ホーム > NEWS > 木琴の調べで贈る華やかな宴 通崎睦美の「今、甦る!木琴デイズ」 vol.17は「木琴で愉しむオペラの世界」!!
まずは右のチラシをごらんあれ。アール・ヌーボーのポスターを思わせる色調の中、描かれているのはベル・エポックのミューズ、サラ・ベルナールならぬ21世紀の木琴のミューズ!このお洒落な遊び心がすべてを語る通崎睦美のコンサートシリーズ「今、甦る!木琴デイズ」が11月16日(水)、京都文化博物館博物館別館ホールで開催される。戦前から戦後にかけて日本とアメリカで活躍した木琴奏者、平岡養一(1907~81)の足跡をたどりながら、木琴という楽器の持つ魅力を紹介していこうというこの企画、Vol.17となる今回は「木琴で愉しむオペラの世界」。人々を魅了する華やかな旋律がどこか懐かしい木琴の響きに乗せて今、甦る!
1929年、平岡養一はポリドールに16曲の録音を行う。最初の渡米前、その費用を稼ぐためである。この録音の中には木琴とピアノの編曲版で、ヨハン・シュトラウスの『美しき青きドナウ』やサラサーテの『チゴイネルワイゼン』などと並んでビゼーの『カルメン』、ヴェルディの『椿姫』といったオペラからの作品が収められている。通崎睦美はその評伝「木琴デイズ 平岡養一『天衣無縫の音楽人生』」(講談社刊/写真左)の中で、残されたSP盤を聴きながら当時の平岡の演奏を分析している。そのアラも、瑕も認めながら、しかし通崎は平岡の音楽を「この推進力、そして前に飛ぶ音色は将来ソリストとして独り立ちするために、不可欠な要素である」と力強い言葉で語っている。独学の木琴1つを持って音楽修行に渡ろうとする、22歳の平岡を捉えた印象的な場面である。
『カルメン』『椿姫』という選曲は日本のオペラ事情を知る上でも興味深い。『カルメン』の日本での初の全曲版上演(日本語によるオペラコミック版)とされるのが1922年の浅草金龍館における根岸歌劇団、いわゆる浅草オペラでの上演である。『椿姫』は1918年の赤坂ローヤル館での上演が初期のものとされるがヒットには至らず、のちにやはり浅草オペラで人気演目となっている。そこから10年経つか経たぬかの平岡の録音である。もとより音楽はさまざまな形で日本に届いていたことだろうが、当時大方の聴衆にとってオペラは最新の音楽ジャンルであり、平岡のレコードは最も進んだ"洋楽カバー"として受け止められていたかも知れない。1923年9月の関東大震災により浅草オペラは衰退。その後の日本で本格的なオペラ上演を目指したのが帰国後、一時行動を共にするテノールの藤原義江であったことを思えば、平岡とオペラの浅からぬ縁も感じることができる。
こうした背景を踏まえながらの今回の木琴デイズ。かつて平岡が愛奏し、現在は通崎睦美が継承した銘器「ディーガン・アーティスト・スペシャル・ザイロフォンNo.266」を主役としつつ、今回はそこにピアノと木製フルートの優しい音色が寄り添う。昼と夜2回公演。通崎睦美の軽快なトークもまじえた休憩なしの90分だ。モーツァルトからロッシーニ、そしてリムスキー=コルサコフやヴェルディまで、京都文化博物館別館ホールのレトロな雰囲気の中で、木琴が奏でるオペラの名旋律に耳を澄ませたい。
(2022年10月17日更新)
●11月16日(水)
14:00(開場13:30)/19:00(開場18:30)
京都文化博物館 別館ホール
全自由席-3500円 全自由席・学生-1500円
Pコード 226-100 チケット発売中
【演奏予定曲】
〈木琴〉
踊子の紅い花~木琴と奏者の声のための:伊佐治直
〈フルート〉
モーツァルト「お手をどうぞ」の主題による変奏曲:メルカダンテ
〈木琴+フルート〉
二重奏によるオペラ名旋律集より:モーツァルト/編曲者不詳
〈木琴+フルート+ピアノ〉
時の踊り~歌劇「ジョコンダ」より:ポンキエッリ/松園洋二編
〈木琴+ピアノ〉
ウィリアム・テル幻想曲:ロッシーニ/朝吹英一編
影のうた~歌劇「ディノーラ」より:マイアベーア/松園洋二編
歌劇「椿姫」抜粋曲:ヴェルディ/小林美隆版、松園洋二編
歌劇「ミニヨン」より:トマ/松園洋二編
インドの歌~歌劇「サドコ」より
:リムスキー=コルサコフ/クライスラー編
モーゼ幻想曲:パガニーニ
カルメン綺想曲:ビゼー/松園洋二編
▲演奏曲順不同
【木琴】通崎睦美
【フルート】森本英希
【ピアノ】松園洋二
▶オフィシャルサイト:通崎好み製作所
【問い合わせ】
オトノワ■075-252-8255