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「生半可な気持ちではできない大事な作品」
松下洸平が井上ひさしの戯曲に初挑戦

戦争責任を問う舞台『闇に咲く花』で、松下洸平が井上ひさしの戯曲に初挑戦する。取材会で語った思いとは?

1947年の夏、東京の神社に、戦死したと思われていた野球のエースの健太郎(松下)が帰還する。記憶を失ったまま捕虜収容所で時を過ごしていた彼は、野球をきっかけに記憶を取り戻していく。「セリフの一言ひとことが重いですが、コミカルなところはゲラゲラ笑うほど面白く、井上さんの思いが詰まっている。セリフをすぐに覚える勇気が出なかったぐらい、僕にとっては生半可な気持ちでは挑戦できない大事な作品。自分にバトンが回ってきたと思うと身が引き締まる思いです」。

『闇に咲く花』は1987年に井上の"昭和庶民伝三部作"の第2弾として初上演し、再演を重ねてきた。「第1弾の『きらめく星座』や今作の戯曲の登場人物たちは、貧しい戦中・戦後に、みんな本当に明るい。胸が苦しくなるほどです。井上さんは悲しいことを悲しく書かないで、明るく書く。どんな資料を読むよりも戦争を知らなければという気持ちが芽生えます」。

演出は、社会的な作品を手掛けてきた栗山民也。「栗山さんは言葉数が少なく、多くを語らない方ですが、それに相反してダメ出しの時間がめちゃくちゃ長いんです(笑)。細部にまでこだわって作られる。よく『今の若い俳優が一番体現できないものは飢えだ』と言われるのですが、その『飢え』が、どうしたって今の僕たちには分からない。以前、栗山さんが口酸っぱく言われるので、悔しくて二日間ぐらいご飯を抜いて、ものすごくお腹がすいた状態で稽古場に行ったことがあるんです。でも空腹で声が出なくて逆に怒られました(笑)」。栗山が求めるのは、風呂に入れず、家族にも会えない、人間らしい生活が送れない"飢え"だとも気が付いた。「それを僕たちに突きつけられる。どこまで体現できるかが勝負ですね」。

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演じる健太郎については、壊れそうなほどの強いやさしさを持った青年だと言う。「戦争に対する怒りと自分の生まれ育った神社に対する痛いぐらいのやさしさが、僕にどこまで出せるのか。栗山さんからよく『大きい声を出せばいいってもんじゃない』と言われるんですが、何を頼りにやるかを稽古場で見つけたい」と意気込む。

松下は、栗山と組んだ『母と暮せば』『スリル・ミー』で読売演劇大賞・杉村春子賞などを受賞。「俳優は作品に描かれる庶民の声を代弁する立場だと思う。お客さんには、僕たちが渡す小さなバトンをそっと鞄の中に忍ばせて、誰かに渡していただきたい。伝え続けていくことが演劇の大切さですし、僕たちがやる意味はそこにあると思います」と話す。

公演は8月4日(金)から30日(水)紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA、9月2日(土)・3日(日)東海市芸術劇場大ホール、9月6日(水)から10日(日)新歌舞伎座、9月12日(火)・13日(水)キャナルシティ劇場にて。

取材・文:米満ゆう子
撮影:髙村直希




(2023年7月14日更新)


Check

こまつ座 第147回公演『闇に咲く花』

【東京公演】

▼8月4日(金)~30日(水)
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA


【愛知公演】

▼9月2日(土)・3日(日)
東海市芸術劇場 大ホール


Pick Up!!

【大阪公演】

7月16日(日)一般発売 Pコード:518-345
▼9月6日(水)15:00
▼9月7日(木)13:00/18:00
▼9月8日(金)13:00
▼9月9日(土)12:00/17:00
▼9月10日(日)12:00
新歌舞伎座
S席-10500円 A席-7000円 
[作]井上ひさし [演出]栗山民也
[出演]山西惇/松下洸平/浅利陽介/尾上寛之/田中茂弘/阿岐之将一/水村直也(ギター)/増子倭文江/枝元萌/占部房子/尾身美詞/伊藤安那/塚瀬香名子
※未就学児童は入場不可。
[問]新歌舞伎座■06-7730-2222(10:00~16:00)

【福岡公演】

▼9月12日(火)・13日(水)
キャナルシティ劇場

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