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国内外のトップランナーたちを迎えて描く
今、一番新しいJ.S.バッハの宇宙
『バッハ2025 綾なす調和』記者会見レポート

この秋から住友生命いずみホールで始まる『バッハ2025 綾なす調和』。開館35周年を迎えた同ホールが、その原点とも言えるJ.S.バッハを取り上げるシリーズ(Vol.1が2公演、特別企画を含め全7公演)だ。開幕を前に6月6日、記者会見が行われ、企画・監修を務める音楽学者でいずみホール音楽アドバイザーの堀朋平、バッハ・コレギウム・ジャパンを中心に指揮者、鍵盤奏者として幅広く活躍する鈴木優人が登壇。開幕に向けての抱負を語った。

住友生命いずみホールにはJ.S.バッハ演奏の歴史がある。前・音楽ディレクターで著名な音楽学者であった礒山雅(1946ー2018)はホールの開館と共に、古楽演奏の最前線における新鮮なバッハ演奏を次々と紹介。日本における旧来のバッハ像を刷新する企画の数々を打ち立てた。また音楽学者が企画・立案するコンサートシリーズという全国のホールに先駆けた方法により、最新の知見に基づく高い芸術性とエンターテイメントが両立した魅力溢れる公演を実現している。そうした姿勢はモーツァルトをはじめとする古典派からシューベルト、シューマンなどに及んだが、その中心には常にJ.S.バッハがあった。

こうした伝統を踏まえての『バッハ2025 綾なす調和』である。テーマは「J.S.バッハの継承」。鈴木優人指揮のバッハ・コレギウム・ジャパンが出演する第3回の『深き淵より』を最深部に、シンメトリーを描くようなシリーズ構成が新鮮だ。また7月25日(金)には特別企画として、バッハと彼を尊敬したメンデルスゾーンを支えた女性たちの物語を紐解くレクチャー&コンサートも開催。堀朋平、鈴木優人の言葉の中に、シリーズの聴きどころや現代に息づくバッハの魅力を探ってみたい。

バッハを中心にさまざまな音楽の模様が立ち現れてくる企画
        ー 住友生命いずみホール音楽アドバイザー 堀朋平

hori2201-2.jpg『綾なす調和』というシリーズタイトルを付けたのは、バッハの音楽が後世に与えた影響、そして彼自身が先立つものから受けた影響などを、その作品を縦糸に描き出したいという狙いからです。「あや」というのはもちろん織物の模様のことを意味しますけれども、バッハを中心にさまざまな音楽の模様が色鮮やかに立ち会われてくるような企画にしたいと考えました。2日にわたるジャン=ギアン・ケラスの第1回のように、まさにバッハそのものという公演もありながら、第2回、第4回のように同時代の作曲家との組み合わせや、数々の異稿も取り混ぜた器楽のプリズムのような公演もあり、最後は大阪出身で日本を代表するオルガニスト、冨田一樹さんの演奏で締めくくるという非常に多岐にわたる聴きどころの多い公演になるのではないかと思っています。そしてこれは私自身の希望でもあったのですが、やはり全体の中心には宗教声楽作品を置きたいという思いがあり、その中で、このカンタータ38番「深き悩みの淵より、われ汝に呼ばわる」を選ぶに際して、作曲家でもある鈴木優人さんにまさに同じ詩篇130篇を題材とした『深き淵より』という声楽作品があることを知って、ぜひということで取り上げていただきました。こうした経緯を含め、いろいろな人との繋がりが実を結んで実現した今回の『綾なす調和』です。バッハを巡る、新しい物語をお届けできればと考えています。

いずみホールは私のアイディアのスイッチを入れてくれる場所
                 ー 指揮、オルガン 鈴木優人

suzuki2201-2a.jpg堀さんから「繋がり」という言葉がありましたけれども、バッハ・コレギウム・ジャパンそのものがいずみホールで、礒山先生との出会いで生まれたグループです。1989年に産声を上げて、90年のホール開館の時に私の父、雅明が『マニフィカト』を演奏しました。そういった意味で私はいずみホールとの「繋がり」をいつも感じますし、私にとってアイディアのスイッチを入れてくれる場所のように思っています。私の『深き淵より』は、セッテ・ヴォーチというヴォーカルグループのために書いた8声部のア・カペラ作品です。ドイツのワイマールで初演したんですが、そのコンサートをグスタフ・レオンハルト(著名な鍵盤奏者)が聴きに来ていて「レオンハルトが自分の曲を聴くのか」と思ってすごくドキドキしたのを憶えています。日本国内ではまだ2回しか演奏していないのですが、なぜか堀さんがこの作品のことをご存知でリクエストいただいたところから、私のプログラム全体は決まっていったように思います。もちろんその中心にはバッハのカンタータ38番「深き悩みの淵より、われ汝に呼ばわる」という作品があるわけですが、嘆きから救済に向かうこの物語をどんな風に演奏しようか、と、今考えているところです。コンサートの12月6日はちょうどキリスト教で言う「待降節」(クリスマスの4つ前の日曜日からクリスマス前日まで)に当たります。それにふさわしい音楽を演奏したいと思っています。
                       取材/文:逢坂聖也

 バッハ2025 綾なす調和
[特別企画]レクチャー&コンサート
「アンナとファニー その"声"を聴く」

7月25日(金)19:00開演
一般-1500円(指定)※チケットはこちらまで。

松井 亜希(ソプラノ)
阪田 知樹(ピアノ)
堀 朋平(お話)

【演奏曲目】
J.S.バッハ:《喜びをもってこの世を去りましょう》(追悼カンタータ《子らよ、嘆け》BWV244aより)
J.S.バッハ/G.H. シュテルツェル:《あなたが共にいてくれるなら》 BWV508
ファニー・メンデルスゾーン:《ゴンドラの歌》op. 1-6
フェーリクス・メンデルスゾーン:《厳格なる変奏曲》op. 54 他




(2025年7月 4日更新)


Check

住友生命いずみホール『バッハ2025 綾なす調和』

Vol.1「線と無限」

ジャン=ギアン・ケラス(チェロ)
9月25日(木) [第一夜] 
19:00開演
一般-6000円
Pコード:292-903 チケット発売中
※チケットはこちらまで

【曲目】
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲
 第1番 ト長調 BWV1007
 第4番 変ホ長調 BWV1010
 第5番 ハ短調 BWV1011

9月26日(金) [第二夜]
19:00開演
一般-6000円
Pコード:292-904 チケット発売中
※チケットはこちらまで

【曲目】
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲
 第2番 ニ短調 BWV1008
 第3番 ハ長調 BWV1009
 第6番 ニ長調 BWV1012


Vol.2「バッハのプリズム」

10月24日(金)
19:00開演
一般7000円
Pコード292-905 チケット発売中
※チケットはこちらまで

佐藤俊介 & アンサンブル赤いはりねずみ
 佐藤俊介/髙橋奈緒/小玉安奈/
 髙岸卓人/山本佳輝(ヴァイオリン)
 矢崎裕一(ヴィオラ)
 山根風仁(チェロ)
 布施砂丘彦(コントラバス)
 重岡麻衣(チェンバロ)

【曲目】
J.S.バッハ:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 BWV1052Rより 第3楽章
ハインリッヒ・バッハ:5声のソナタ
L.マルシャン:オルガン曲集 第5巻より *弦楽アンサンブル版
J.S.バッハ:管弦楽組曲 第3番 ニ長調 BWV1068 * 弦楽合奏版
T.アルビノーニ:トリオ・ソナタ ロ短調 op.1-8
J.S.バッハ (モーツァルト編):平均律クラヴィーア曲集 第2巻より
 《フーガ第9番》 ホ長調 BWV878/K.405
J.S.バッハ:ヴァイオリン協奏曲 ホ長調 BWV1042


Vol.3「深き淵より」

12月6日(土)16:00開演(15:40~プレトークあり)
S席-9000円 A席-7000円 
チケット一般発売:8月1日(金)

鈴木優人(指揮、パイプオルガン)
バッハ・コレギウム・ジャパン
藤井玲南(ソプラノ)
布施奈緒子(アルト)
櫻田 亮(テノール)
加耒 徹(バス)

【曲目】
F.メンデルスゾーン:
 オルガン・ソナタ 第3番 イ長調 op.65, MWV W58
鈴木優人:詩編130編による「深き淵より」
J.S.バッハ:カンタータ 第38番
 「深き悩みの淵より、われ汝に呼ばわる」BWV38
F.メンデルスゾーン:
 オルガン・ソナタ 第6番 ニ短調 op.65,MWV W61
ブラームス:2つのモテット op.74
J.S.バッハ:カンタータ 第140番
 「目覚めよ、とわれらに呼ばわる物見らの声」 BWV140


Vol.4「楽器は語る」

2026年3月7日(土)14:00開演
一般-7000円 
チケット一般発売:12月5日(金)

ベルリン古楽アカデミー/平崎真弓(ヴァイオリン)
クセニア・レフラー(オーボエ)/
ラファエル・アルパーマン(チェンバロ)

【曲目】
J.S.バッハ:
管弦楽組曲 第2番 イ短調 BWV1067 
 ソロ・ヴァイオリン付き第1稿
オーボエ・ダモーレ協奏曲 イ長調 BWV1055R
復活節オラトリオ BWV249よりAdagio
ヴァイオリン協奏曲 第1番 イ短調 BWV1041
オーボエ協奏曲 ト短調 BWV1056R
チェンバロ協奏曲 第6番 ヘ長調 BWV1057
2つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調 BWV1043


Vol.5「揺るがぬ信念」

(冨田一樹プロデュース ヨーロッパ・オルガン音楽の伝統と継承を聴く Vol.2)
2026年3月21日(土)16:00開演
一般:4000円 
チケット一般発売:12月5日(金)

【曲目】
J.S.バッハ:
 プレリュードとフーガ 変ホ長調 BWV552「聖アン」
 ファンタジー ト長調 BWV571
 コラール「来たれ聖霊、主なる神」
D.ブクステフーデ:
 第1旋法によるマニフィカト BuxWV203
N.ブルーンス:プレリュード ホ短調「グレート」他