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勝村政信が演じる
新たな“オールド・キップス”に注目

実力派として約30年のキャリアを積み上げてきた勝村政信が、舞台経験は本作で2度目という岡田将生とタッグを組んで挑む二人芝居『ウーマン・イン・ブラック<黒い服の女>』。勝村が演じる中年の弁護士と、岡田が演じる若い俳優が、過去に体験した世にも恐ろしい出来事を劇中劇で再現していくというホラーストーリーだ。

同作品はイギリスで1987年から連続上演されているロングラン作品であり、また、パルコ・プロデュースとして過去に何度も再演されてきた評価の高い人気作品でもある。加えて、演者は斎藤晴彦、萩原流行、西島秀俊、上川隆也と、そうそうたる演技派が出演してきた。今年、今は亡き斉藤晴彦が初演時から演じてきたオールド・キップス役を勝村政信が担うことに。これまで斉藤が積み上げてきた“オールド・キップス”を演じることについて「責任を感じる」と語っていた勝村に、東京公演を終えた9月初旬に意気込みを聞いた。

東京公演を終えたところで、以前の心境に変わりはないだろうか。すると、勝村は「実は、初日に『斉藤さんが後押しをしてくださったような気がする』って僕がみんなに言ったことがあって。そしたら『(斉藤さんが)萩原流行さんと来ていたよね』ってスタッフも言っていて。きっとお二人が見に来てくれて『許してやろうか、お前ごときの芝居だが』って言ってくださったのかな、ってね(笑)。勝手な解釈ですけど。(岡田)将生も2回目の舞台で二人芝居はかなり大変たと思うのですが、お客様からもある程度評価をいただけて。そのあたりから、僕らの話になってきたのかな。ようやくバトンを渡してもらったのかな、って思っています」

キャリアも年齢も、岡田よりもはるかに上をいく勝村。岡田との舞台はどのように感じていたのだろうか。「『ウーマン・イン・ブラック』はパルコの代表作のひとつでもありますし、いろんなキャストで演じられてきているので、正解はないのかなって。僕と将生が二人で作ったものが、みなさんに認めていただけたっていうことだけで。それに、この舞台は戦いですよ。立て直すことが非常に難しいんです。一幕が始まったら終わるまでリズムを変えることはできないし、とにかく二人とも出ずっぱりだし、お互いの息もそうだし。二人芝居って息つく暇がなくて。誰かが新しく入ってきてくれるわけじゃないし、誰かにセリフを任せることもできないし。精神的にもハードです」

そんな中での岡田と良い関係を築くことはは演じるうえで重要なこと。勝村は公私ともに岡田の面倒を見ていたという。「この二ヶ月くらい、将生と朝から晩までほとんど一緒で。家族以上に密な時間を過ごしているので、違和感がお互いにないですね。休みの日もマッサージに連れて行ったりとか。将生が『畳の部屋で眠れない。畳が固い』っていうから、『アホか。畳のほうが寝やすいと思うよ』って言いながら、しょうがないからうちのマットを持っていってやったりとか。『これで今日から寝ろ』って。気分はお父さん、お母さんですよ(笑)。そういう意味でコミュニケーションは非常にうまくとれてましたね」

本作では、勝村は劇中劇で複数の人物を演じる。それぞれの人物を特徴づけるために工夫していることもあるのだとか。「何役もの外国人を急に変えると、お客様が戸惑うことがあると思います。そのために『今はこの人物なんだな』、と分かりやすい手がかりを加えるようにしています。例えば、ある人物には小道具を必ず出すとか。声の質もそうですけど。その人物を表すガイドを多めに入れています」

そして勝村は「こういう優れた作品が同じ演出家によって日本にもたらされるということが贅沢なことだと思うんです。パルコ発信ということも感じてほしいですし、また、優れた翻訳劇を提供する窓口のような存在です。しかも今回の作品も非常に大事に育っていて。僕らがどれだけ健闘できているかは分かりませんが、将生と二人で作ってきた作品を再演の歴史もふまえて見ていただけると、次の世代に繋げていけるんじゃないかな。お客さんが俳優や作品を育てることができるのが演劇だと思うんです。今回見てくださった方のお子さんが見に来る、その次は孫が見に来るとか……そうなったらすごいですよね。そういう息吹みたいなものを大阪でも東京でもほかの地域でも継承していっていただけると、参加した意義があるのかなと思います」

飄々としていながらスタッフを笑わせたり、一方で演劇にかける熱い思いも語ってくれた勝村。舞台ではどのようなオールド・キップスを見せてくれるのか、まもなく始まる大阪公演に期待したい。

取材・文/中河桃子




(2015年9月 8日更新)


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勝村政信

「ウーマン・イン・ブラック」〈黒い服の女〉

発売中 Pコード:445-051

▼9月8日(火) 19:00

▼9月9日(水) 14:00/19:00

▼9月10日(木) 14:00

▼9月11日(金) 19:00

▼9月12日(土) 12:00/17:00

森ノ宮ピロティホール
全席指定-8800円

[原作]スーザン・ヒル

[脚色]スティーブン・マラトレット

[演出]ロビン・ハーフォード

[翻訳]小田島恒志

[出演]岡田将生/勝村政信

※未就学児童は入場不可。

[問]キョードーインフォメーション[TEL]0570-200-888

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