ホーム > NEWS > 劇団四季 ミュージカル『ノートルダムの鐘』 初の大阪四季劇場公演、開幕レポート
7月22日、劇団四季のミュージカル『ノートルダムの鐘』が大阪四季劇場で開幕した。2016年に東京で日本初演し、関西は京都劇場で2017年、2019年、2022年に上演、大阪には今回が初登場だ。原作は『レ・ミゼラブル』でも知られるフランスの世界的文豪、ヴィクトル・ユゴーの1831年発表作『ノートルダム・ド・パリ』。1996年にディズニーが長編アニメーション映画として製作、作曲アラン・メンケン(『アラジン』『美女と野獣』)、作詞スティーヴン・シュワルツ(『ウィキッド』)の楽曲で公開した。この映画に基づき、スコット・シュワルツの演出で2014年に舞台化し、アメリカで初演したのが今作。今や30年を超えた劇団四季とディズニーとのパートナーシップ。これまで7作品が日本上演されているが、『ノートルダムの鐘』は従来のファンタジックな作品群とは違っている。3人の男性が1人の女性を愛する"愛憎の四角関係"の物語を主軸に描く、シリアスでドラマティックな大人のためのミュージカル。その開幕レポを届ける。
この舞台には緞帳がない。ノートルダム大聖堂で有名なバラ窓、白と黒の大理石ふうのタイル、聖人たちの石像が、薄い光の差し込むほの暗い舞台に見える。厳かに鐘が鳴り響いて開幕。人々が聖歌を歌いながら大聖堂へ礼拝に集まって来る。舞台上方には最初から最後まで、キャストと共に物語を進めていく16人のクワイヤ(聖歌隊)が配置。この重厚な合唱が素晴らしい。やがて、大聖堂の会衆のようにいる観客に向かい、ノートルダムの大助祭フロローが自らの過去を語り始める。弟から託された醜い赤ん坊を引き取り、"カジモド(できそこない)"と名付けるフロロー。数年後、15世紀末のパリ。カジモドは大聖堂の鐘楼で生きる鐘突き男となっている。石像と鐘だけを友人に、幽閉された空間で自由を夢見て歌う「陽ざしの中へ」が印象に残る。
そして年に1度の"道化の祭り"の日。辛苦の戦場から大聖堂の警備隊長に赴任して来たハンサムな色男のフィーバスが民衆に魅力を振りまき、フロローも街に現れる。そして、そこには勇気を振り絞り、初めて大聖堂から街へ出たカジモドの姿も。祭りの高揚感の中、3人の目を一瞬でくぎ付けにしたのが美しいジプシーの踊り子・エスメラルダ。カジモドは彼女のすすめで催しに参加するが、その容姿に聴衆が騒然となり、鐘楼へ逃げ帰る。彼を追うエスメラルダ。差別なく優しい彼女の心に触れ、恋するカジモド。鐘楼から街を見下ろし、ふたりで「世界の頂上で」を歌うひと時は、幸福感にあふれた貴重な時間だ。だが、フロローは聖職者でありながらエスメラルダに邪悪な欲望を抱き、徐々に理性を失っていく。フィーバスの思いを知りながら、ジプシー排除を命じるフロロー。しかし彼は命令に背き、愛するエスメラルダを救おうと決意して...。
それぞれの思いが絡んだ濃密な愛の四角関係は、ここから急激に展開、スピードを増す。休憩は約20分。劇場内に明りが点くと、客席の空気が緩む。息をつめて集中し、物語に入り込んでいた人たちが急に現実に戻され、自分を取り戻したかのようだ。いやいや、もっと2幕の方が、そして待ち受けるエンディングが...! 期待を持って目が離せない怒涛の2幕に備えたい。
舞台上のクワイヤと音楽が時代と舞台の空気感を引っ張り、スリリングな展開で描かれる愛と宿命の人間ドラマ。また、映像を使わず、俳優たちが自ら舞台装置を動かして瞬時に場を作り上げる演出表現も、シンプルで温かみがあり効果的。それにしても、カジモドを演じる俳優は大変だ。歪んだ顔、大きなこぶのある背中、曲がった手足。演じる俳優はみな早くから訓練に励み、役と向き合う。しかし、カジモド役は俳優であれば一度は挑戦してみたい役というのを聞いたことがある。それは、なぜか。エンディングまで観れば答えがわかるはず...。
ユゴーの原作に立ち返って作り上げられた舞台は、長い時を超えながらも現代への問題提起を含み、今を生きる私たちの物語として心に響く。人は自らの仲間にない他者とどう向き合い、関わっていくのか。人生や社会の光と闇の中で謳われる、未来への希望。その深いテーマとメッセージを、あなたはどんな思いで受け止め、持ち帰るだろうか。明るいファンタジー満載のディズニー作品とは一線を画す、ミュージカル『ノートルダムの鐘』。演劇ファンには見逃してほしくない秀逸な作品だ。
取材・文/高橋晴代
(2026年7月23日更新)
〈~11月29日(日)公演分〉チケット発売中
〈12月~2027年2月公演分〉 8月2日(日)一般発売
Pコード:597-197(ぴあシート:597-198)
▼7月22日(水)~2027年2月7日(日)
大阪四季劇場(ハービスPLAZA ENT内)
〈バリュー〉
S席-12000円 A席-9500円 B席-7500円 C席-4500円
〈レギュラー〉
S席-13000円 A席-10000円 B席-8000円 C席-5000円
〈ピーク〉
S席-14500円 A席-11000円 B席-9000円 C席-6000円
※千秋楽公演は「四季の会」会員による事前抽選販売のみ。
※公演当日3歳以上は有料(膝上観劇不可)。3歳未満は入場不可。
[問]劇団四季■0570-008-110