若き巨匠と伝統のオーケストラが踏み出した
新たなる高み。アンドリス・ネルソンス率いる
ボストン交響楽団、フェスティバルホールに登場
アメリカ屈指のオーケストラ、ボストン交響楽団が11月4日(土)、フェスティバルホールに登場する。ボストン交響楽団の創設は実に1881年。初代音楽監督ジョージ・ヘンシェルを皮切りに歴代シェフにはピエール・モントゥー、セルゲイ・クーセヴィッキー、シャルル・ミュンシュほか、音楽史を彩る綺羅星のごときマエストロたちが並ぶ。また1973年に音楽監督に就任し、29年にわたって同楽団に一時代を築き上げた小澤征爾の活躍は、日本において同楽団の存在をより印象深いものとしている。アメリカで最も古くから栄えた都市、マサチューセッツ州の州都ボストンに本拠を置き、毎年夏に行われるタングルウッド音楽祭ではレジデント・オーケストラを務めるなど、伝統と革新の知的なブレンドが織り成す幅広い音楽性を持った彼らの響きは世界中の音楽ファンの注目を集めて来た。
今回そのボストン交響楽団を率いるのが、第15代音楽監督アンドリス・ネルソンス。1978年、ラトビアのリガ出身。ラトビア国立歌劇場首席指揮者、バーミンガム市交響楽団音楽監督などを歴任した後、2014年、ジェイムズ・レヴァインの後を受け、ボストン交響楽団の新たなシェフに就任した。就任前後からスタートしたショスタコーヴィチの全交響曲ライブ録音プロジェクトは2016年、17年、2年連続のグラミー賞(最優秀オーケストラ演奏賞)に輝くなど高い評価を収め、このオーケストラの名をあらためて国際的なステージに押し上げた。ボストン交響楽団との契約はすでに2021~22年シーズンまで延長され、その蜜月が伝えられている。同楽団が音楽監督とともに来日するのは、1999年の小澤征爾との日本公演以来18年ぶりのことである。
ソリストに迎えるのはアメリカを代表するヴァイオリニスト、ギル・シャハム。愛器「ポリニャック伯爵夫人」(1699年製ストラディバリウス)から紡ぎ出される暖かな音色は、チャイコフスキーの協奏曲の情熱的な味わいを一層かき立てるに違いない。そしてアンドリス・ネルソンスとボストン交響楽団がその真価を存分に発揮するであろう作品がショスタコーヴィチの交響曲第11番「1905年」。20世紀を代表するショスタコーヴィチの交響曲の中でも、とりわけドラマティックな展開を持った1曲である。今や絶好調とも言えるネルソンスとボストン交響楽団。新たな黄金時代へ踏み出した彼らの貴重なドキュメントとなりそうな来日公演だ。
(2017年10月20日更新)
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