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土田英生率いるMONO、創立35周年にして新境地へ

今年、創立35周年を迎えるMONOの最新作は、とある和菓子屋の10年を描いた『御菓子司 亀屋権太楼』。これまで「ひとつの場所での限られたある期間」で行われる物語を描くことにこだわってきたというMONO。創立35周年にして新境地に立った経緯や、この作品に込める思いなどを、劇団代表で脚本家・演出家・俳優の土田英生に聞いた。

「基本的に(具象的な舞台美術の)ワンシチュエーションで、暗転は挟むけど場面転換なしというものを30年ぐらい作ってきたのですが、今回は舞台も抽象化して、和菓子屋の事務所になったり、和菓子屋が経営しているカフェになったり、近所の公園になったりと目まぐるしく展開させながら、和菓子屋さんをめぐる人間模様を10年のスパンで描きます」と構想を明かす土田。

30年以上続けてきた表現方法を変えた理由をこう話す。「同じことをするのは飽きるんですよね、僕自身も。去年、個人的に2.5次元と言われる舞台(『宇宙よりも遠い場所』)の演出を初めてやったのですが、割と楽しかったんですね、それが。今まで苦手だと思っていたのですが、劇団の芝居でも抽象的な美術で展開できるのではと思ったのがきっかけです」。

江戸時代から続いてきたらしい和菓子屋「亀屋権太楼」が、経歴の捏造に端を発した騒ぎで存続の危機に立たされる。店、家族、そこに関わる人たちの10年間の物語。「話の核としては、今、ちょうど価値観の変わり目にあって、旧来であれば許されていたようなことが許されなくなっています。僕は、謝罪をするということはどういうことかここ数年、すごく考えていて。人はなぜ謝罪できないのか、謝罪って何なんだろうということを自分の中で一番大きな核にして書いています」。

和菓子屋を舞台にした理由は、祖父の存在が大きいという。「亡くなった祖父が骨董商で、家に茶室があって、有名人が来るようなところでした。家に行ってみると、地元である名古屋の百貨店の会長がお茶を飲んでいたりするようなところで。名古屋に万年堂という昔からの和菓子屋さんがあって、新作ができるとよく祖父のところに来られていて、そのやり取りを横で聞いていたというのもあって、和菓子屋に興味がありました」。

和菓子屋の設定にしたことで、思わぬ世界観が出来上がったとも。「そんなつもりはなかったのですが、雰囲気がファミリードラマになっちゃった感じがします。ちょっと「渡る世間」的な。古い職人さんが2代目の社長にお礼を言ったりしていると、ちょっと昭和っぽいですよ。金替康博という俳優が道場という職人の役をやるのですが、金替が一人で「渡る世間」にしている気がします。...なんか、金替のせいのような気がしてきました。これは悪い意味じゃなくて、彼が「渡る世間」になっていると思います(笑)」。

本公演は、大阪の他に東京、福岡・北九州、長野・上田でも上演する。そのうち、大阪、東京公演は、従来の「U-22」に加え、「U-34」のチケットも新たに設定した。それは、高騰傾向にある演劇のチケット代を懸念してのことだ。「材料費の高騰、物価の上昇、消費税の問題もありますし、また、小劇場は元々、普通にやると黒字が出ないようなシステムでやっているので、料金を上げざるを得ないのも分かるのですが、これからの演劇や観劇人口のことを考えると、手軽に行ける値段はどうにか作らなきゃいけない。今回、この料金設定にしたことで上の年齢の方にはその分、負担していただくことにもなるので申し訳ないのですが、うちの劇団は35年やっていて、観客層が明らかに35歳より上の方が多いんですよね。なので、その方たちには今までどおりのご負担をしていただいて、これまであまり足を運ばれなかった30代前半の方にも観てほしいと思います。苦しいのは重々承知ですが、全員で歯を食いしばって、料金高騰にブレーキをかける作業を興行側がしていかないと、本当に先がないんじゃないかなと思っています」。

新たな演出方法で見せつつも、愛すべきキャラクターたちが繰り広げるユーモアたっぷりの会話劇は健在だ。演劇界の未来を担う若年層にも間口を広げ、劇場へといざなう。『御菓子司 亀屋権太楼』の大阪公演は、2月22日(木)より扇町ミュージアムキューブで上演。チケット発売中。

取材・文/岩本




(2024年2月20日更新)


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MONO 『御菓子司 亀屋権太楼』

チケット発売中 Pコード:523-738
▼2月22日(木)19:00
▼2月23日(金・祝)~26日(月)
(金)14:00/19:00 (土)(日)(月)14:00
一般-4300円(指定) U-34-3000円(指定、34歳以下、要身分証明書) U-22-2000円(指定、22歳以下、要身分証明書)
※2/22(木)公演のみ初日割引、一般-3800円(指定)
扇町ミュージアムキューブ CUBE01
[作・演出]土田英生
[出演]尾方宣久/奥村泰彦/金替康博/高橋明日香/立川茜/土田英生/水沼健/渡辺啓太
※未就学児は入場不可。
[問]キューカンバー■075-525-2195

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