ホーム > NEWS > 全員で力を合わせ10年 今、上方歌舞伎の大作に挑む
松竹上方歌舞伎塾の第一期生、片岡松十郎、片岡千壽、片岡千次郎を中心に2015年に誕生した「晴(そら)の会」。"あべの歌舞伎"と銘打ち、近鉄アート館を拠点に上演を続け、今年結成10周年を迎える。この節目の年、上方歌舞伎の大作『伊賀越道中双六(いがごえどうちゅうすごろく)』三幕に挑む。監修・指導は片岡仁左衛門、演出は上方舞 山村流六世宗家の山村友五郎。出演は、本興行での活躍も著しい松十郎、千壽、千次郎に、片岡當吉郎、片岡りき彌、中村翫政、片岡千太郎、片岡佑次郎、片岡當史弥、中村鴈大、片岡愛治郎の11名。メンバーがズラリと居並び10周年の大作挑戦へ意気込みを語った。
近鉄アート館は三面客席の実験的空間。観客の目の前で演じられる歌舞伎は、わかりやすい物語と飽きさせない演出、さらにメンバー全員の熱が直に伝わり好評だ。カジュアルだがほんまもん、という感じの公演は歌舞伎初心者に最適であり、通にも新たな発見のおもしろ味がある。みんなで力を合わせ、挑戦を続けた10年。「あっと言う間でした」と主軸の3人。周囲の応援への感謝を忘れず、前を向く。
『伊賀越道中双六』は日本三大敵討ちのひとつで"鍵屋の辻の仇討"が有名な全十段。通常、本興行では六段目の『沼津』で知られる。義理と人情の絡み合う親子の哀歓が心を打つ義太夫狂言の名作だ。この『沼津』を「わかりやすくご覧いただくために」と仁左衛門と取り組み、発端から大詰めまでを改訂したのが亀屋東斎こと千次郎。「原本の文楽を読み込みつつ、人物の性根を大切に台本を7割がた創作しました。歌舞伎ではほぼやっていない三段目の円覚寺の場も付け加えて」。最後の仇討の場面は仁左衛門の「派手にやりなさい」との助言から「みんなで近鉄アート館の空間を360度生かした立ち廻りをお見せできれば」。
千次郎は亀屋東斎として解説にも登場し、原本から離れた改訂の補足も担う。それぞれの師匠が勤めた演目で大事にしていた役を、弟子たちが師匠の思いと共に継承する。「この公演で十兵衛をやらない限り、師匠・仁左衛門に教えていただく機会がない。すべて細かく、きっちり教えていただこうと思っています」(松十郎)。「習う機会のなかった師匠・秀太郎のお米という役、その可愛らしさと色気を自然に表現できたら。いつも以上に気合を入れて、自分にプレッシャーをかけながら全力で勤め上げたい」(千壽)。「師匠・我當の味わいはマネできませんが、娘を大事に思う平作に全身全霊なりきって演じられていた師匠の心を大事に勤めたい」(千次郎)。
取材・文:高橋晴代
(2024年7月29日更新)
『伊賀越道中双六』三幕
チケット発売中 Pコード:527-091
▼8月1日(木)~4日(日)12:00/17:00
近鉄アート館
全席指定-8000円 全席指定(高校生以下)-1000円(当日要学生証)
[監修]片岡仁左衛門
[演出]山村友五郎
[出演]片岡松十郎/片岡千壽/片岡千次郎/片岡りき彌/中村翫政/片岡當吉郎/中村鴈大/片岡佑次郎/片岡當史弥/片岡愛治郎/片岡千太郎
※3歳以下の入場不可。4歳以上チケットが必要。高校生以下は公演当日、学生証のご提示をお願い致します。車椅子をご利用のお客様は事前に上記までご連絡ください。
[問]近鉄アート館■06-6622-8802