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新劇場・扇町ミュージアムキューブ、
南河内万歳一座『まさか様のお告げ』でこけら落とし

10月2日、大阪・扇町に文化創造拠点「扇町ミュージアムキューブ」が開場。250席、100席、50席という3つの劇場空間や、映画・音楽・舞踊・伝統芸能・美術・体験型講座など、あらゆるアートジャンルが集まる7つの多目的スペースからなるシアターコンプレックスで、1985年から2003年まで文化の発信拠点として一時代を築いた「扇町ミュージアムスクエア」のコンセプトを継承している。

こけら落とし公演は、南河内万歳一座の新作『まさか様のお告げ』。20世紀末に世を騒がせたノストラダムスの予言をモチーフに、ネガティブな未来へ向く現在に希望を見つけようとする物語。ある夜に発生した停電をきっかけに、とある病院のベッドしかない病室に集まってきた3世代15人。彼らの群像劇を繰り広げる。劇団員の荒谷清水は2年ぶりの出演、客演に遊気舎・久保田浩や、リリパットアーミーⅡの長橋遼也、松井千尋を迎えるなど、話題も多い。

「今回は初めから15人全員が舞台上にいます。1時間近く、全員で話を転がしていくのですが、最近はそういう芝居もないし、こういった多人数の密室劇をできたら、それなりに成果があるのでは」と作・演出の内藤裕敬。この15人は一体何者か、なぜ集まって来たのか...。様々な謎が時間を追うごとに明かされていく。

「僕が最初にこの作品を書こうと思ったのは、自分自身と現在の世の中を殴り倒してやりたいという気持ちがあった」と内藤。地球温暖化が進み、日本は少子化でこれまでの社会制度が足元から揺らいでいる。今の若者たちにとって未来は決して輝くものではないことを、彼らと接することで痛感したという。「僕らはギリギリ、年金逃げ切り世代と言われていますが、彼らは頑張って働いたところで年金がもらえるかどうか。にもかかわらず、"少子化のプレッシャーは私たちにのしかかっている"と。"僕たちは将来にキラキラしたものは見ていません"と言われると、私たちの世代としては、俺たちがお気楽に、楽しくやってきちゃったおかげで申しわけないなと。俺たちがもうちょっとしっかりしていたら、こうなる前に少しは何かできたのに、ごめんねみたいな気持ちがある」と続ける。

曰く「自分たちの横っ面を張りたい気持ち」が動機となって生まれた物語は、X世代と呼ばれる20代の若者たちと、"ゆとり"世代のアラフォー、そして間もなく定年を迎えようとするバブル世代という3つのグループにわけ、現在の社会の仕組も描いていく。

大量の小道具や人力で魅せる仕掛けが面白い南河内万歳一座の美術だが、今作はシンプルに、舞台上にはベッドのみという。「病室に集まった全員が同じ運命の列車に乗って、時代に運ばれるというような場面では貨物列車に見立て、どこへ流れ着くかわからない漂流を思わせる場面ではイカダのようして、起伏をつけて遊べるように作っています」と内藤、ベッドを駆使して様々なシチュエーションを表す。

また、季節を7月にすることでノストラダムスの予言を彷彿させる不穏な空気を作り出し、カラオケの場面では「世の中に声を上げる」という暗喩も含ませる。そのほか、各シーンで各々に考察しながら、物語の行く末を見届ける楽しみもありあそうだ。

2年ぶりに南河内万歳一座の本公演に出演する劇団員の荒谷清水は、若手たちの成長が目覚ましいと目を細める。「配信なりで本公演を観ていましたが、演劇的にも、裏方の仕事でも後輩たちが本当にしっかりしていて。僕はたまに帰ってくる親戚のおっちゃんみたいになっていますが(笑)、今回は舞台で彼らの成長を感じられると思うと楽しみです。芝居は難しいですよ、本当に。結構大変です。美術もすごくシンプルで逃げ場がない。その分、やりがいがあるので、本番も楽しみです」。

今作で初の客演となる遊気舎・久保田浩は、開口一番にこう話した。「まず、この記者会見の場にいること自体、30年前の僕からしたら信じられないことです」。映画が大好きな少年時代を経て、19、20歳で演劇を始めた久保田にとって南河内万歳一座は大先輩にあたる。「内藤さんとは年齢こそそんなに違わないのですが、僕らとは全然違うところで輝いていました。万歳さんのお芝居はかなり衝撃で、『二十世紀の退屈男』(1987年初演)を観た時は、この世界はなんなんだ! と。万歳さんのおかげで、僕は40年、棒に振ったようなものです(笑)」とリスペクトを込める。

そして、かねてより酔いの勢いに任せて「出してほしい」と訴えていたところ、出演が決定した。「最初は本当にどうしようかと思いながら(笑)。しかも、扇町ミュージアムキューブのこけら落とし公演。僕は逆に観たいぐらいです。今は、19、20歳の頃の僕にもう一回戻った感じで表現できたらいいかなと思っています」と気持ちを新たにした。

新しい表現の場として期待される扇町ミュージアムキューブについて、「キャパシティもホールによって違いますし、若い人たちが様々な実験を通して自分たちの作品と自分自身をステップアップさせていく劇場として機能するならば、そういう劇場は日本にはないし、とても素晴らしいことだと感じています。かつての扇町ミュージアムスクエアのような、地域や若い世代に密着した形になることが理想なんじゃないかな」と内藤。新作『まさか様のお告げ』で、新たな劇場に命を吹き込む。

公演は10月5日(木)から10月9日(月・祝)まで。10月16日(月)から11月15日(水)まではPIA LIVE STREAMで配信もおこなわれる。

取材・文/岩本




(2023年10月 3日更新)


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左より)久保田浩、内藤裕敬、荒谷清水

南河内万歳一座『まさか様のお告げ』

チケット発売中 Pコード:520-836
▼10月5日(木)19:30
▼10月6日(金)14:00/19:30
▼10月7日(土)13:00/17:00
▼10月8日(日)13:00
▼10月9日(月・祝)13:00
扇町ミュージアムキューブ CUBE01
一般前売-4500円(整理番号付)
シニア-4000円(整理番号付、65歳以上、要証明書)
U-22-3500円(整理番号付、22歳以下、要証明書)
[作・演出]内藤裕敬
[出演]鴨鈴女/荒谷清水/福重友/松浦絵里/市橋若奈/寒川晃/有田達哉/丸山文弥/内藤裕敬/久保田浩(遊気舎)/長橋遼也(リリパットアーミーⅡ)/松井千尋(リリパットアーミーⅡ)/桶本京香(創造Street)/長山知史(創造Street/大旅軍団)/原佑宜(創造Street)
※10/6(金)14:00・7日(土)13:00公演終演後、アフタートークあり。詳細は公式サイトをご確認ください。
※青春18歳差切符は取り扱いなし。未就学児は入場不可。
[問]南河内万歳一座■06-6533-0298


PIA LIVE STREAM

▼10月16日(月)~11月15日(水)

公式サイト
https://banzai-ichiza.com/

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