「私にとって特別な作品になった」
主演・杉咲花が撮影地である関西に凱旋！
戸田彬弘監督と大阪・なんばで舞台挨拶に登壇！
映画『市子』大阪舞台挨拶レポート

連日完売となった劇団チーズtheaterの傑作舞台『川辺市子のために』を、原作者の戸田彬弘監督が映画化した『市子』が、12月8日(金)より、シネ・リーブル梅田ほか全国にて公開される。プロポーズをうけた翌日に失踪した恋人・市子を捜す男性が、彼女の半生を辿っていく中で市子の壮絶な過去を知っていく姿を描く。

杉咲花が主演を務め、『愛にイナズマ』の若葉竜也、森永悠希、倉悠貴、中田青渚らが共演する話題作だ。そんな本作の公開を前に、12月5日(火)、TOHOシネマズなんばで、主演の杉咲花と戸田彬弘監督が、舞台挨拶付き先行上映会の上映前に登壇し、舞台挨拶を行った。

大阪に来るのは「『市子』の撮影以来」と言う杉咲。「大阪は大好きな場所」だと言い、「どんな風に映画を受け止めてもらえるのかドキドキしています」と語った。また、「おちょやん」に出演していた杉咲は「朝ドラの撮影で10ヶ月ぐらい東京と新大阪を行き来していたので、新大阪駅がすごく印象深い」と言い、「どうしても大阪の雰囲気を味わって帰りたいから、新大阪駅の改札に入って串カツとうどんをはしごして食べて帰るのがお決まりでした。アスパラ串カツを10本ぐらい食べてました」と笑いながら話していた。

一方、奈良県出身で近畿大学卒だという監督は「TOHOシネマズなんばは、自分で映画を観に来ていた映画館。東大阪となんばを行き来して映画を観ていたのでここは原点みたいなもの。TOHOシネマズ自体がすごく遠い存在だったので、今感動してます」と明かすと、会場からは拍手が起きていた。

本作が関西で撮影されていることから、ロケ地について尋ねると監督は、「オミクロンの時期だったので、なかなか許可がおりず、東大阪の設定ですが和歌山市の団地で撮った。大阪の方々は違うやろと思われるかもしれませんが、そこは」と観客にお願い。続けて、「松原のイズミヤが出てきたり。近鉄電車を撮りたかったけど、南海電車で撮影してます。天下茶屋駅から走っているローカル線に杉咲さんが乗ってるシーンがあります」と明かしていた。

また、関西弁がメインとなっている本作について監督は、「市子はある境遇を背負ってしまった女の子。僕たちが生きてるこの世界と重なるようにしたい。具体的などこかにいる人の話だと思ってほしかった」と明かし、「標準語でやってしまうと匿名性を持ってニュートラルなものになってしまう。方言としてやりたかったので、僕にゆかりのある関西弁でやりたいと思った」と関西弁にした理由を語っていた。

関西弁で演技をした杉咲は、「関西弁をとても愛おしく思っていたので、また話せる機会があって嬉しかった」と話すと、監督は、「朝ドラの方言指導の方から、「こんなに耳のいい俳優さん初めて見た」と。方言指導がいらないくらい完璧だったと聞いた」と明かし、「新しい台詞を渡して、方言指導の方がイントネーションを伝えると杉咲さんが台本に怪しい印をピピピってつける。1回聞いただけで「大丈夫です」と。普通はそんなことあり得ないんです」と杉咲の関西弁を絶賛。

すると杉咲は、「違います」と恥ずかしそうに否定し、「朝ドラの時に1年以上かけて教えていただいたんですが、コツをつかむのに時間がかかって。イントネーションを覚えるのってこんなにも難しいんだと思った。言葉を記憶していくことがすごく難しかったので、音の抑揚に矢印をつけて覚えるのが自分に一番向いていると気づいて、それからすごく楽になった」と語っていた。

最後に杉咲が、「市子を演じた時間は、私にとってとんでもなくかけがえのないものだと思っています。私は市子のことを可哀想とは言い切れないし、その人にしかわからないことがある。想像していくことが他者と関わっていくことなんだと、市子に出会って考えさせられました。市子を身近な人として観ていただけたら嬉しいです。私にとって特別な作品になったので、ひとりでも多くの方に観ていただきたいです」、監督が、「市子という女の子を描いた映画ですが、彼女の主観は出てきません。彼女と関わった人たちが彼女について話していく構成になっていて、そのことで彼女の姿が立体的になっていく。周りにいる大事な人や友人、家族のことをもう少し深く見つめるきっかけになれば嬉しいです」と作品をPRし、舞台挨拶は終了した。

取材・文／華崎陽子

（2023年12月 5日更新）