第21回OMS戯曲賞決定！
選考委員講評＆受賞者コメント

関西を拠点に活動する劇作家の優秀作品を選出するOMS戯曲賞。第21回となる今年は、12月16日に最終選考が行われ、50作品の応募の中から大賞に土橋淳志（A級MissingLink）の『或いは魂の止まり木』、佳作に田中遊（正直者の会）の『夜の素』が選出された。

土橋は6年連続で最終選考にノミネートされ、2009年と2012年に佳作を受賞。今回、念願の大賞を受賞し「とても驚いています。電話をいただいたときは幻聴が聞こえたのかと思いました(笑)。この作品は特に執筆が難航して、劇団員や出演者、スタッフさんに励ましていただいたり、アドバイスしていただいてなんとか書きあげた思い出深い作品です。作品の立ち上げに携わってくださった方々にも感謝します」とコメント。

佳作の田中は「台本を書いた時は、何も考えたくない、感じたくない状態でしたが、そこをスタートに書き始めたら、キャラクターが寄ってきてくれた。セリフとト書きが混在する書き方なので、戯曲賞として評価されたことはとてもビックリしています。これからもこのスタイルで面白がりながらやっていきたい」と喜びを表した。

選考委員は、生田萬、佐藤信、鈴江敏郎、鈴木裕美、渡辺えりの5名。土橋の作品に対しては「6年連続で最終選考にノミネートされ、我々に毎年好き勝手なことを言われてもめげずに挑戦し続けてここまできた。その間の彼の変貌ぶりは目を見張るものがあったと思います。今回の作品はひとつの到達点じゃないかなと思いました」と生田。佐藤は「イメージを飛躍させているけれど、抑制が効いているので読みやすかった。作家としてはきちんと書けるところまできていると思うので、次はもうひとつ強いモチーフで書かれることを期待します」とコメント。渡辺は「今までは演劇のための演劇という作品でしたが、今回は個性を築き上げた作品だなと思って感心しました。説明しないところが想像力をかきたてられて面白かった。人間が生きていく上での孤独感のようなものが戯曲の中から読み取れました」と語った。

一方、“ある日の夜”について描かれた田中の作品については、「良いセリフが書かれている」と評価が高かった。特に本作を大賞候補として推したというのは、鈴江と鈴木。鈴江は「明け方を描写したラストシーンの孤独感がとても悲しくて好きでした。完成度は高くないけど、田中さんの手法へのこだわりをすごく感じました」と評価し、鈴木も「個人的には一番ウマが合った作品で、読んでスーッと入ってきました。作家自身がはっきりと捕まえて綺麗だと思っているイメージを素直に描いている。手法にこだわりがあるように思いますが、問題はそこではないのでは、と思います。ほぼ脚本を書かないで演出する私としては、非常に演出してみたい作品」と賛辞を贈った。

土橋は、大阪を拠点に活動するA級MissingLinkを主宰し、田中は京都を拠点に個人ユニット・正直者の会で活動。役者としても活動する田中は、1月15日(木)～19日(月)大阪・心斎橋ウィングフィールドにて上演の、トリコ・A『赤ずきんちゃん』に出演。ぜひ、ふたりの今後の活動に注目を。

取材・文／黒石悦子

（2014年12月18日更新）