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ホーム > NEWS > 「人の脳内に潜り込んでいくような物語」 唐組の紅テントが今年も登場! 座長代行を務める久保井研が見どころを語る!

「人の脳内に潜り込んでいくような物語」
唐組の紅テントが今年も登場!
座長代行を務める久保井研が見どころを語る!

毎年恒例、劇団唐組の紅テント公演が4月29日(金)より、大阪・南天満公園で行われる。今年の演目は「改訂の巻『秘密の花園』」で、演出を務める座長代行の久保井研が記者会見で見どころを語った。

P1170887.JPG初演の『秘密の花園』は1982年4月、東京・下北沢の本多劇場のこけら落としとして、唐十郎が書き下ろした作品。唐組としては1998年10月、唐自身が改訂して初演し、大好評を得た。「座長代行として私が演出するようになった今、地方を回る春の興行は、まだ地方で上演していないもので、唐十郎の作品の面白さを十二分に伝えられるものをしたいという思いがあります。『秘密の花園』は唐十郎のドラマツルギーの面白さと、演劇空間の豊かさが伝わる作品ですので、今回はこの作品を選びました。昨年上演した『透明人間』と同様に、大量の水を使う大変さもありますが、それ以上に魅力的な作品なので、ぜひ大阪の方にも楽しんでいただきたいですね」。

物語の舞台は東京の下町・日暮里。あるひしゃげたアパートに暮らす夫婦と、平凡なサラリーマン・アキヨシの三角関係が描かれる。妻・一葉(いちよ)はキャバレーホステス、夫・大貫はポン引で、一葉にプラトニックな思いを抱くアキヨシは、毎月ふたりの元に給料を届けている。大貫も金のためかアキヨシの割込みを容認し、奇妙な三角関係が続いている…。「アキヨシは唐さんのいとこがモチーフになっているそうで。唐さんのところに親戚のおばさんから“アキヨシが日暮里の女のところに毎月給料を持って行っている”と相談があったらしいんです(笑)。秘密の花園は、日暮里にある廃屋のイメージ。ある意味不気味なもので、それでいて甘美なもの。そこに通ってしまわざるを得ない平凡な男の話です」。

物語の中では、泉鏡花の小説『龍潭譚(りゅうたんだん)』で描かれる姉と弟のエピソード、プロローグでは夏目漱石の『夢十夜』の第三夜などもモチーフに取り入れられている。「唐さんは泉鏡花が好きで、姉と弟という関係性も『秘密の花園』の中では重要なモチーフになっています。血縁関係と他者に対する憧れが交錯していくというか、どちらの関係が強いのか、アキヨシの中でも分からなくなっていく。日暮里の、古い六畳一間のアパートの中でさまざまな出来事が起こり、アキヨシがひと回り違う人間になっていく姿が描かれます」。

また、本作の魅力について久保井は「ダイアローグの緻密さがある」と、はっきりと語る。「唐十郎の作品は、長いセリフが詩的でとても心地いいという特徴もありますが、行間に埋められているものが、この芝居では特にダイアローグの部分で感じる。言葉の裏側にある思いは、読んでやってみればやるほど、その深さにびっくりします。この六畳一間の芝居では、2人や3人で話をしているシーンが圧倒的に多く、そこにそれぞれの人間の思惑が見え隠れする。よくぞ書いてくれました!というセリフがたくさんあります。自分の思いとは裏腹のことが口をついて出てしまうとか、大胆さがウリの唐十郎としては、ものすごく繊細なところが味わえるんじゃないかなと思います。水脈を辿る話というか、人の脳内へ潜んでいくような話。これも唐十郎の魅力なんだなと改めて感じました。ただ、ダイアローグだけではなく、荒事もたっぷりあります(笑)」。

南天満公園に3日間だけ現れる“秘密の花園”。昭和にタイムスリップしたかのような独特の空気が流れる芝居小屋で、唐十郎の世界にどっぷりと浸ろう。

 

取材・文:黒石悦子




(2016年4月12日更新)


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劇団唐組「改訂の巻 秘密の花園」

発売中 Pコード:449-620

▼4月29日(金・祝)~5月1日(日) 19:00

南天満公園

全席自由-3500円

[作]唐十郎
[演出]久保井研/唐十郎
[出演]久保井研/辻孝彦/藤井由紀/赤松由美/気田睦/岡田悟一/土屋真衣/他

※小学生以下の入場については問合せ先まで要連絡。
[問]唐組[TEL]03-3330-8118

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