「大好きな関西のファンの皆さんと一緒に
怖くて楽しい時間が過ごせることが楽しみ」
稲川淳二の怪談ナイトが今年も!
毎年恒例の『MYSTERY NIGHT TOUR 2015 稲川淳二の怪談ナイト』。今年の関西公演は、8月29日・30日の森ノ宮ピロティホールから幕を開けた。稲川によれば「今年の怖さは去年の83倍」で、アパートをモチーフにした怪談を披露する。
「今年はアパート。古いアパートだと“おそらく以前にはこんな人が住んでたのかな”とか、いろいろ出てきますよね。もしかしたら、隣の部屋に怪談があるかもしれないし。特に古いアパートに住んでいる人は、家に帰るのがいやになるかもしれないな(笑)」と恐怖心を煽る。
とはいえ、ただ怖いだけではないのが稲川の怪談だ。「怪談は民俗学。いい意味でも、悪い意味でも、因習だとか、怪談話になぞってその土地で生きるための術を教えるもの。怪談の歴史は、日本の文化の深さを考えたら相当ありますよね」と語る。
稲川は日本中を歩きまわり、各地の古老たちからその土地にまつわる話を拾い集めてきた。そこには、かつての日本の文化や暮らしが見え隠れする。
「日本人がずいぶん日本の文化や言葉を捨ててしまっている。それが寂しいですね。怪談には、ただ怖いだけじゃない思いがあるんです。昔、娯楽がない時代、11月から4月までの雪の季節は、雪国なんかは仕事ができませんから、両親が出稼ぎに行っちゃう。そうすると、テレビもラジオもないから、“じいちゃん、あれ話して、ばあちゃん、あれ話して”って子供たちが言うわけです。でも、じいちゃん、ばあちゃんもそんなにネタを持ってないので、毎年同じ話、怖い話をやる。それで“おっかねぇ、おっかねぇ”って。毎年同じなんですよ。そうやって、みんな“おっかねえ”って育っていく。怪談は、煮しめたような古い駄菓子屋みたいなもの。でも、駄菓子屋って気取ったところがない。怪談は誰でも知ってるし、話そうと思えば話せるから。落語や講談はそうは行かないけど、みんな、怪談は一つくらい知ってますからね。毎年、同じ話聞いて“おっかねぇ”なんて言って、怖いんだけど、なんか優しさとか思いがあるんです」。
毎年、関西公演を楽しみにしていると稲川。稲川がステージに現れると、待ってましたといわんばかりに方々から声援が飛び交い、音楽ライブさながらの盛り上がりを見せる。その基を作ったのが関西のファンだという。
「私の怪談は関西のファンの人が盛り上げてくれたんです。23年やってますが、初めから絶好調というわけじゃないんですよ。それでも、うちのプロデューサーは、舞台は手を抜かなかったし、安っぽいものにしなかったんです。同じように、関西のファンはずーっと応援してくれているんですよ。盛り上げてくれる。拍手をする、声援を送る、手を振る、そうやってワーって始まって怪談をする。あの基を作ったのは関西ですよ。関西のファンが私に力をくれたから頑張れたんです。そうじゃなかったら23年は出来ないですよね。23年、続く基を作ったのは関西なので、私の怪談の基は関西だと思っています。だから、一番楽しんでやってます。大好きな関西のファンの皆さんと一緒に、怖くて楽しい時間が過ごせること。これが一番楽しみですね」。
細部までこだわった臨場感ある舞台美術も『MYSTERY NIGHT TOUR』の見どころの一つ。ところによっては見えないものが見えてくるところもあるとか!? 今年は古びたアパートで一体何が起こるのか…ぜひ現場で目撃してほしい!
(2015年9月 8日更新)
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