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桂春蝶、『中村仲蔵』で
「舞台人としての矜持を見せたい」

「落語」×「文学」×「上方舞」を"和のクラシック"で紡ぐ『RENBO Vol.2 忠臣蔵綺譚 ~桂春蝶「中村仲蔵」相勤め申し候~』が12月20日(金)・21日(土)に大阪・ABCホールで開かれる。第2弾は「忠臣蔵」をテーマに劇作家・演出家のわかぎゑふが演出を担い、山村若静紀が上方舞「廓景色」を、桂紗綾ABCアナウンサーが創作朗読「仮名手本忠臣蔵」を、桂春蝶が落語「中村仲蔵」を上演。これら3演目の音楽を地歌三味線演奏家の菊央雄司が和の楽器で奏でていく。

「忠臣蔵」は、誰もが知る仇討ちの物語と思いきや、「若い世代は知らない人も多い」とわかぎ。「今の若い子たちが『忠臣蔵』ってこんな噺やったんやと思うと共に、『忠臣蔵』から広がる世界観は昔からこんなにあったんだということを知ってもらいたいと思って演出させていただきます」と意気込む。

山村若静紀は、稀曲の「廓景色」を披露する。「この曲は大石内蔵助が作詞したと伝わっています。昔は舞われていたようですが、最近はあまり出ることがないということで、今回はスペシャル版としてご覧いただけたらと思っております。いい曲だな、いい振りだな、また観たいなと思われるように舞いたいと思います」ときりっとした表情を浮かべた。

上方舞と落語を橋渡しする重要なポジションを占めるのが桂沙綾アナウンサーの創作朗読「仮名手本忠臣蔵」だ。「朗読では仲蔵を支えた妻おきしが主人公になります。おきしは本当にかっこいい人なんですよ。たくさんいる落語の登場人物の中でも一番好きなキャラクターです。おきしは、仲蔵のことをとても信頼していて、仲蔵の芸を愛している女性です。仲蔵が役者として出世していく上で本当に欠かせない重要人物だったことを朗読でお伝えできればと思っています」と桂、その話ぶりからおきしへの思いがひとしおであることが伝わってくる。

中村仲蔵は実在した江戸の歌舞伎役者だが、春蝶が口演する「中村仲蔵」は「上方から江戸に修行に行った」という設定だ。よって、おきしも上方の人間として描かれているが、創作朗読「仮名手本忠臣蔵」でのおきしは江戸の女性として描かれる。「江戸っ子バージョンと上方バージョンの両方をお楽しみいただけるかなと思っています」とわかぎ。同じ題材でも異なる表現で、また別の切り口でも楽しめるのが、『RENBO』の魅力の一つだ。

落語「中村仲蔵」でトリを務める春蝶。「落語にはマクラという噺に入る前の助走がありますが、『RENBO』ではその助走の部分を沙綾さんが朗読で演じてくださる。本当に上質なマクラで、私がぽんっとネタに入れる環境を作ってくださります」

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中村仲蔵は平場から稲荷町という名代役者になった人物。春蝶は次のように心を寄せる。「地獄の苦しみを感じながら階級社会を自力ではい上がってきた男が、『仮名手本忠臣蔵』では端役、お客さんが弁当を食べている前で演じなければならない‟弁当幕"と呼ばれた五段目の斧定九郎の役をつけられました。この時、仲蔵が精神的にも、技術的にも、この逆境にどう立ち向かっていくのか。大ベテランから駆け出しまで、舞台人は日々、中村仲蔵のようにどこかで悔しい思いをしていると思うんですよね。みんなが悔しい思いを抱えているから『中村仲蔵』を演じるときには魂が乗ってくる。どこかで僕もこの逆境に立ち向かいたいと思う。そのパーソナルな部分が乗っかってくるから、この物語を今の時代まで繋げてきているのではないかと思います」。春蝶は続けて「舞台人の矜持を見せたい」と声に力を込めた。

そして、『RENBO』の世界観を醸成するにあたって欠かせない存在が菊央雄二。今年8月には令和五年度文化庁芸術選奨新人賞を受賞した実力派だ。菊央は次のように語った。「私も父親はサラリーマンでして、(芸の世界に)ポンと出た身なので、よくわかるところがありますので、心して演奏に関わりたいと思っております。こういった機会で落語や朗読と音を重ねることが、とても楽しみです」。

また、春蝶の「中村仲蔵」では本職の附打ち師が附け打ちをする点も見どころだ。「僕自身、歌舞伎関係の噺をするなんて夢にも思っておらず、附け打ち師にすごく憧れていました。今回、合わせることができるのですごく嬉しいです。一生に一回、あるかないかという体験だと思いますね」と笑顔を見せた。

ほかに、オープニングトーク、アフタートークも予定している。オープニングトークでは「忠臣蔵」の世界に観客を誘うため、わかぎと春蝶が「忠臣蔵」について語る。「中村仲蔵がどれぐらいのレベルの人で、どれぐらいの世界の中で下剋上をやってのけたか、現代だとこんな感じと、リアルなイメージでお伝えできるようにしようと思います」とわかぎ。

和の文化や芸能、表現が楽しめる『RENBO』だが、わかぎはさらなる意図も込めていると話した。「「忠臣蔵」を通じて、自分の人生で一回でもいいから、自分が貫かなあかん瞬間が来たらどうする?ということを提示したい。腹を括ったときに何と言うか。そういうことを問えるような会にしたいと思います」。

取材・文:岩本




(2024年12月13日更新)


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RENBO Vol.2 忠臣蔵綺譚
~桂春蝶「中村仲蔵」相勤め申し候~

チケット発売中 Pコード:529-552
▼12月20日(金)・21日(土)
(金)18:30 (土)13:00
ABCホール
一般席-5500円
RENBOプレミアシート-6500円(特典付き)
[演出]わかぎゑふ
[出演]桂春蝶(落語)/山村若静紀(上方舞)/菊央雄司(演奏)/桂紗綾(朗読)
※未就学児童は入場不可。出演者や演目は、やむを得ない事情により一部変更になる場合がございます。車椅子席をご希望の方はチケットご購入前に問合せ先まで。「RENBOプレミアシート」ご購入者様全員にオリジナル手ぬぐい、サイン入り写真セット、エビシーグッズを会場内にてお渡しします。ABCホールホームページにある座席図とは列表記が異なります。駐車場はございません。公共交通機関をご利用ください。
[問]ABCチケットインフォメーション■06-6453-6000

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