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中村壱太郎×尾上右近で贈る
「僕らの『曽根崎心中』」

映画『国宝』では女方の所作指導に携わり、ART歌舞伎をはじめ新企画のプロデュースや脚本、演出など多彩な才能を発揮している中村壱太郎。歌舞伎俳優と浄瑠璃・清元の二刀流で、映像や外部舞台でも幅広く活躍、2026年のNHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』では足利義昭役で出演する尾上右近。壱太郎と共に「三月花形歌舞伎」に2021年から参加している右近は、互いに切磋琢磨しながら上演を続けてきた仲間だ。その強い信頼関係のもと、今回の「花形歌舞伎 特別公演」では、『国宝』にも登場した名作『曽根崎心中』を新演出で『曽根崎心中物語』と題し上演する。ふたり以外の配役は随時発表される。昼夜役替わりのダブルキャストで挑む壱太郎と右近が、作品と公演への熱い思いを語った。

『曽根崎心中』は、近松門左衛門が元禄16(1703)年に大阪で起きた心中事件をもとに、人形浄瑠璃として書き下ろした作品。天満屋の遊女・お初と、醤油問屋平野屋の手代・徳兵衛が恋を貫いて心中するまでの一途な姿を描き、ブームが起きるほどに大ヒットした。この作品を、昭和28(1953)年に壱太郎の祖父・四世坂田藤十郎(当時は二代目扇雀)がお初、曾祖父・中村鴈治郎が徳兵衛を演じ、復活上演。藤十郎がお初を1401回演じた、成駒家の代表演目だ。これまで「三月花形歌舞伎」では、松プログラム桜プログラムという形で「同じお芝居を2方向から楽しめる形を大事に」上演してきた。今回は、お初と徳兵衛を壱太郎と右近がそれぞれどちらも演じるというダブルキャストで上演する。

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同演目でふたりは2024年に壱太郎のお初、右近の徳兵衛で初共演。壱太郎は「まさか徳兵衛をやる...自分の中では新鮮な思いでいます。今回、祖父がずっと大事にしてきた思いも大切にしつつ、新たにお初を見つめ直し、右近くんと一緒にお初も徳兵衛も作っていきたい。完全にカップルで交代してやるって歌舞伎でしかできないことですから、注目してほしい」と話す。右近は「今回の新演出の中に生きるお初を作り上げていけたら。僕は歌舞伎が好きで、素敵な舞台を観るたびにやりたいと思うので、お初もやりたいなという思いがありました。でも、壱太郎さんのお役という認識だったので、やらせていただける日がくるとは。成駒家さんのお家のお初をやるのは、僕が初めてですから。成立させられたら、やりたいと思ういろいろな家の先輩や後輩の役者さんたちが出てくるかもしれない。その可能性は僕にかかっていると思います」。

敢えて『曽根崎心中物語』と題した新演出とは?「お初と徳兵衛のふたりに焦点を当てたラブストーリーに。純粋な気持ちを持ったふたりに、まぶしさや美しさを感じるような作りで、それをブラッシュアップしてテンポよく、伝わりやすい展開にしたいねと話しています」(右近)。「だからこそ、チラシも特別ビジュアル。歌舞伎ポスター上、最接近してると思いますよ。徳兵衛とお初の深い愛、我々の深い愛、歌舞伎への深い愛。すべてが入っています。令和の時代に僕らが改めてやる『曽根崎心中』、伝えたいことがより明確になるものにしたい」(壱太郎)。役替えした逆パターンのビジュアルチラシも作る予定だ。

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今回も壱太郎の父・鴈治郎が、『曽根崎心中物語』として新たなる形の監修として参加する。シンプルでコンパクトな舞台になりそうで、右近は1日3回公演を提案、土曜日に夜の部が2公演追加された。「先輩たちから、前例になったら困りますよって言われています(笑)」。今、『国宝』をきっかけに歌舞伎の観客が増えている。「ありがたいことですが、だからこその怖さがあります。初めて観た歌舞伎がおもしろくなかったら、その人はもう歌舞伎に来なくなるので。やっぱり歌舞伎っていいね、『曽根崎心中』いいねって思ってもらえるための『曽根崎心中物語』です」。

今回の演目は、この1本で勝負だ。二幕目にはゲストを迎えつつふたりの楽しいトークタイム『花形歌舞伎特別対談』。また、演目以外のお楽しみが多いのも「三月花形歌舞伎」の特徴。来場者特典、グッズ販売、そして「南座の劇場全体をテーマパークのようにしたい」(壱太郎)と、今回はロビーなど劇場をつかった様々な企画を考えているそう。「南座さんと一緒に、どこを切っても楽しめる公演にしたいです」(右近)。「1か月44回公演、駆け抜けていきたいと思います!」と声をそろえた。

取材・文/高橋晴代




(2025年12月25日更新)


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写真左より)尾上右近、中村壱太郎

花形歌舞伎 特別公演 『曽根崎心中物語』

チケット発売中 Pコード:538-377
▼3月3日(火)~25日(水)
※休演=3/10(火)、3/17(火)
※貸切=3/21(土)15:00
南座
一等席-12000円 二等席-7000円 三等席-4000円 
[出演]中村壱太郎/尾上右近/他

〈ぴあ貸切公演〉
▼2026年3月7日(土)11:00
特別席-13000円 ぴあスペシャルシート-12000円(1等席8列目まで)
一等席-12000円 二等席-7000円 三等席-4000円

※スケジュールの詳細は公式サイトをご確認ください。
※日時により取り扱いのない場合あり。4歳以上は有料。本公演チケットを「チケット不正転売禁止法」の対象となる「特定興行入場券」として販売いたします。興行主の同意のない有償譲渡は禁止いたします。
[問]南座■075-561-1155

公式サイト
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kyoto/play/952

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