ホーム > NEWS > 三代目市川團十郎白猿襲名披露興行、 いよいよ最終の地・大阪へ
2022年11月に東京・歌舞伎座より始まった「十三代目市川團十郎白猿襲名披露興行」。今年10月に行われる大阪松竹座での市川海老蔵改め十三代目市川團十郎白猿襲名披露 八代目市川新之助初舞台「十月大歌舞伎」で大千穐楽を迎える。
團十郎は昼の部に通し狂言『雷神不動北山櫻(なるかみふどうきたやまざくら)』、夜の部に新之助とともに『口上』『連獅子(れんじし)』に出演。これらの演目について團十郎は次のような思いを明かす。
「二代目市川團十郎が今から約280年前に大坂で『雷神不動北山櫻』を初めて演じました。僕の襲名披露興行は2020年から始まる予定でしたが、コロナ禍で2年間遅れたことによって、大阪での興行がそれから280年という節目となります。280年前の初演では大変な好評を賜り、6ヵ月間のロングランとなりました。そのように二代目市川團十郎が初代市川團十郎から受け継いだものをさらに大きくしたという実績を残したのが、この大阪の地でした。今年、13人目の團十郎が280年目に大阪に来るのであれば、『雷神不動北山櫻』をやるしかないだろうと。また今回、私は新之助との初めての『連獅子』を大阪で勤めます。もしかしたら(二代目市川團十郎の『雷神不動北山櫻』と)同じように好評を賜り、幕を閉じることができるのではないだろうかという願いを込めました」。
『雷神不動北山櫻』の「鳴神」「不動」「毛抜」は、市川團十郎家の家の芸「歌舞伎十八番」のひとつに数えられている。團十郎は2008年、海老蔵の時代に東京・新橋演舞場で初演した。その際、早雲王子と安倍清行の2役を加えるなど、新たな構成も取り入れた。「伝統文化ですから、演じていないものをやってはいけないんですね。当時、「鳴神」も「不動」もやらせていただいていましたが、「毛抜」はハードルの高い演目とされていたので、私はなかなか勤めることができませんでした。でも、(2008年に)『雷神不動北山櫻』をやる2、3年前、大阪松竹座の1月公演で「毛抜」をさせていただきました。『雷神不動北山櫻』のベースとなる鳴神上人、「毛抜」の粂寺弾正、「不動」の不動明王という三役を踏んだということで、『雷神不動北山櫻』ができるのではないかと松竹の方に話して、新橋演舞場でやりたいと。その際に上演記録を見たら(上演時間が)とても長かったんです。そこで、ちゃんと話し合いをしながら、内容を削ったり足したりして、早雲王子と安倍清行という役を作り上げました。結構大変でしたが、よくやったと思います」。
この度の大阪松竹座では、大きく手を加える部分はないと話すが、雨乞いに関する部分は丁寧に描きたいという。「おそらく今までは割愛していたところですが、今の人は「雨乞い」といっても分からないと思いますので、鳴神上人の怒りにより龍神を封じ込めたため雨が降らない。それをどうすればいいのかと朝廷が悩んでいるところに雲の絶間姫が現れるということを足そうかなと考えています」。本作には中村梅玉や中村雀右衛門、中村鴈治郎、中村扇雀、松本幸四郎、市川右團次ら錚々たる顔ぶれが登場する。その豪華な配役も併せて楽しめる。
夜の部の『連獅子』は、新之助から「やりたい」と意思表示したという。その意志も汲み、次のような思いを込めた。「彼の成長も踏まえて『連獅子』を選びました。『連獅子』は、親獅子が仔獅子を崖から突き落として、そこから戻ってきた仔獅子に喜び、成長を迎え入れるという舞踊劇に仕上がっています。そういう意味では、今回はちょっと稽古でも(新之助を)放っておこうかなと。私自身も"突き落とす"というような事を彼に課そうかなと思っています。余計なことは言わず、怒りもせず、吠えもせず、1回突き落としたとき、彼がどういうふうに受け止めて、這い上がってくるのか。その葛藤、苦しみを大阪のお客様の前で表現することで、彼の成長がわかりやすく伝わるのではないかなと思っています。私も3回ぐらい、本当にやりたいのかと聞きましたが、どうしてもやりたいと。ですから、彼も十分、突き落とされる覚悟ができているのではないでしょうか(笑)」。
取材・文/岩本
(2024年9月19日更新)
9月20日(金)一般発売 Pコード:527-339
▼10月10日(木)~26日(土) ※15日(火)・21日(月)休演。
〈昼の部〉11:00 「雷神不動北山櫻」
[出演]市川團十郎白猿/中村梅玉/中村雀右衛門/中村鴈治郎/中村扇雀/松本幸四郎/市川右團次/市川男女蔵/中村児太郎/他
〈夜の部〉16:00 「義経千本桜/一條大蔵譚/口上/連獅子」
[出演]市川團十郎白猿/市川新之助/中村雀右衛門/中村鴈治郎/片岡孝太郎/松本幸四郎/市川右團次/他
大阪松竹座
一等席-22000円 二等席-11000円 三等席-6000円
※日時・席種により取り扱いのない場合あり。4歳以上はチケットが必要。本公演チケットを「チケット不正転売禁止法」の対象となる「特定興行入場券」として販売いたします。興行主の同意のない有償譲渡は禁止いたします。
[問]大阪松竹座■06-6214-2211