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親鸞と太宰治を落語で語る
桂春蝶「これが僕のスタイル」

この秋、大阪市内にオープンする新劇場・扇町ミュージアムキューブで、桂春蝶が『落語で伝えたい想い・番外編』を開催する。

2013年から始まった「桂春蝶の落語で伝えたい想い」シリーズで、自身作の創作落語を全9作、発表してきた。芸歴30周年を迎える2024年には、シリーズ10作目を発表する。その節目の前に、実在作品から二作を「番外編」として上演する。

ひとつは浄土真宗の開祖・親鸞にまつわる噺で、親鸞滅後、親鸞の真信への異端を嘆いた「歎異抄」に着想を得た「鏡の中の親鸞〜歎異抄より〜」。相愛大学学長の釈徹宗が観衆を務める。もうひとつは太宰治の「人間失格」をモチーフに描く「笑う人間失格」で、これら二作品を劇作家・脚本家・演出家のわかぎゑふが手がける。

「10作目は総決算のような、良い大作を作りたいと思っているのですが、その前にどうしても気になっていた二作品を何とか落語化して、肚の中に落としたいという思いがあった」と番外編の経緯を明かす春蝶。二作品を選んだ理由として、「いずれも日本人が一番触れてきた作品であるので、一度、落語という表現でやることが大切なのかなと思った」と続けた。

「歎異抄」の落語化は難しいと思ったと率直に話すのは釈。「信仰や信心に関わる人がたくさんおられる中で芸能の演目にするのは、それだけでも困難が予想されます。作品が出来た時点で監修の名前を下ろさせてくださいと言う可能性もあると思います。でも、桂春蝶という人の語りの芸は大変な力を持っております。決して単なる滑稽な落とし噺ではないだろうと。この人の語りの力で、『歎異抄』を落語で表現できるかもしれない」と期待と信頼を込めた。そして「わかぎえふという大変な奇才が書くなら、見てみたいと思った」とわかぎに全幅の信頼を寄せた。

わかぎは次のように構想を明かす。「『鏡の中の親鸞』は人情噺で、一人芝居を落語の形に落とし込もうと。『笑う人間失格』は、シニカルな笑いのコメディーとして書こうと思っています」。

「深く深くいろいろなこと考えて、積み上げて、積み上げて、積み上げて、それを全部崩した先に本当の笑いがあると思う」と春蝶。それは入門から29年、歩み続けた落語道の途上で見つけた、ひとつの答えでもある。「ちょっと痛みを伴うぐらいの思考や苦労があって初めて本当の笑いや喜びがあって。笑いと熟思が対になっているのが僕の落語のスタイルなのかな」。

取材・文:岩本
撮影:大西二士男




(2023年10月 3日更新)


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左より)わかぎゑふ、桂春蝶、釈徹宗

桂春蝶 落語で伝えたい想い・番外編

10月21日(土)一般発売 Pコード:521-777

〈其の壱 鏡の中の親鸞~歎異抄より~〉
▼11月22日(水)18:30
▼11月23日(木・祝)15:00
[脚本]わかぎゑふ [監修]釈徹宗 [出演]桂春蝶

〈其の弐 笑う人間失格〉
▼12月9日(土)15:00
▼12月10日(日)15:00
[原作]太宰治 [脚本]わかぎゑふ [出演]桂春蝶

扇町ミュージアムキューブ CUBE01
全席指定-3500円
※未就学児は入場不可。
[問]クリエイティブワンズ■06-6356-6788

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