豊中名誉市民である山田洋次監督が北山雅康と
大阪・豊中で舞台挨拶に登壇！
映画『TOKYOタクシー』豊中舞台挨拶レポート

2022年のフランス映画『パリタクシー』を、山田洋次監督が日本版にリメイクした人間ドラマ『TOKYOタクシー』が、11月21日(金)より、大阪ステーションシティシネマほか全国で公開される。東京・柴又から神奈川の葉山にある高齢者施設まで、85歳の女性を送迎することになったタクシー運転手の1日を描く。

山田洋次監督作品には欠かせない名女優・倍賞千恵子が主演を務め、『武士の一分』以来19年ぶりの山田組参加となる木村拓哉が共演するほか、蒼井優、迫田孝也、優香、中島瑠菜、神野三鈴、マキタスポーツ、小林稔侍、笹野高史ら豪華キャストが名を連ねている。

そんな本作の公開を前に、10月24日(金)、豊中市立文化芸術センターで、豊中名誉市民である山田洋次監督と、1988年の『ダウンタウンヒーローズ』以降、多くの山田洋次監督作に出演し、本作にも出演している北山雅康が上映後に登壇し、舞台挨拶を行った。

まずは、山田監督が「生まれ故郷の豊中に久しぶりに帰って参りました」と言うと大きな拍手が。続けて、「僕は生まれも育ちも岡町です。僕の生まれた、赤い屋根のちょっとおしゃれな家を今でも大事に保存してくださって、とてもありがたいことだと思ってます。その豊中の大きな会場で、こんなにたくさんの人に僕の作品を観ていただいて、本当に嬉しいです。皆さんが満足していただけるか心配でしたが、楽しんでいただけたら良かったなと思っております」と挨拶すると、さらに大きな拍手が贈られていた。

主演の倍賞と共演の木村について山田監督は「倍賞さんは、寅さんの妹のさくらという役を50本近くやっていて、いつもお兄ちゃんのわがままを受け止める、受ける役をずっとやってきたんですよね。今回は全く反対で、積極的に運転手に語りかける役。木村拓哉くんは、いろんな映画で主演として能動的に働きかける役をずっとやってきた人。でも、本作ではほとんど受け身で聞いている役なので、やってくれるかどうか心配したんですが、「ぜひやります」と、彼女の話を聞く役を演じてくれました。だから、おふたりに僕は称賛の拍手を贈りたいと思っております」と、今までとは真逆の役を演じたふたりを称賛していた。

全編の半分が走行中のタクシーの中のシーンとなっている本作。最新の技術を用いて撮影したことについて山田監督は「全部パネルになっている大きな壁に、走る景色を映して、その中にタクシーを置くんです。まるで本当に走ってるように錯覚するぐらい見事でした。このシステムがあったから、この映画ができたようなものです」と振り返っていた。

その撮影方法を見たという北村が、「イメージとしては、箱の中に車が置いてあるような感じ」だと言い、「両サイド、天井まで全部スクリーンなんです。壮観でした。スクリーンのところに立つと、外にいるのかな？と思うぐらい。映像もすごくクリアで...」と臨場感たっぷりの撮影について話すと、山田監督も「本当に走ってる車の中にいるんじゃないかと錯覚することもあった」と明かしていた。

また、ユーモアを交えた監督の作風について山田監督は「観客がどこで笑うかみたいなことは、全くわからない」ときっぱり。「寅さんの第1作を作ったのは、ずいぶん昔の話ですが、試写室でスタッフと一緒に見た時に、笑うところなんかひとつもないと思った。真面目な映画を作っちゃったような気がして」と明かし、「喜劇という注文で僕はこの企画を引き受けたのに、観客が笑わなきゃ喜劇としては失敗だと思って、僕はしょんぼりしてたんですが、封切られたら、お客さんが笑うんです」と話し、「映画館で見てみたら皆が笑ってて。その時に、僕の映画のこういうところで笑ってしまうんだと観客に教えられた」と振り返り、「やっぱり、人間をちゃんと描くことが大切」だと作品作りの極意を語っていた。

最後に、山田監督が「この映画は11月に日本全国のあちこちで封切られますが、こんなに大きな会場で大勢の観客での上映会はここしかないと思います。今日は本当に貴重な上映会だったと思います。皆さんに感謝したいと思います」と、観客に感謝の思いを述べ、舞台挨拶は終了した。

取材・文／華崎陽子

（2025年10月24日更新）