凰稀かなめが『DOROTHY』で悪いだけではない、西の魔女に
大学生のドロシーが音楽の都「OZの王国」に飛ばされて、かかしやブリキ、西の魔女たちと出会う――。世界中で愛されてきたライマン・フランク・ボーム作の『オズの魔法使い』を現代にリメイクした新作ミュージカル『DOROTHY~オズの魔法使い~』が初演を迎える。今作で、西の魔女に扮する凰稀かなめが話してくれた。
『オズの魔法使い』が昔から大好きで、絵本をはじめ、ジュディ・ガーランド主演の同名映画や、ディズニー制作の映画『オズ』などを観てきたという凰稀。「レンタルビデオ店で、ビデオを借りては戻し、借りては戻ししていましたね。特にドロシーがオズの国でかかしやブリキ、ライオンと出会うシーンがすごく好きで、その後一緒に冒険していく物語にも強くひかれていました」。
今作の物語の設定は、とある大学のオーケストラ部。コンサートマスターでプロのヴァイオリニストとしても活躍するドロシー(桜井玲香)は、部内をまとめ、上に立とうとするあまり皆とうまくいかない。不満が噴出する楽団員との不協和音で、彼女は音楽の都「OZの王国」へと飛ばされてしまう。
映画『オズの魔法使』の西の魔女は緑色の顔とその不気味さが特徴だ。今回、オファーを受け「まず、顔を緑に塗りますか?」と聞いたと笑う。「それはないということでした(笑)。原作では西の魔女はドロシーたちをしもべにしようとする悪役ですが、今回は、悪いだけではないというところを描くんです」。西の魔女はオズの国を統一し、支配しようとしている。「なぜ、そうなったのか。物語では語られない彼女のバックボーンを考え、ドロシーの思いを聞いて変化していく様を演じるのが難しいですね。どう見せるか稽古場で悩んで試行錯誤している状態です」と話す。
元宝塚歌劇団宙組トップスターだったこともあり、今作のドロシーには共感する部分が多いという。「宝塚時代を思い出しましたね。ドロシーと部員の心のすれ違いが描かれていて、対人関係は難しいなと。上には上の思いもあるんです。お客様も、自分が今置かれている状況によって、共感する部分や、見えてくるものが違うと思います。でも、最後にはほっこりできる。音楽もすばらしいですし、何回でも観ていただきたいですね」。
自宅にいると、演じる人物が降りてきて、その人と対話することが今までの凰稀の役作りの仕方だった。西の魔女とはどんな会話を交わしているのかと尋ねると、「それが、ワンちゃんを飼い始めて、犬が怖がるからやめたんです(笑)。今はワンちゃんとは違う別の部屋で稽古をしています」と明かす。その何ともいえないチャーミングさも彼女の魅力。どんな西の魔女になるのか、OZの王国で確かめてほしい。
公演は、東京・日本青年会館ホールを皮切りに全10都市を巡演(8月20日(土)から26日(金)の東京公演は中止)。兵庫公演は9月16日(金)から19日(月・祝)まで、兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールにて。チケット発売中。
取材・文:米満ゆう子
(2022年8月24日更新)
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