ホーム > NEWS > 音楽劇『エノケン』で7年ぶり2回目の 舞台に挑む本田響矢 「エノケンがどれだけ人の気持ちを 救ってきたのか考える」
戦前・戦中・戦後と、昭和の日本をとびきりの笑いで照らしつづけ、"エノケン"の愛称で親しまれた喜劇王・榎本健一。東京・浅草の小さなレビュー劇団「カジノ・フォーリー」で一躍注目されると、わずか数年ののちに座員150名、オーケストラ25名を擁する日本一大きな劇団「ピエル・ブリヤント(エノケン一座)」の座長に。当時流行していたジャズと、スピーディーでナンセンスなギャグにあふれたその舞台は、エノケンの天賦の感性と体技、音楽性なくしては実現できない、まったく新しい喜劇だった。
数々の喜劇映画を通じて全国区の人気者となったエノケン。晩年は病魔におそわれるなど不自由な身体をおして舞台に立ち、映画やテレビにも出演。また後進の育成にも励み、喜劇に対する情熱は絶えることがなかった。人生のすべてを喜劇に捧げ、「日本の喜劇王」と謳われたエノケンと、彼を愛し支えつづけた家族や仲間、ライバルたちの姿を、又吉直樹の脚本とシライケイタの演出で音楽劇として描いていく。
エノケンこと榎本健一を市村正親、花島喜世子・榎本よしゑの二役を松雪泰子、榎本鍈一・田島太一の二役を本田響矢、菊田一夫役を小松利昌、古川緑波役を斉藤淳、柳田貞一役を三上市朗、菊谷榮役を豊原功補が務める豪華顔ぶれ。そのうち、本作が7年ぶりの舞台となる本田響矢が大阪での取材会に登壇し、意気込みなどを語った。
オーディションで出演を勝ち取った本田は、「父の榎本健一役の市村正親さん、母の榎本よしゑ役の松雪泰子さんをはじめ、大きな存在の大先輩方とご一緒させていただけるという、こんなにもありがたい機会はないと思っていますので、全力で挑みたいと思っております」と、一言一言、かみしめるように喜びと意気込みを語る。
役柄の印象をこう話す。「榎本鍈一はまっすぐで、素直で、無垢で、きっと父のエノケンさんのことをとても尊敬している。父が大好きで、母も大好きで、心の底から家族のことを大切に思っているのだろうなと、又吉さんが書かれた鍈一から感じました。これから稽古に入るのがとても楽しみです。エノケン一座の田島太一もまっすぐなんです。そのまっすぐさは鍈一とはまた違っていて、熱があって芯のある男だなという印象があります。エノケンさんに対して鍈一と太一では見る目がまったく違うだろうなと思います。芝居をするなかでその違いをどう表現しようか、今からとても楽しみです」。
市村の第一印象を尋ねた。「最初にお会いさせていただいたのがポスターやチラシのビジュアル撮影の時だったのですが、その時は本当にオーラを感じました。2度目が製作発表の時だったのですが息子のように接してくださって、いろいろお話をさせていただきました。大阪や佐賀、愛知、川越など各地におすすめのご飯屋さんがあるから、よかったら食べに行こうよと言ってくださり楽しみが増えました。これからの稽古に緊張していたのですがたくさんお話しできたことで不安よりワクワクの方が今は多くすごくありがたいなと思いました」。
松雪泰子については、次のように話した。「本読みの時、又吉さんとシライさんに役のことなどを聞きに行ったのですが、帰る前に松雪さんから"どう? 大丈夫?"と声をかけてくださったので、"こういうことを聞いて、こういう話をしました"と言ったら、"そっかそっか"と聞いてくださって。その感じが本当に母のようで、すごく優しくて、もうまさに、"母...!!"と思いました(笑)」。
そんなふたりからすべてを吸収したいと目を輝かせる。「どう役と向き合ってお芝居をされているのかとか、稽古場での時間の過ごし方、演出のシライさんや他のキャストの皆さまとの関わり方、食生活だったり体調管理、市村さんはミュージカルでも素敵な歌をたくさん歌われているので、喉のケアなど細かいところも一から学ばせていただきたいと思っています」。
又吉の戯曲について、本田はこう続ける。「本読みの段階でみんな笑っていて、これは面白い作品になると思いましたし、今から自分もそういったシーンに関わっていくと思うとすごくワクワクしました。シライさんがどう演出をされるのか、共演者の皆さんと楽しみだねと話しました。ひとりで読んでいても面白かったのですが、本読みで実際に皆さんの声が乗って、エノケンとしての市村さんの声を聞いてよりくっきり見えてきました。又吉さんならではの笑いは、いい意味で癖があって、個性があって、すごく魅力的なシーンがたくさんあります」。
戦前から戦後にかけて、喜劇というものが庶民にとってどういう存在だったのか。次のように思いを馳せる。「この作品は、人々が生活の背後に常に戦争を感じながら生きていた時代の物語ですが、そんな生活の上にある喜劇というものは、今、幸せに暮らせている自分たちよりも存在がより大きかったのではないかなと思います。特に『喜劇王』と呼ばれるほどのエノケンという人物は、当時、どれだけの人の気持ちを救ってきたのか。この作品に参加させていただくことが決まってから常に考えています」。
音楽劇については、こう語る。「僕自身、音楽や歌はすごく好きですし、舞台などの作品を観る上でも、音楽とお芝居はすごく近い存在で、お互いが支え合っている大きな存在だと思っています。僕自身、音楽劇は初めてなのでどうなるのか未知ではありますが、みんなで歌うシーンや、エノケンさんおひとりで歌われるシーンがあって、いろんな場面で歌や音楽が絡んでくるので、そこは楽しみですし、観に来てくださる皆さまも楽しみにしていただければ嬉しいです」。
今年4月から6月に放送された、西香はちによる同名コミックを原作にしたドラマ『波うららかに、めおと日和』(フジテレビ)で、芳根京子が演じる主人公・なつ美の夫で帝国海軍の中尉・江端瀧昌役を演じ、大きな反響を呼んだ。昭和11年が舞台の作品でもあり、エノケンが浅草で活躍した時期と重なる。「いつ何が起きてもおかしくない状況下で日々生きている人々がたくさんいて、そんな時間を過ごしていた方々はどういう気持ちだったのかなと考えます。今は携帯電話ですぐに連絡が取れたり、声が聞けたりしますが、当時の人々は今とは全然違う気持ち、感性で生きていたんだろうなと思います。今は携帯電話など便利なものがありますが、それが逆に人と人との距離感や考え方、感じ方をこじらせている瞬間もきっとあるだろうなと思っていて。そういったものがないあの時代は、人と人の関わりやつながりをより強く、熱く感じていたのではないかなと思います」。
最後に、こう展望を語った。「音楽劇『エノケン』では、たくさんのことを勉強して、学んで、力にすることができるのではないかなと思っています。大先輩方とご一緒させていただけるという、こんなにもありがたいことは本当にないと思います。自分自身は変に固くならずに、フラットに、柔軟に、常に動けるよう、スポンジみたいな状態で稽古に臨んでいきたいと思っています。これまでも自分が携わらせていただいた作品に救われたこともありますし、そういった作品は心の中に残っています。皆さんの心の中に残るような作品作りができる役者になりたいと思います」。
音楽劇『エノケン』は、11月1日(土)~9日(日)まで、大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA WWホールにて上演。追加公演の抽選先行予約を9月10日(水)23:59まで受付中。
取材・文/岩本
(2025年9月 3日更新)
▼10月7日(火)~26日(日)
シアタークリエ
チケット発売中 Pコード:534-016
▼11月1日(土)~9日(日)
(月)(木)(金)(土)13:00 (水)13:00/18:00★ (日)12:00/17:00
※11/8(土)12:00/17:00。11/9(日)13:00。
※11/4(火)休演。
COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
全席指定-12800円
[作]又吉直樹 [演出]シライケイタ
[出演]市村正親/松雪泰子/本田響矢/小松利昌/斉藤淳/三上市朗/豊原功補
〈アフタートークショー〉
11/5(水)13:00 登壇者:(作)又吉直樹・市村正親
11/8(土)17:00 登壇者:松雪泰子・本田響矢
※登壇者は、予告なく変更となる場合がございます。予めご了承ください。
※未就学児童は入場不可。
[問]キョードーインフォメーション■0570-200-888
★〈追加公演〉
10月11日(土)一般発売
▼11月5日(水)18:00
▼11月15日(土)・16日(日)
鳥栖市民文化会館 大ホール
▼11月22日(土)~24日(月・祝)
名古屋文理大学文化フォーラム(稲沢市民会館)大ホール