ホーム > NEWS > 「朗読の概念を覆すようなスペシャルな世界を」 佐野史郎の朗読と山本恭司のギターで紡ぐ 小泉八雲の不思議世界
『耳なし芳一』などで有名な文豪・小泉八雲の作品を俳優・佐野史郎が脚本化して朗読、山本恭司のギター演奏とコラボするパフォーマンス『小泉八雲 朗読のしらべ』。2007年以降、松江や東京、京都、神戸などで60余公演を上演、八雲ゆかりの地を巡る海外公演も開催し継続中だ。昨年は大阪の山本能楽堂に初登場、今回は『龍蛇伝説』を上演する。今年は八雲の代表作『怪談』の出版から120年の節目であり、来秋開始のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』も主人公のモデルは八雲の妻・セツに決定。佐野と山本は八雲と同郷の島根県松江市出身で高校の同級生、ふたりがライフワークとする朗読ライブを語った。
朗読作品の制作スタイルは2014年の海外ツアー以降「シナリオに起こすのは僕ですが、作品選考やテーマ、構成などはみんなでアイデアを出し合って作っています。本番はライブなので即興で恭司とふたりでやり取りしながら」と佐野。音楽担当の山本は「想像力を膨らませられるト書きで、楽しく作っています。自由度が高く、お互いに意外なところで反応し刺激し合って、ふたりでジャムセッションを楽しむようにやっている感じです」。
高校時代から音楽でセッションしてきたふたりは息もピッタリ。佐野は「擬音や音の描写がすごく多い小泉八雲の作品自体が、僕は非常に音楽的だと思う」と語り、「大自然に対する畏怖の念のようなものを感じさせる大きなテーマの作品が多い。怪談もファンタジーの世界だし」と言う山本は、楽曲演奏のほか効果音や動物の鳴き声までギターで表現。そして「佐野が話すと怖い(笑)」。本番中は「いろいろな怪奇現象が起きたりするよね」とふたり。
公演は1部が小泉八雲記念館館長・小泉凡による講演、2部が朗読パフォーマンス。演目の『龍蛇伝説』は、八雲が紀行作品に書いた出雲大社の神在月に行われる「龍蛇を奉納する神事の神迎祭をヒントに、水にまつわる怪談やエッセイを集めて構成しました」。2回目となる山本能楽堂の印象を「歴史がしみついた佇まいで、とてもフィットします。最高ですね」(佐野)、「これまでの能楽堂公演の中で一番音がよかった。間近にいるお客さんに囲まれて、音が伝わった反応が血で感じられるような雰囲気がある」(山本)と絶賛。そこで「朗読の概念を覆すようなスペシャルな世界を楽しんでほしいです」(山本)、「八雲没後120年の記念の年ですので、これを機会に八雲の世界に接していただければ。怪談が多いですが、構えることなく『ハリポタ』のようにファンタジーを楽しんでください(笑)」(佐野)。
取材・文/高橋晴代
(2024年8月30日更新)