アクション時代劇で殺陣に初挑戦
SKE48古畑奈和が演劇でエール
「一緒に前に進んで行こう!」
「笑って、泣けて、考えさせられて、カッコいい」をテーマにど派手なアクションを得意とする演劇ユニット「30-DELUX」。彼らが「アクションクラブ」と初タッグを組んだ舞台『ナナシ』が12年ぶりに復活。新たに刈馬カオスを脚色・演出に迎え、現代性を帯びた名古屋発のエンタテインメント「30-DELUX NAGOYA アクションクラブMIX『ナナシ2021』」として上演する。時は戦国、徳川家康の命を守るため、服部半蔵でも太刀打ちできなかった暗殺集団「四神無双」に立ち向かう不滅の忍者ナナシ。互いの正義が交錯する中、後戻りできない合戦の幕が開く――。本作で四神無双のひとり青龍役を務める清水順二(30-DELUX)と、ナナシと行動を共にする服部半蔵の弟分・鷹丸役の古畑奈和(SKE48)に意気込みを訊いた。
古畑奈和
コロナ禍でアクションクラブ代表の田尻茂一と次回作を模索する中、改めて地元名古屋の魅力を東西に広めたいとの思いを強めたという清水。ナゴヤ座の看板俳優・名古屋山三郎や、アイドルグループBMKの松岡拳紀介、三隅一輝など演者、スタッフ含め「今の名古屋で最強のエンタテインメントメンバーを揃えた」と自負する。中でも“裏の主人公”として推すのが古畑奈和だ。
「古畑さん(SKE48)が初めてセンターを務めた楽曲『FRUSTRATION』のMVを見たときに、ひとりだけ踊る姿が違って見えた。一振りごとの意味を考えながら踊っているのが分かったし、特殊な光を放つ人だなと印象的で。そこから彼女の出演作を山ほど借りて見たら、演技している姿もあって。あ、この人、歌やダンスがうまいのはもちろん、女優として開花させたい。彼女なら短期間で殺陣も絶対に習得できると思ってしまった。僕も25年やってきての勘ですね」と可能性に惚れ込む。古畑も念願の殺陣への挑戦に、胸を躍らせる。
「純粋に舞台に関われる喜びもすごくありますし、公の場では言ってなかったんですけど、すごく殺陣に挑戦したい気持ちがありました。劇中の鷹丸は、下手なりにも精一杯殺陣を練習する姿が描かれるので、自分と重なる部分もあって。がむしゃらに演じることで、公演を経るごとにどんどん上手になる姿が伝わればいいなと。共演者の方々にいろいろ教われるのが心強い反面、すごい差が生まれると思うと緊張しますよね。ツラいと思う時こそ伸びるチャンスだと思えるので、その差を埋めるためにも、バキバキに鍛えていただければと思います」。そんな古畑の気迫に応えるように、清水は台本を古畑ありきで見直したと明かす。
清水順二
「どんな困難にも前向きに笑顔で進んでいくというのがコロナ禍に放つ表のテーマ。同時に今の日本で女性の社会進出を押し上げたい気持ちもあって。女性が自分の仕事に信念を持って生きていくというのが、裏テーマです」。初演では唯一の女性キャラだった朱雀が、男性のわがままに翻弄されるような印象を与えたことで「女はあんなに男の都合で動かない」と批判を受けたことが、台本を見直す直接のきっかけになった。初演で男性が演じた鷹丸を女性が演じることで、より現代に通じる作品への進化を試みる。朱雀と共に、裏テーマの“象徴”として鷹丸役を生きる古畑は「信念を最後まで貫き通すカッコいい姿を見せたい」と力を込める。
「自分を貫き通すのは難しいと思っている人は、女性に限らずいると思う。でも自分が大切にしたいと思うものを持って進むことは全然悪いことじゃない。あっちもいいかな、こっちはダメかなとか、いろんな声を聞く緩さがあってもいい。いいと思ったものは取り入れつつ、自分を持って進めればいいねと思う」と古畑。鷹丸については「カッコよさの中にも母性本能をくすぐるキュンとくる感じもあって。でも女の子らしい繊細さを出さないからツンデレになっちゃう。そういうところが可愛らしい」と魅力を分析する。
コロコロと表情を変える鷹丸のキャラクターは、当て書きに近いという清水。「ツイッターを見てもらうと分かるんですけど、古畑さんは何面性も持ってらっしゃる。可愛かったり、ドSぽかったり、セクシーに攻めるときもあって、魔性の女の雰囲気がある。刈馬さんと鷹丸のキャラクターを考えていくうちに、どんどんアイデアが膨らんで。『ちょっと鷹丸の出番多すぎじゃない?』『でも、いんじゃないかな』となった」と明かす。中でもSKE48ファンが注目するのは、今年4月に卒業したばかりの高柳明音との共演だ。
古畑は「明音ちゃんは卒業する時からSKE48と仕事がしたいと言ってくれていて、その一番最初の仕事がこの舞台なので嬉しいです。私とも絶対に舞台とかで共演したいねと話していたんですけど、こんなすぐに叶うとは。夢が叶いました!」と笑う。朱雀役の高柳とは敵役だが、「そこは先輩といえども容赦なく。敵心を持ちつつ、でも表でバチバチする分、多分舞台裏ではすごくいちゃついていると思います(笑)」と仲の良さを伺わせた。
脚色・演出の刈馬カオスは端正な対話劇を得意とする作家。演劇的には真逆に思える30-DELUXとの異色タッグにも期待が高まる。「よく『なんで?』と言われますね。だからこそ殺陣は担うので、ストーリーラインを人間の深い部分まで掘り下げてほしいとお願いしました。難しいことを分かりやすく伝えてくれる、いい台本になっていると思う」と自信を見せる。ちなみに本作で清水が担うのは「とにかくお客さんを笑わせること!」だとか。
愛知県のエンタメ魂をここぞとばかりに燃やす意欲作。「東京や大阪とはまた違った魅力を持った名古屋の人たちから作り出されるエンタテインメントをたくさんの方に観てほしいですし、古畑さんの言葉を借りれば、演劇は“心の栄養”になるので。コロナ禍でいろんな業種の方が頑張ろうとする中、この作品を生きる勇気につなげていただければ」(清水)。「本当に分かりやすく皆さんの心にどストレートに届く作品だと思うので。難しいことを考えずに物語にのめり込んで『一緒に前に進んで行こうね!』という時間になったらいいなと思います」(古畑)。
公演は12月9日(木)から12日(日)まで愛知・中川文化小劇場、12月17日(金)から19日(日)まで大阪・近鉄アート館、12月25日(土)から28日(火)まで東京・新国立劇場小劇場にて。チケット発売中。
取材・文:石橋法子
(2021年11月26日更新)
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