ホーム > NEWS > 名優を得て横山拓也が描く、心に沁みる大人の会話劇
演劇ユニットiakuの代表で大阪出身の劇作家・演出家、横山拓也が初めてシス・カンパニーに作品を書き下ろす『やなぎにツバメは』。かつて関西の小劇場で活動していた劇団売込隊ビームを経て2012年にiakuを立ち上げ、数々の演劇賞を受賞しながら今、活躍中だ。繊細に積み重ねるセリフの中に、登場人物の心理や感情を巧みに盛り込んで描き、観る人の胸に刺さる会話劇を作り上げる。今回は、"カラオケスナックつばめ"で出会って20年、シニア世代となった友人たちとその子どもらでつづる6人の芝居。キャストには大竹しのぶ、木野花、林遣都、松岡茉優、浅野和之、段田安則という、誰もが納得する芝居巧者がそろった。演出にはこれまで何度かタッグを組み「すごく相性がいい」と感じている寺十吾(じつなしさとる)。稽古を控えた横山が上演への思いを語った。
今回、シス・カンパニーの依頼を受け、出演者を提示されてから作品に取り掛かった横山。「お話をいただき、シスさんで書けるなんてと感動、非常にうれしかったです。出演者は一般的な感覚で、すごい名前が並んだという驚きでした。こんなことが自分の演劇人生にあるんだ、と」。
テーマは自ら「グループリビング(高齢者たちが共同生活する居住の形)や、シニア世代でも恋愛に翻弄されている人間臭い部分を書きたい」と伝え、「人間模様を描くという、いつも自分が書いているスタンスとそう大きく変えずにやりたいと思って取り組みました。正義な部分やズル賢い部分など役の性質で出方はそれぞれですが、人間はみんな多面的で、いくつになっても人間臭さが絶対にあると意識して書きました」。
『ワタシタチはモノガタリ』に出演した松岡茉優以外、名優たちとの芝居作りは初顔合わせ。「こんな機会はないので、頭の中で出演者のみなさんの声でずっとセリフをしゃべってもらいながら、何十回と脳内再生して。すごくいいリズムで書けたと思います」。男女6人が日常の中で抱える大人の事情。それぞれの悩みや厄介ごとへの思いが、さりげない会話の中に浮かび、しみじみと胸に沁みる物語だ。「いくつになっても、無様でみっともなく、情けない大人たちの、滑稽でチャーミングな姿を描いています」。観客が自分事の感覚で入り込める世界観がそこにある。「僕が台本を書いている時に、頭の中でわぁ~っとしゃべってくれていた空想の声が、現実になることが今からとても楽しみです。チラシのように和気あいあいと、それぞれが生き生きとセリフをしゃべってくれたら、それだけでもう、永遠に観続けたくなるような作品になると思います」。そして演出は気心の知れた寺十。「僕のことをよくわかって戯曲に寄り添った演出をしてくださる方なので、とても安心して取り組めます。この昭和な感じとふたりの相性の良さが、大きなプロジェクトの中でどう表現されるか、すごく楽しみです」。
今作のタイトル『やなぎにツバメは』は、昭和歌謡の往年の名曲。横山が約20年くらい前にカバー曲で知り、いつか舞台のモチーフにしたいと温めていた楽曲だ。「作品1本1本を大事に、時間をかけて名作を作る気持ちで、これからも地道に書き続けていきたい」と話す横山。かつて関西で多くの小劇場公演をしてきたが、今回の大阪公演で初めてドラマシティへ。「大学生の時、劇団☆新感線などを観に行っていた劇場。感慨深いものがあります。小劇場時代にたどり着けなかったドラマシティに、今ようやく、という感じはありますね」。関西の若い演劇人たちへ。「長く続けていたら、自分が目指していたところにもたどり着ける可能性がある。50代を目前にした自分が今こうやって頑張れていることが、少しでも関西の若手たちの励みになったらうれしいと思っています」。
取材・文/高橋晴代
(2025年1月24日更新)
▼3月7日(金)~3月30日(日)
紀伊國屋ホール
1月25日(土)一般発売 Pコード:530-755
▼4月3日(木)18:00
▼4月4日(金)14:00
▼4月5日(土)13:00/17:00
▼4月6日(日)13:00
梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
S席-8000円 A席-5000円
[作]横山拓也 [演出]寺十吾
[出演]大竹しのぶ 木野花 林遣都
松岡茉優 浅野和之 段田安則
※小学生未満のお子様はご入場いただけません。車椅子席でご来場のお客様は、S席チケットをお買い求めの上、ご来場日の前日までに、ご購入いただいたチケットの座席番号ならびにお客様のお名前とご連絡先を、キョードーインフォメーションへご連絡ください。ご来場前に公式HPにて公演開催状況を含む最新情報をご確認ください。
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