ホーム > NEWS > 万作・萬斎・裕基の三代が出演「万作萬斎新春狂言」 子どもも楽しめる初心者向けのプログラムを上演
人間国宝・野村万作と萬斎による毎年恒例の新春狂言シリーズが今年も登場。1998年から連続28回目となる今回は、万作・萬斎・裕基の三代でそれぞれが主演する『魚説法(うおぜっぽう)』『附子(ぶす)』『茸(くさびら)』の3演目を上演する。毎年干支にちなんだ作品が選ばれるが、2025年の干支は巳。狂言に蛇が登場する作品が少なく、今年は子供も楽しめる初心者向けのプログラムに。萬斎と裕基が見どころを語った。
幕開けは恒例の野村家で正月元旦に一門で行われる清麗とした『謡初(うたいぞめ)』に続き、萬斎が解説する人気の軽快なトークから。そして最初は万作の『魚説法』。まだお経が読めない新発意(しんぽち・修行中の坊主)が、お布施ほしさに法事を引き受けて、海辺育ちで知った魚の名前を散りばめお経のように唱え始めるが...。「全体にすごくしゃれた曲(作品)で、説法がことごとくお魚の名前にもじってあるのがひとつの聴きどころ」と萬斎。これを93歳の万作が演じる。「最後にトビウオのマネをして、片足でジャンプしながら入っていきます」。
次に萬斎の『附子』。桶に入った恐ろしい猛毒の番を命じられたふたりの召使が、主人が出かけると怖いもの見たさで我慢できず...。「小学生の教科書にも載っているおなじみの物語で、演劇的にも良くできた曲だと思います。毒を見てみたい好奇心のかたまりの太郎冠者と恐いからやめようという次郎冠者。正体を突き止めると砂糖で...どんな落ちかは見てのお楽しみに」。
休憩をはさんでの『茸』は、家の中に生えてくるキノコの駆除を頼まれた山伏が祈祷を始めるが、キノコは増え続けるという茸VS山伏の物語。山伏を演じる裕基は「自然の驚異を感じる、ある意味ちょっと怖いところもありながら、多種多様な茸をいろいろな傘や面を使ってコミカルに表現するのも見どころだと思います」。「すごく楽しく、子供たちはだいたい茸のマネをして帰りますね(笑)」と萬斎。「今やすべてが自然体」の万作、「20代のエネルギーで誠心誠意、力いっぱい演じる若さの良さがある」裕基、そして萬斎は今まさに「体力と技術と経験値がうまくはまっている」年代にあり「三代がそろうおもしろさを感じていただけると思います」。
裕基は「能狂言は、若い人たちにはなんとなく敷居が高いものと捉えられているかなと感じます」と話す同世代の狂言初心者に向け「どの演目もわかりやすいセリフが多く、観ているだけでおもしろいと思えるラインアップになっていますので、ご期待いただきたいと思います」。
取材・文/高橋晴代
(2025年1月17日更新)