ホーム > NEWS > 現代演劇の“女方”篠井英介、 愛する名作に19年ぶり4度目の挑戦
テネシー・ウィリムズの最高傑作『欲望という名の電車』。1947年の初演以来、今も世界中で上演され続ける不朽の名作だ。1951年にはヴィヴィアン・リー、マーロン・ブランドらで映画化され、日本では1953年の初演から主人公のブランチ・デュボア役を34年にわたり約600回演じた杉村春子の代表作としても知られる。舞台はアメリカ南部・ニューオリンズ。名家出身だが破産して家を失ったブランチは、妹のステラとポーランド移民の夫・スタンリーが暮らす小さな家に身を寄せる。しかし、共同生活の中でスタンリーとぶつかり、隠していた過去を暴かれて...。さまざまな女優が挑んできたこの作品とブランチ役を、「宝物」と言う"女方"篠井英介が19年ぶりに4度目の挑戦、その熱い思いを語った。
"女形"ではなく"女方"。「現代演劇の舞台で女形を専業にしたくて人生を生きてきた俳優なので"女方"なんです。女優さんに混じって違和感がない女方でなければならない、という心情でやってきました。今、専業でやっているのは僕だけだと思います」と話す。そんな篠井の出発点が、「人生の大きな出会いの役」だった『欲望という名の電車』のブランチ。中学生の時に観た杉村春子の舞台で「ブランチは僕に近い、という親近感がふつふつと湧き、杉村さんの名演が本当に素晴らしくて、子ども心に真似したい、やりたい、ただひたすらやりたいと。理屈じゃなく、感性が呼び起こされました」。
5歳から日本舞踊を習っていた「変わった男の子だった」という篠井は、学校で傷ついた経験から「人間が本来持つ魂の清らかさや優しさが、社会との軋轢の中でどんどん消耗していくブランチにシンパシーを感じたのではないかな」と当時の気持ちを探る。俳優となり、映像などでは個性の強い男の役を多く演じてきた。1992年に初演を試み、券売中だった舞台は「著作権者から男がやると気づき、ジェンダーを取り違えてやることはまかりならん、というお達しが出て」断念、何度も働きかけ9年後の2001年に念願の初演を実現した。
その後2003年に再演、年齢や体力を考え「もう終わりにしよう」と臨んだ2007年には大阪でも上演。ブランチについて「女としての可愛げや切なさ、愛おしさ、それからある種のいやらしさ。女の持つ多面性がすごく描かれているし、セリフも素晴らしい。そんな女を凝縮したような感じがこの役にはある気がします。現代演劇の女方として集大成のような気持ちで、やっている間も幸せでした」と語る。今回、19年ぶりとなる舞台を自ら企画した。「心の中では、やっぱりブランチがやりたいと思い続けていて。2、3年前からわりとハードなお芝居を何本かクリアできたので、もう1回ブランチがやれるかも、やるなら今しかない、と思ったんです」。演出は「気持ちを新たに」と親しい間柄のG2に依頼、「翻訳も」と快諾された。G2の演出とその新訳の脚本で稽古中の今「どうしても杉村さんの声が耳に響き、杉村節と今までやってきたものとの格闘に苦労しています」。
ブランチの相手役スタンリーには、これまで2回スタンリーの同僚・ミッチ役で出演していた田中哲司。「夢の中で生きているようなブランチが、すごくリアルに演じる田中くんによって浮き立つ、そのアンバランスさがおもしろいといいな」。妹のステラには松岡依都美。「丸い体つきの、たおやかな女優さん。さぁ、どっちが女になっていくか(笑)」。と、ふたりとの共演を楽しみにしている篠井。
今回の舞台は近鉄アート館の特性を生かし、舞台を客席が三方から囲む仕様で、装置はほぼない。「客席と舞台が近いですし、芝居が生々しく感じられると思います」。今、杉村春子や篠井のブランチを知らない人たちは多いだろう。「その人たちにとってこの名作がどう映るのか。この芝居の持つ素敵さを今の僕が出せたら、若い方たちにこの芝居の良さがわかってもらえたら、本当に幸せなんです」。ブランチの年齢は30代後半ぐらいだが、杉村春子は80代まで演じ続けた。「3回目の時には『もう、おっさんにしか見えないんじゃないの』って思ってた。今は図々しくも『いいじゃないか、60過ぎても。やってやろうじゃないの』って思っています(笑)。さて今、女方の篠井英介がブランチをやるとどんなことになるのか。見届けに来てくださいね、怖いもの見たさで、お楽しみに(笑)」。
取材・文/高橋晴代
(2026年3月26日更新)
チケット発売中 Pコード:538-626
▼4月4日(土)13:00/18:00
▼4月5日(日)13:00
近鉄アート館
全席指定-8800円
U24チケット(引換券)-3800円(当日座席引換券/要身分証/連席購入不可)
[作]テネシー・ウィリアムズ [翻訳・演出]G2
[出演]篠井英介/田中哲司/松岡依都美/坂本慶介/宍戸美和公/森下創/ぎたろー/平井珠生/松雪大知/吉田能
※未就学児童は入場不可。【U24チケット】公演当日24歳以下の方のみ対象。公演当日、身分証明書提示にて指定席券と引き換え。
[問] 吉住モータース■03-5827-0632
公式サイト
https://yokubou2026.com/