ホーム > NEWS > 大阪松竹座最後の松竹新喜劇公演に辰巳ゆうとが客演
2026年5月に大阪松竹座ビルが老朽化のため閉館する。大阪松竹座は松竹新喜劇のホームグラウンドだ。松竹新喜劇の活動は他劇場での継続が決定しているが、大阪松竹座での公演はこの九月公演が最後となる。演目は"藤山寛美二十快笑"のひとつで人情喜劇の代表作『愚兄愚弟』と、"松竹新喜劇の裏表十八番"の名作『駕籠や捕物帳』。今回、演歌界のプリンス・辰巳ゆうとがゲストで松竹新喜劇に初出演。2演目に登場する辰巳と、劇団員5名、藤山扇治郎、渋谷天笑、曽我廼家一蝶、曽我廼家いろは、曽我廼家桃太郎が登壇、閉館のニュース以降、初めての取材会が行われた。
まず、扇治郎が「さわやかな辰巳ゆうとさんに加わっていただき、新たにいいスタートが切れる。またお客様に喜んでいただけるような芝居を目指して頑張っていきたい」と口火を切った。初出演の辰巳は「楽しみですし、歴史ある演目に自分も出演させていただけることを誇りに思います。お芝居は何度か出演経験がありますが、喜劇は初めてです。僕も18歳まで大阪で育ってきた一関西人として、歌がうまいと言われるよりも、おもしろいって言われる方がうれしいので頑張ります」とあいさつ。出演のオファーを受けた時は「お客様に笑っていただくのはすごく難しいと思うので、プレッシャーも感じましたが、率直にうれしいという気持ちが一番大きかったです。稽古では、ひとつひとつのセリフを皆様がおもしろくおっしゃられるのを聞いて、今はついていけるか? と、不安です(笑)。お稽古期間中にたくさんのことを吸収して、初日からたくさんのお客様に喜んでいただけるように、頑張っていきたいと思います」と、笑顔で意気込みを話す。
そして、今回の作品と役柄への思いを語る5人。1本目の『愚兄愚弟』は、笑って泣いて心温まる痛快人情喜劇だ。魚屋を営みながら"本家""本店"と張り合う、近所でも評判の仲の悪い兄弟が主人公。長年、藤山寛美が演じてきた兄の惣太郎役に一蝶。「松竹新喜劇で一番好きな演目が『人生双六』で、二番目が『愚兄愚弟』。昔から映像でも、そして生でも何度か舞台袖で見ていた記憶があり、その思いを込めながら一生懸命やらせていただきます。弟役が天笑くんで、ふたりの間で奔走する金魚屋・高橋の役を山本喜楽さん。フレッシュな3人でできるなという思いと、今回、93歳でお元気な髙田次郎兄さんがお出になるのも、非常に楽しみにしております」。弟・惣二郎の天笑は「兄弟げんかが広がって大騒動になって、最後は仲良くなる。単純なお話ですが、家族愛にあふれたとても好きな作品です。先輩方がされてきたこの作品を、松竹座最後の舞台で大きなお役をやらせていただいただくことに喜びを感じています。41歳の今、この作品を経験できることはすごく財産だなと思っております」。兄弟大げんかのきっかけとなるのが妹の縁談。その妹・よし子をいろはが初役で演じる。「天真爛漫な娘です。らしさを出しつつ、お兄ちゃんを説得できるよう頑張ります」。桃太郎は兄・惣太郎の店で働く良太。「一蝶さんの胸をお借りして、のんびりと楽しくワイワイやらせていただければ」。辰巳は縁談のために大阪に帰ってくる常夫役で登場する。
2本目の『駕籠や捕物帳』は、勘違いと偶然が事件を呼ぶ、奇想天外な捕物帳。今回は松竹新喜劇のベテラン・曽我廼家寛太郎の演出で。扇治郎は駕籠かき・千鳥足の直作。「桃太郎さんとコンビの愉快な役です。辰巳さんのお殿様と駕籠かきのちょっと遊びがあるようなお芝居で、勧善懲悪のハッピーエンド。今まで何度も上演していますが、辰巳さんは今までで一番若いお殿様です。辰巳さんと僕らの対比を観ていただけたら非常におもしろいのでは」。一蝶は下っ引きの文太。「辰巳さんと演出の寛太郎兄さんと、ともに楽しく作れたら」。いろはは、辰巳が演じる前田能登守の奥方・妙乃。「妙乃はすごくやきもち焼きで、殿にも怖がられるようなお役ですので、そのドシッと感が出るように工夫するのが、私の一番の課題だと思っています」。
また、偶然にも辰巳は高校の後輩だそう。「勝手に親近感を抱いておりますので、こんな機会をいただけてとてもうれしく思っています」。桃太郎は駕籠かき・後ろ向きの弥太。「2012年に渋谷天外の付き人をして、初めて松竹座にあげていただいたのがこの演目でした。その時の駕籠かきが(曽我廼家)八十吉兄さんと寛太郎兄さんで、その13年後に私が今回扇治郎さんとやらせていただく。思い出深い作品になるなと感じております」。辰巳は能登守と大泥棒の赤鞘主水の2役を演じる。「五木ひろしさんをはじめ、代々いろいろな方が演じられています。演歌の大先輩も演じられた役に挑戦させていただけるのはすごくうれしいです。歌手ならではのお殿様を皆さんにお見せできればと思っています」。また今回は松竹座特別バージョンとして、カーテンコールで時代劇の扮装のまま、ポップス調の新曲「運命の夏」ほか数曲を披露する予定。辰巳ファンにとっては絶対に見逃せない舞台だ。大阪松竹座閉館については「難波に来るたびに何百回も松竹座の前を通って、ワクワクしていました。一大阪人としてショックです。また新たな歴史が刻まれていくと思うので、1日1日を大事にしながら過ごしていかないと、と感じています」と話す。
ホームグラウンドが無くなると聞いたメンバーたちは「ショックでした」「寂しい」と口々に。松竹座の魅力は「道頓堀の劇場」、「外観」そして、「赤ちょうちんと花道と...舞台上から見る客席の景色」、「泣いて、走って、汗かいて、いろいろな経験をさせていただいたいい舞台」と桃太郎。さらにいろはは、「私が松竹新喜劇に入るきっかけになったワークショップが『駕籠や捕物帳』、その時観に行かせてもらったのが松竹座。ここからスタートして、今回また松竹座で同じ作品のステップアップした役でいったん終止符を打たしてもらえる。ありがたいです。松竹新喜劇は残してもらえるので、それを信じて自分自身は前進するのみ、芸を磨いて頑張りたいと思います」と思いを語る。松竹新喜劇の舞台に立ってきた人たち、その舞台を観に道頓堀・松竹座に通った人たち。それぞれの思いを乗せて贈る、大阪松竹座で最後となる松竹新喜劇公演。これまでの思い出とこれからの応援を込めて客席に座りたい。
取材・文/高橋晴代
(2025年9月19日更新)
チケット発売中 Pコード:536-277
▼9月20日(土)~28日(日)11:00/15:30
大阪松竹座
一等席-11000円 二等席-5000円 三等席-3000円
[出演]藤山扇治郎/渋谷天笑/曽我廼家一蝶/曽我廼家いろは/曽我廼家桃太郎/曽我廼家八十吉/曽我廼家玉太呂/川奈美弥生/渋谷天外/井上惠美子/松竹新喜劇劇団員
[ゲスト]辰巳ゆうと/曽我廼家文童
※9/24(水)休演。※9/26(金)15:30公演は貸切。
※4歳以上はチケットが必要。日時・席種により取り扱いのない場合あり。公演ホームページをご確認の上、ご購入ください。本公演チケットを「チケット不正転売禁止法」の対象となる「特定興行入場券」として販売いたします。興行主の同意のない有償譲渡は禁止いたします。
[問]大阪松竹座■06-6214-2211