平間壮一と松下優也が出演
『イン・ザ・ハイツ』はバイブス＆パワー

2008年にブロードウェイで開幕し、日本でも上演されたミュージカル『イン・ザ・ハイツ』が再演される。同作はヒップホップやサルサなどのラテン音楽で綴った楽曲でトニー賞やグラミー賞を受賞し、今やブロードウェイを代表する劇作家・俳優のリン＝マニュエル・ミランダのデビュー作。出演する平間壮一と松下優也が取材会で語った。

舞台はマンハッタン北西部のワシントンハイツ。ドミニカ系移民のウスナビ(Micro[Def Tech]、平間のWキャスト)は、両親の遺した店を守りながら、故郷のドミニカで暮らすことを夢見ている。一方、友人のベニー(松下)は、タクシー会社で働きながら、経営者夫妻の娘ニーナに思いを寄せている。

「何の変哲もない青年だが、夢を見つけていく」とウスナビについて語る平間は、2021年にも同役を演じた。「ミランダさんの初の作品だけあって、人を突き動かしたり、感動させたりするパワーが作品には詰まっている。彼の代表作『ハミルトン』は、こうしたらもっと観ている人を喜ばせられるとか、進化したうえで作ったものだと思うのですが、『イン・ザ・ハイツ』はありのまま。ミランダさんはミュージカルに出たかったけど、オーディションに落ち続け、出られないならと自分で『イン・ザ・ハイツ』を作ったと聞いたんです。その思いが自然と乗っかっているのが魅力だと思います」と熱っぽく続ける。

2014年に日本版の初演でベニーを演じ、今回10年ぶりに同役に復帰する松下は、「ベニーは夢や野望を強く持っていて、明るくていいヤツ。ほかのキャラクターも地に足がついていて個性豊か」だと言う。さらに「この作品はショーアップされたものよりも、もう少し日常に近くて、お客さんも巻き込めるので客席とステージがつながっている感覚がします。音楽フェスのようなライブ感が出ると思います」と力を込めた。

日常のおしゃべりから人種問題、貧困、街を歩くかき氷売りの声までが一緒くたになり、ラップやサルサに乗って語られる。その文化をどう取り入れたのかと問うと、松下は「バイブス」だと言い切る。「やっぱり"中"なんですよ。大きく動く、踊る、とかじゃなくてライフスタイル。ラップもライフスタイルだから。日本人にも日本人のバイブス、グルーブがあると思っていて、それはラテンとは違うのかもしれないけど、とにかく内側から湧き上がるものなんです」。平間も「ラテンとかダンスを勉強するというよりも、そのルーツをたどってきた人やラテン系の血が入っている人がキャストに選ばれているから苦労はなかった。現場で見て学びましたし、持っているものをぶつけていくだけ。それが作品の良さにつながっていると思います」と頷く。ふたりの内なるバイブス＆パワーを、ぜひ生の舞台で体感してほしい。

取材・文／米満ゆう子

（2024年9月 7日更新）