大阪の夏を鮮やかに彩る「船乗り込み」に
片岡仁左衛門らが登場！
7月3日(水)より「七月大歌舞伎」が開幕！

7月3日(水)に初日を迎える「関西・歌舞伎を愛する会 結成四十五周年記念 七月大歌舞伎」。片岡仁左衛門をはじめ、襲名披露となる初代中村萬壽、六代目中村時蔵、初舞台の中村梅枝、中村歌六、中村鴈治郎、中村扇雀、坂東彌十郎、片岡孝太郎、尾上菊之助ら人気俳優が勢ぞろいし、華やかに上演する。

公演に先駆け、6月29日には道頓堀で俳優らによる「船乗り込み」が開催され、「七月大歌舞伎」を喧伝した。「船乗り込み」は、江戸時代より続く古式ゆかしい歌舞伎行事で、歌舞伎俳優が江戸や京都から大坂入りする際に行われていたもの。昭和54年に55年ぶりに復活して以来、夏の大歌舞伎の始まりを告げる行事として毎年賑々しく行われ、色とりどりの幟や高張提灯に飾られた船に俳優や後援者が乗り込み、賑やかな鐘や太鼓、笛のお囃子を演奏しながら、川筋をめぐる。

当日は梅雨の晴れ間に恵まれ、大阪は夏本番さながらの暑さとなった。道頓堀の戎橋付近の沿道には歌舞伎俳優らを乗せた船の到着を今か今かと待ち望むファンたちの層が幾重にも重なっていた。やがて日本橋方面からお囃子の音が聞こえてくると、仁左衛門や初代萬壽、六代目時蔵、梅枝、中村萬太郎を乗せた船が見えた。歌六、鴈治郎、扇雀らを乗せた3号船、彌十郎、孝太郎、菊之助らを乗せた4号船、そして片岡松之助、上村吉弥、中村梅花を乗せた5号船が続々と到着すると、大きな歓声が上がった。船上からにこやかに手を振る俳優達。中にはスマホで沿道の様子を撮る俳優の姿もあり、みな楽しそうな表情を浮かべていた。次々と大向こうも飛び交い、風情もたっぷり。「七月大歌舞伎」開幕へと向けて盛り上がりを見せた。

その後は大阪松竹座の正面玄関に場所を移し、式典が行われた。「関西・歌舞伎を愛する会」の発足のエピソードや、これまでの歩みなどが紹介されたのち、歌舞伎俳優たちが登壇。名前が呼ばれるたびに、ファンたちの温かい拍手に包まれた。

襲名披露狂言『恋女房染分手綱（こいにょうぼうそめわけたづな）』「重の井」に出演する初代萬壽が登壇。「皆様、お久しぶりでございます。43年間名乗りました時蔵という名前を息子に取られまして、いえ、譲りまして、初代中村萬壽となりました。どうぞよろしくお願いいたします。6月の歌舞伎座に続いて7月の大阪松竹座で、ご披露させていただきます。本日お集まりいただいた皆様方の期待を裏切らないように精一杯、千穐楽まで勤めるつもりでございますので、どうぞよろしくお願いいたします」とにこやかに挨拶した。

続く六代目時蔵は開口一番に「私は決して名前を取ったわけではございません」と冗談を交え、笑いを誘う。5年ぶりの大阪松竹座となる時蔵。「5年前にはまさか名前を変えてまた松竹座に出させていただけるとは思っておりませんでした。私は昼の部で『若獅子』、夜の部では『八重桐廓噺（やえぎりくるわばなし）』「嫗山姥（こもちやまんば）」を勤めさせていただきます。特に「嫗山姥」は私の家にとりましても、とてもゆかりのある狂言でございますので、ぜひぜひ皆様お誘い合わせの上、何度もお越しいただけるとありがたいです。よろしくお願いいたします」といざなった。初舞台の梅枝も「松竹座は初めてなので楽しみです。『恋女房染分手綱』「重の井」で三吉を勤めさせていただきます。どうぞよろしくお願いします」とはにかみながら挨拶した。

最後に仁左衛門の名前が呼ばれると、歓声がより大きくなり「松嶋屋！」と大向こうが飛び交う。「今年もまた夏に大阪松竹座でできることを大変嬉しく思っております。ありがとうございます。今回の話題は何と言いましても萬屋さん三代のご披露。こちらを大成功に収めたいと思っております。 そして、梅枝ちゃん、（中村）種太郎くん、（中村）秀乃介ちゃんと小さい子供たちが出てくれる。これも大変嬉しいのでございます。彼らが大人になった時に、"あの時、皆さんに応援してもらってありがたかったね"と印象に残るように応援していただきたいと思います。私も一生懸命頑張りますので、よろしくお願いいたします」と語りかけた。そして、仁左衛門の発声で大阪締めを行い、「七月大歌舞伎」の成功を祈願した。

「七月大歌舞伎」は7月26日(金)まで上演。昼の部は、『小さん金五郎』、『藤娘』・『俄獅子』、初代中村萬壽襲名披露狂言『恋女房染分手綱』「重の井」を、夜の部は『義経千本桜』「木の実・小金吾討死・すし屋」、『汐汲』、六代目中村時蔵襲名披露狂言『八重桐廓噺』「嫗山姥」を上演する。

取材・文／岩本

（2024年7月 3日更新）