ホーム > NEWS > 50周年の市村正親『市村座』は 「これもひとつのオーディション」
1997年から上演される市村正親のひとり芝居『市村座』の第10回公演が、市村の役者生活50周年を迎える今年、2月から3月にかけて東京、大阪、博多、川越、仙台にて上演される。市村正親に話を聞いた。
これまで、落語の物語をミュージカルナンバーにのせた音楽落語や、落語一人芝居、音楽講談「日生劇場の怪人」などバラエティ豊かな演目を通し、さまざまな市村正親の姿をみせてきた『市村座』。役者生活50周年とも重なる第10回公演は、市村が50 年間で出演してきたミュージカル全作品をその楽曲とともに振り返るといい、「50年にもなると一人でやる負担も大きいけど、『市村座』は市村正親を好きな方が観に来てくださると信じているので、安心しきって僕の50年を歌いきってみようかなと思います。ただもし『中村座』と間違えて来たお客さんがいても、なんかおもしろいもの観たなと思ってもらえるものにしたい(笑)」。
歌以外にも、三遊亭圓朝の落語『死神』の一人芝居仕立も行う。落語の演目をもとにした芝居はこれまでもやってきたが、「今回はタイトルに"死"の"神"とついているような演目ですから、そのハードさというかね、シェイクスピアのような部分を出せたらいいかな。そして僕がやるからこそのアイデアも加えたい。例えば寿命の蝋燭が並ぶ部屋で『ファントムが出てきそうだな』なんて台詞があってもいいし(笑)。"市村正親の『死神』"ができたら」とイメージが膨らむ。さらに今回は、『市村座』を共につくってきた作・演出の髙平哲郎が作詞、上柴はじめが作曲し、市村正親をイメージした新曲も披露する。「髙平さんは僕の役者生活50年間を全部知っている方ですから。その髙平さんが歌詞を書いてくれる、そこに上柴さんが曲をつけてくれる。これもすごく楽しみです」。
役者生活50周年を迎え、「これからは、自分が何をやりたいというよりは、『市村にこの役いいんじゃない?』と言ってくださるようなものがやりたい。出ずっぱりの役じゃなくても、短く出るような、『ここに市村の存在があったらいいな』というような仕事もしたいし。......まあ、出番が少なきゃ少ないで文句言うだろうけどね(笑)。とにもかくにも僕が元気に仕事をしていることだと思います。そうすればお話がくると思うから」と生き生きと語る。「そういう意味ではこの『市村座』もひとつのオーディションだと思っています。この年齢でこれ全部歌うの!?みたいなね」。
今回の会場のひとつでもある大阪は「50年前から公演で行っている土地だから、市村を長く応援してくださる方も多いんですよ」と話す。楽しみなことは「ガード下で餃子を食べるのと、ガード下で焼肉を食べるのと、喫茶店での朝ごはん。この3つは絶対にはずせません(笑)」。『市村座』は、2月26日(日)~28日(火)東京・日生劇場、3月3日(金)大阪・NHK大阪ホール、3月4日(土)・5日(日)福岡・博多座、3月8日(水)埼玉・ウェスタ川越 大ホール、3月10日(金)、宮城・仙台電力ホールにて。
取材・文:中川實穂
撮影:森好弘
(2023年2月 1日更新)