ホーム > NEWS > バッハのオルガン作品全228曲を7年に渡って演奏。 いずみホール/バッハ・アルヒーフ・ライプツィヒ 共同企画「バッハ・オルガン作品全曲演奏会Vol.1」
「全14回のプログラムを作成する、というのは苦しくも楽しい作業でした。バッハが作品に込めた意味というものを汲み取る必要がありますし、作品相互の関係性や、調性の関係もあります。そこへ、だいたい1回のコンサートの長さは合わせなければいけないという都合がありながらも、私はバッハの音楽を愛好する者のひとりとして、14という数にもこだわってみようと思いました」
いずみホール音楽ディレクターの礒山雅氏(写真左)は3月に行われた「バッハ・オルガン作品全曲演奏会」発表記者会見の席上、そのように語った。
アルファベットをAから1として数えるとBACHの和は14となる。バッハ自身がこの数を作品の随所に散りばめたことは知られているが、こうした言葉と数に関する象徴はバッハの音楽の大きな特徴でもある。バッハの音楽を楽しむ人は、思わぬところで作曲家が仕掛けた精緻な技(わざ)に出会い、その奥深い世界に魅了されることになる。
8月3日、大阪のいずみホールでスタートする「バッハ・オルガン作品全曲演奏会」は、バッハの遺したオルガン作品全228曲を、7年、14回という時間をかけて演奏しようという、ホールの自主企画としては、世界でも例を見ない画期的な演奏会だ。これは今年3月、全10回のシリーズを好評のうちに終了した同ホールの「バッハ・オルガン作品連続演奏会」をさらに発展、継承するもので、バッハ研究の最高機関として知られる「バッハ・アルヒーフ・ライプツィヒ」といずみホールとの連携による共同企画でもある。音楽監督をバッハの研究家として知られる礒山雅氏と、バッハ・アルヒーフ・ライプツィヒ所長のクリストフ・ヴォルフ氏のふたりが務め、ヴォルフ氏が選定するオルガニストがリレー形式で登場する。
第1回に登場するのが、ドイツのゲルハルト・ヴァインベルガー。バロック以前から20世紀の作品に至る幅広いレパートリーを持ち、すでに歴史的オルガンによるバッハのオルガン全曲録音も果たしている碩学である。 「受難の悲しみ、救済の喜び」と題された今回のプログラムは、ニ短調を内包する「トッカータとフーガ《ドリア調》」で幕を開け、イエス・キリストの受難と人間の救済を描くコラールを経て、力強い響きに満ちたニ長調の「プレリュードとフーガ」で締めくくられるという、まさにバッハ作品の縦糸とも言えるプロテスタントの信仰を表現するもの。しかし、その響きは、信仰の有無を超え素晴らしい音楽として、現代の私たちに届けられる。今後の7年、最新の研究成果とともに、私たちがリアルタイムで立ち会うことが出来るバッハの旅への興味深い第一歩と言えるだろう。もちろん、高度な内容を平易に解説する、磯山氏の味わい深い「お話」も健在だ。
■バッハ・アルヒーフ・ライプツィヒ
1950年、J.S.バッハが後半生を過ごした町、ライプツィヒ市に設立されたバッハの研究機関。東西ドイツの統一後は、ライプツィヒ市が運営する公的な機関として、世界最高水準のバッハ研究を行っている。 1985年からはバッハがカントル(音楽監督)として勤務した同市内の、聖トーマス教会(写真左)中庭に面したボーゼハウスに移転し、バッハ博物館を併設。バッハの音楽が途絶えることなく演奏される環境の中で、卓越したコレクションや様々な企画・催し物を通して 、常に最新の成果を発信し続けている。
(2012年6月19日更新)
バッハ・オルガン作品全曲演奏会 Vol.1「受難の悲しみ、救済の喜び」