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片岡松十郎、千壽、千次郎ら
晴の会による「あべの歌舞伎」
第5回となる今年は『肥後駒下駄』を
67年ぶりに復活上演!

松竹・上方歌舞伎塾 第一期生の片岡松十郎、片岡千壽、片岡千次郎が2015年に結成した「晴(そら)の会」。2016年には、片岡佑次郎、片岡りき彌が参加し、毎年、近鉄アート館で自主公演を行っている。今年は8月2日(金)から5日(月)に開催、演目は、武士の意地と情けが織りなすかたき討ちを描いた『肥後駒下駄(ひごのこまげた)』を上演する。67年ぶりの復活上演という珍しい作品だ。
 
記者発表では、片岡松十郎、片岡千壽、片岡千次郎、片岡佑次郎、片岡りき彌、片岡當史弥、片岡當十郎が登壇。「晴の会」の中心である松十郎、千壽、千次郎は「第5回を開催できてうれしい」と口をそろえて喜びを語った。
 
物語の序幕は、肥後熊本の松山家を中心に描かれる。播州姫路の元藩士の浪人で諸国をめぐりながら武者修行をしていた向井善九郎は、肥後熊本の松山家で「駒平」の名で中間奉公をしていた。松山家の娘、お縫には松田新蔵という許婚がいるものの隣屋敷に住む八坂源次兵衛が横恋慕。それを追い払う駒平に苛立つ源次兵衛は駒平を鉄砲で撃ち殺そうと企てる。物陰から鉄砲が向けられたその時、駒平の前に中老・中川縫之助が現れ、源次兵衛に対する振る舞いを叱りつける。そしてついには駒下駄で額を打ち割り、憤る駒平。「ひとかどの武士になれば、相手になってやる」との縫之助の言葉に、いつか必ず仕返しすると心に誓い、駒平は再び旅に出るのだった。一方でお縫への悪行が公になり肥後を追放された源次兵衛は、お縫の父を逆恨みして…。また、夫婦となったお縫と新蔵の身にも不幸の波が押し寄せる…。そして一幕、二幕、三幕と目の離せない展開を繰り広げる。
 
源次兵衛と縫之助の二役を勤める松十郎は「源次兵衛は悪人で、縫之助は善人。この二役を演じ分けるのは難しくて、不安でいっぱいですが、一生懸命勤めさせていただきます」と意気込み、お縫と熊本藩の家老、月岡刑部の妻・梅野をめる千壽は「今年は珍しく私は死ぬ場面がないのでちょっと寂しい気もするのですが…」と笑わせながらも、目を患い働けなくなった夫・新蔵のため、遊女として生計を立てるお縫自身が「二役を勤めているようなもの」と解説。「遊女に慣れていないところも意識しながら演じたい」と語った。
 
千次郎が演じる駒平実は向井善九郎について「武士の志、信念をもっている男」とその一面を語り、「月岡刑部の娘、松枝に惚れられる優しい一面も出せたら」と意気込みを語った。また、亀屋東斎の名前で台本の改訂も担当しており、「この物語は登場人物の相関図が入り組んでいますので、その辺を分かりやすくお伝えして、物語を楽しんでいただけたらと思います」と話した。
 
源次兵衛の中間只助役の佑次郎は「今年も晴の会のメンバーとして出られるのがうれしい」と顔をほころばせ、「源次兵衛の手下を勤めます!」とPR。刑部の妹娘・松枝を演じるりき彌は「あべの歌舞伎」について「普段なかなか上演されない演目や、身に余る大役を勤めさせていただいたり、私にとってすごくありがたい公演」と語り、「松枝はお花見の時に駒平に一目ぼれするのですが、それから数年間、駒平とは会えないんです。それでもずっと思い暮らしている一途な娘。私なりに一途な武家の娘を作り上げたい」と気合を入れた。
 
「今年も武家の女房役を演じさせていただきます。細川家の中老の妻にふさわしいような格を持った女房像を作れたらいいなと思います」とは、縫之助の妻で刑部の姉娘・お沢をめる當史弥。第3回から出演している片岡當十郎は月岡刑部を勤める。「いつもは悲劇で終わってしまうのですが、今回は序幕から大詰めまで出ています。武士の貫禄も出せたら」と意気込んだ。
 
「『肥後駒下駄』は武士の魂、そして男と男の意地が描かれたお芝居で、その中に家族の情愛なども入っています。二幕目はお縫と許嫁の新蔵が祝言をあげる場面もあり、お縫の弟の秀之助、新蔵という3人の家族の情愛を色濃く描きたいと思います」と作品について語る千次郎。「義太夫も使い、より情愛、心情を描きたい」と続けた。
 
義太夫については、監修を勤めた片岡仁左衛門より「ト書きの浄瑠璃だけじゃなく、心情をより表現することが大切。無念の思いなど、その表現をより深くするのが義太夫だ」というアドバイスもあったという。また、客席が舞台を三方から囲む近鉄アート館の特色も生かし、大道具も大掛かりなものを考えている。「柿の木の枝を使った場面や、藤棚を用いて描く立廻りなど、より立体的に作っていきたい」と見どころも語った。
 
近鉄アート館での「晴の会」は今年で5回目。「お客さんと近く、その距離が心地いい。最初はその近さに恥ずかしさもありましたが、続けていくうちに温かさも感じるようになって。反応が直に伝わってくる楽しさも感じられるようになりました」と松十郎。千壽は「どこから見てもきれいな見せ方など、我々も分かってきたように思います。それを今年も生かしたい」と話した。
 
第五回あべの歌舞伎「晴(そら)の会」は8月2日(金)から5日(月)に近鉄アート館で上演。チケット発売中。

取材・文:岩本



(2019年7月31日更新)


Check
(前列左から)片岡千壽、千次郎、松十郎
(後列左から)片岡當史弥、當十郎、りき彌、佑次郎

第五回 あべの歌舞伎「晴の会」
『肥後駒下駄』

チケット発売中 Pコード:495-196

▼8月2日(金) 18:00
▼8月3日(土) 11:00/16:00
▼8月4日(日) 11:00/16:00
▼8月5日(月) 11:00/16:00

近鉄アート館

全席指定-7200円
全席指定(高校生以下)-1000円(当日要学生証)

[監修]片岡仁左衛門/片岡秀太郎
[演出]山村友五郎
[出演]片岡松十郎/片岡千壽/片岡千次郎/片岡佑次郎/片岡りき彌/片岡當史弥/片岡當吉郎/中村翫政/片岡當十郎

※3歳以下は入場不可。4歳以上チケット必要。車いすをご利用のお客様はチケット購入後、事前にお問い合わせ先までご連絡ください。

[問]近鉄アート館■06-6622-8802

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