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多くのファンに愛された桂ざこば、
弟子たちが語るその知られざる姿

2024年6月12日に急逝した二代目桂ざこば。1963年に三代目桂米朝に入門し、桂朝丸として人気を集め、のちに桂ざこばを襲名。人間味あふれる高座と、まっすぐな言葉で、多くのファンに愛された。三回忌を迎えた今年、8月11日(火・祝)、サンケイホールブリーゼで「桂ざこば三回忌追善 米朝一門会」が開催される。サンケイホールブリーゼは、前身のサンケイホール時代から腕を磨いてきた、米朝一門を象徴するホール。ざこばもこのホールで会を重ね、弟子たちの間には数々の記憶が積み重なっている。

「桂ざこば三回忌追善 米朝一門会」では、桂慶治朗、桂八十八、桂米團治、桂塩鯛、特別ゲストの桂文枝が落語を披露。桂ざこば一門ご挨拶では、8人の弟子たちが高座に並ぶ。公演に先立ち、弟子の桂塩鯛、桂出丸、桂わかば、桂力造、桂米之助、桂惣兵衛、桂あおば、桂りょうばが出席した取材会が行われ、師匠への思いを明かした。

筆頭弟子の塩鯛は、「この頃ね、夢によう出てきます。朝、非常に目覚めが悪いんですよ」と笑わせる。「いろんな思い出を私の体の中に注入していただいた。非常に面白い、大事な方でございました」と、師匠の存在の大きさをにじませた。

三番弟子の出丸が思い出すのは、一門が集まる光景を嬉しそうに眺めるざこばの姿だ。「うちの師匠は人が集まるのが好きで、一門会になると、弟子たちがわーわーしゃべっている姿を遠巻きにずっと眺めながら、嬉しそうな顔をしているんです。うちの一門は仲ええなぁって言ってはったのが、すごく思い出にあります」と振り返る。

四番弟子のわかばにとって、サンケイホールは若き日の失敗とともにある。前座時代、約33年前の出来事を語った。「持ち時間が15分と決められていまして、『大安売り』という12分のネタをやらせていただいたのですが、初めてのサンケイホールということで、プレッシャーがかかりすぎて、マクラも全部飛んでしまい、10分で高座を降りたんです」。予定より早く終わり、ざこばがまだ着替えていなかったため、「やや怒られたことがあります」と苦笑い。

五番弟子の力造は、サンケイホールで独演会の記憶を語った。「うちの師匠が前のサンケイホールでやってはったときに私は入門しまして、師匠のチケットを売るのにだいぶ苦労した思い出がございます。私もあっちこっち、いろいろチケットを持っていった思い出がございます」。

六番弟子の米之助は、昨年の襲名を前にした不思議な出来事を明かした。「去年、力造、惣兵衛と3人で襲名したんですけれども、私もその襲名の直前ぐらいに夢に師匠が出てこられまして。他のおふたりにも聞いたら、同時期に夢に出てきているんですよ」。夢の内容はそれぞれ違ったが、「何か"頑張れよ"と伝えたかったんだなと、そういうふうに思っております」と受け止める。さらに「お墓参りに行ったら、そこからスーッと出なくなってきましたので、もし出てほしくない方はお墓参りをおすすめいたします」と笑わせ、「8月11日の会は、そんな師匠の思い出話をできたらなと思っています」と意気込んだ。

七番弟子の惣兵衛の記憶に残るのは、サンケイホールブリーゼの地下駐車場での出来事だ。ざこばの運転手をしていた際、立体駐車場の隙間に車の鍵を落としてしまったという。「その瞬間に、怒られる!と思いました」。ところが、ざこばは怒らなかった。「皆さんには、師匠はいつも怒っているイメージがあると思いますが、本当はすごく優しい人。そんな話を伝えていけたらなと思います」と、弟子だけが知る優しさを語った。

八番弟子のあおばは、サンケイホールでの会が近づく頃のざこばを率直に振り返った。「この会が近づいてくると、すっごくピリピリしたり、めっちゃ機嫌が悪くなるので、僕は正直、この会、あんまり好きじゃないです(笑)」。その一方で、ざこばがサンケイホールブリーゼでの一門会をどれほど大切にしていたかの証しでもある。「師匠が思い入れの強いステージに僕も立てるのは、嬉しい限りでございます。僕はほんまに2年間、師匠、1回も夢に出てきたことなくて、めっちゃぐっすり寝れてます」と場を和ませた。

そして末弟子のりょうばは、入門後すぐの出来事を話した。サンケイホールブリーゼでの独演会が終わり、師匠を自宅まで送ったりょうば。自宅で日本酒を口にしたざこばが「やっと今日、酒を飲めた」と言ったという。「それまで飲んでいたお酒というのは、お客さんや仲間たちを盛り上げようというものであって、自分のために飲んだお酒というのは、家に帰られてからのあの日本酒の一杯でした」。その一言に、ざこばの気遣いと、人を楽しませることを優先する姿を感じ取ったという。

今回の公演では、ざこばの映像出演も予定されている。映像は、ざこばが元気だった頃の高座が楽しめるもので、改めてざこばの芸に触れられるものだという。弟子たちにとっては、映像であっても師匠の声は特別なものだ。りょうばは「声を聞いたら、おそらくドキッとすると思います。いまだにやっぱり師匠の声を聞いたら、怒られるのかなとか、しくじってはいけないなと思います」と明かした。

落語界に強烈な個性を残したざこば。その高座について尋ねると、「師匠の真似はできない」と塩鯛。「気を入れることよりも、自然体でしゃべりなさいと教えてもらいました。師匠は勢いよくしゃべっているように思われますが、よく聞けば本当に自然に、教えてもらった通り、ものすごく忠実にしゃべってはるんです。自分のセンスとかギャグとかは、そのたびに入れてはりますけど、それはアドリブです。それを何回も使わない。私らはそれができません」。そして、次のようなエピソードを披露した。「一回台本を読んだだけで、すぐやっていました。あーうー言いながら(笑)。それでウケてんねん。そんなことはできない。こんな真似はしたらあかんよと弟子には言うてましたけど、天才です」。

2017年に脳梗塞で倒れたざこば。覚えた落語が真っ白になり、もう一度覚え直したことにも触れたわかば。「出番のときは"15分にしてくれ、不安やから"と。ところが、その15分の落語が誰よりもウケはるんですよ。あのウケ方は尋常じゃなかったです。師匠のすさまじい努力を、私は尊敬しております」。

米之助が挙げたのは、晩年のざこばが演じていた『鉄砲勇助』だ。「僕らも師匠に稽古をつけていただいてやるんですけど、ウケないんですよ。どんなにやっても全然ウケない。師匠は僕らにつけた通り、忠実に淡々とやらはるんです。それがもう爆発的にウケるんですよね。それは手品を見てるようでした。どうやったらこんなにお客様が笑うんだろうと、不思議になるくらいウケてはりました。それは本当にすごかったです」。

ざこばが亡くなって2年。弟子たちは変わらず、その存在の大きさを感じている。「天満天神繁昌亭とか神戸新開地・喜楽館とかの楽屋で、師匠方も後輩も、師匠の話題でずっと盛り上がるんです。クセの強い人でしたが、どれだけ愛されていたのかなと、いまだにつくづく感じる毎日でございます。弟子として嬉しいです」とわかば。様々な逸話も多い。「うちの一門だけは、いつまでも師匠のことをちゃんと伝えていこうと思っています」と塩鯛、改めて思いを寄せた。

取材・文/岩本




(2026年7月 6日更新)


前列左より)桂力造、桂出丸、桂塩鯛、桂わかば
後列左より)桂りょうば、桂惣兵衛、桂米之助、桂あおば

サンケイホールブリーゼ米朝一門落語会シリーズ2026
「桂ざこば三回忌追善 米朝一門会」

チケット発売中 Pコード:542-504
▼8月11日(火・祝)15:30
サンケイホールブリーゼ
全席指定-5200円 
[出演]桂ざこば(映像出演)/桂塩鯛/桂米團治/桂出丸/桂八十八/桂わかば/桂力造/桂米之助/桂惣兵衛/桂あおば/桂慶治朗/桂りょうば
[ゲスト]桂文枝
※未就学児の入場はご遠慮ください。都合により、出演者等が変更となる場合がございます。
[問] ブリーゼチケットセンター■06-6341-8888

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