に忠兵衛の父・孫右衛門が通りがかるが、薄氷に足を滑らせる。思わず飛び出し、介抱する梅川。彼女の話から事情を察した孫右衛門は、苦しい胸の内を語る。2人に目隠しをし、親子を引き合わせる梅川。追っ手が迫る。逃げる息子と恋人を見送る父は手を合わせ…。罪人になっても、親にとって子供は可愛いと息子・忠兵衛を想う父親・孫右衛門。しんしんと降る雪が太鼓の音で表され、親子の情愛、男女の愛が描かれる。

チケット情報はこちら

Movie

2016年7月、京都の劇団・悪い芝居の『メロメロたち』に出演し、女優として初舞台を踏んだNMB48の石塚朱莉さん。役者としての第一歩を踏み出したばかりの彼女が、さらなる高みを目指すべく、脚本家や演出家など演劇界の諸先輩方に「演劇のいろは」をお聞きします!

今回お話を伺ったのは、文楽の人形遣い吉田幸助さん。若手が中心となり文楽の魅力を幅広い世代に届ける「うめだ文楽」に、第1回からリーダー的存在として連続出演し、同企画を引っ張ってきた。また文楽本公演でも大役を務める機会が増え、2018年4月には、祖父の三代吉田玉助の名跡を継ぎ、四代を亡父・玉幸に追贈、五代吉田玉助を襲名することが決定している幸助さん。「演劇を深めるには伝統芸能のことも知っておきたい」と、文楽観劇初心者の石塚さんが、文楽の基本的なことから楽しみ方まで、教えていただきました!

 

人形を動かすときの意識

石塚

私、中学生のときに学校で文楽を観に行ったことがあって。何の演目か忘れたんですけど、舞台セットがすごく迫力があって、上から紙吹雪も降ってきて。こんなすごいものがあるんやっていう印象が残ってるんですけど、それ以来全然観に行けてないんです。

幸助

そうだよね。なかなか若い子が文楽を観に来るのって何かきっかけがないと難しいですもんね。

石塚

人形遣いとして、お人形を動かしながらお芝居するって難しそうだなって思うんですが、どんなところを意識して演じられていますか?

幸助

文楽はね、お人形と一緒に動いちゃダメだって言われてるんですよ。一緒に動くと邪魔になるから。最初はそれがなかなか難しいので、そういうところから勉強していかなきゃいけないんです。

石塚

あくまでもお客さんの目が人形にいくように。

幸助

そうそうそう。

石塚

人形遣いの方は喋ったりもしませんもんね。

幸助

喋るのは太夫さんだけ。太夫さんが義太夫節というのを語っていて、人形遣いは無言。キメのときに「よっ!」とか言うくらいやね。

石塚

人形遣いのお稽古ってどういう風にされてるんですか?

幸助

ひとつの人形を3人で遣うんだけど、重たいやつだと8~9キロあるのね。

石塚

お~、赤ちゃんよりも重い。

幸助

だから人形を持ち上げて遣うときって何分も持ってられなくて、3人で遣ってこそ人形が軽くなって持てるんですよ。でも、一緒に稽古できるわけじゃないから、イメージトレーニングをしてます。頭の中で考えながら遣っていく。

石塚

じゃあ役者同士で集ってとかではなくて?

幸助

そうそう。文楽はみんながそろって稽古することがないから。

石塚

え~! そうなんですか! じゃあ、自分で動きをやっていって、全員で合わせるのはぶっつけ本番ですか?

幸助

そう。完全ぶっつけなの。

石塚

うわ~! 大変ですね。

幸助

前にやっていた方がやられている舞台をずっと観たり、絡みもセットの配置とか見ながら感覚で覚えていくんです。

 

人形遣いと太夫との関係

石塚

舞台の右側に、謡っている方とか演奏されている方もいますよね。

幸助

謡っているのが太夫さんで、演奏しているのが三味線。太夫さんは文楽の進行係で、ストーリーテラーの存在。物語を動かしていく人です。

石塚

「むか~し、むかし」、みたいな。

幸助

そういう語り口もあるし、曲に乗ってやることもあるし、その人の言葉になることもあるし。だから太夫さんが語らなかったら人形遣いは何もできない。太夫さんが、「この物語はなんとかであります」ってナレーションした後に物語に入って、三味線がそれに合わせて音を鳴らして。またその芝居の中で太夫さんは「我はなんとかである」というように、その人物にもなるんです。

石塚

へ~! そうなんですか。

幸助

太夫さんってすごく大事で、太夫さんが上手くないと、人形が遣いにくいときもあるんですよ。間合いとか、感情の入れ方とか、太夫さんの技術によって、人形がちゃんと遣えるか遣えないかも変わってくる。

石塚

ただ人形を動かしているわけじゃなくて、太夫さんとのコミュニケーションも大事になってくるんですね。

幸助

そうそう。ほかのお芝居も一緒だと思うんですけど、基本ができていないと進んでいかないから、とにかく基本が大事。全然声が聴こえないやんっていう人もいるからね。そうすると、何をやっているか分からないし、お客さんに全然感動が伝わらないでしょ。太夫さんは声が大きいから、お客さんにもマイクを使わずに喋るからね。

石塚

大きい会場でも?

幸助

2000人とか武道館だとかは絶対に声が届かないけど、通常の劇場だと大体届くから。

 

「芸に終わりはない」

石塚

人形ってすごく繊細じゃないですか。感情を人形に乗せなければいけないし、男性と女性の表現もあるし。

幸助

もちろん基本をベースにしていて、男性だと姿勢を正して見せたり、女性だとしなやかに動かすようにしたり。例えば、おちょこにお酒を注ぐとするでしょ。その動きでいうと、内から外に注ぐのが女性で、外から内に注ぐのが男性。

石塚

へ~! そういうのを遣い分けて表現されてるんですね。

幸助

電車に乗ってる女性の座り方とかをみて参考にしたりもするし、記録ビデオを観たり。ビデオは自分のビデオをよく観るんですよ。でも、自分のビデオってナルシストじゃない限り観ないじゃないですか。

石塚

たしかに。私もあまり自分のやつは観たくないです。

幸助

でもそれを観るのは、自分の癖とかを直したいから。

石塚

女性の役なのに、男性の部分が出てしまってるみたいな。

幸助

そうそう。腕がちょっと下がってるとか、全然基本ができてないときもあって。36年やってきたんですけど、やっと最近“こういう風に動いたら、こういう見え方になってるんだな”っていうことが分かってきました。

石塚

長くやられていても、新たな発見があるんですね。

幸助

そうなんですよ。だから師匠の方々も「芸に終わりはない」と言ってますね。

石塚

あ~! カッコいいですね。

幸助

本当に芸に終わりはないから、いくらやっても追いつかないんですよね。僕らが上手くなっていっても、先輩はさらに上手くなっていく。もうちょっとで追いつけるかなって思っても、先輩はそれ以上になっているかもしれなくて、その差は開いていくか同じような感覚で進むから、一生先輩は追い抜けないんですよ。あと、若い頃ってみんなすごくとがってて、同期に対して「絶対お前に負けへん」とか、「こんな子に負けへんぞ」っていう気持ちが強いんですよ。「俺の方が絶対うまい!」とか、「もっと上手くなってやろう」と思ってる人が多いと思う。

石塚

ライバル視するんですね。

幸助

でも年取ってくるとそういう気持ちが薄くなってくるから(笑)。若いときはとがってる子の方が人一倍練習するから伸びますよね。

第13回後編は12月下旬更新予定です!

 

取材:石塚朱莉(NMB48)
撮影:木村正史
企画:葛原孝幸
企画・構成・文:黒石悦子


 

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