主演の綾野剛と荒井晴彦監督が登壇！
映画『花腐し』大阪舞台挨拶レポート

2000年に芥川賞に輝いた松浦寿輝の同名小説を荒井晴彦監督が翻案した人間ドラマ『花腐し』が、11月10日(金)より、シネ・リーブル梅田ほか全国にて公開される。廃れゆくピンク映画界の映画監督と脚本家志望の男、彼らが思いを寄せる女優の人生が交錯する様を描く。

『火口のふたり』などを手がけた荒井晴彦が監督を、綾野剛が主演を務め、柄本佑、さとうほなみ、吉岡睦雄、川瀬陽太、Nia、山崎ハコ、マキタスポーツらが共演。そんな本作の公開に先立ち、10月25日(水)、シネ・リーブル梅田で、主演を務めた綾野剛と荒井晴彦監督が先行上映会の上映前に登壇し、舞台挨拶を行った。

大きな拍手で迎えられ、綾野が「これからより深いところに潜っていくような映画なので、ぜひ体調を良くして観てください」と挨拶すると、監督も「暗い映画です。覚悟しておいてください」と重ね、綾野は笑い声をこぼしながら、「ここから2時間、強制的にそんな時間にしてしまうので。この差も楽しんでもらえたらと思っています」と、舞台挨拶との温度差も楽しんでほしいと語り、舞台挨拶は始まった。

まずは、大阪の印象について綾野は、「かなり前から大阪が好きだと言っている」と言い、実は、来年公開する映画で大阪弁を使う作品に出ていることを明かし、「大阪弁を使ったことで、改めて何が好きだったのかに気づいた」そう。「大阪弁は絶妙に音色が変わる。大阪弁の温かさみたいなものが好きだったんだとわかった。絶妙なニュアンスで関係性や距離感が声の音色に出ていることがわかって、さらに好きになった」と、大阪への愛情を語っていた。

一方、監督は「(大阪は)外国みたいなもの。大阪は東京に対抗してますよね。大学でも、東北の人などは方言を使わないのに、関西の人はどこでも関西弁。パリに行っても関西弁が聞こえてきますから」と言うと、場内からは笑い声が。

そして、本日、ひと足先に観客に映画を観てもらうことについて綾野は、「嬉しいです。キャンペーンはコロナ禍ではできなかったこと。こうして映画を皆さんにお届けすることをとても大事にしていて。自分たちがその土地に出向いて、そこでの交流も含めて映画だと思っている」とキャンペーンの意義を語り、続けて、「こういう機会をいただいてありがとうございます」と感謝の思いを伝えた。一方、監督は「先に観てもらっていい映画だと思ってもらえるならいいですけどね。逆なら怖いですけど」と自虐的にコメント。

また、荒井晴彦監督について綾野は、「(監督の存在は)都市伝説化していて。本当に存在しているのか。会いたくても会える人じゃない、勝手にそういうイメージを持っていた」そうで、オファーについては「即答でお受けしたいと返事してお会いしたら、とてもシャイな方ですごくチャーミング。続けてるといいことあるなと思って、ご褒美のような作品だった」と監督とのタッグを振り返っていた。

そんな綾野について監督は、「日本の役者は知的な役ができる人が少ない。映画監督も最近は知的じゃない監督が多いけど(笑)」と笑わせた上で、「綾野くんならいけるかな？ と思ったらいけましたね(笑)」と念願のキャスティングだったそう。

本作でピンク映画の監督役を演じた綾野は、「迷ったら監督に聞けばいいという、こんなに調べが必要ない現場も初めてでした」と振り返り、「脚本が本当にしっかりしていて。まさに「脚本」に出会った感覚だった。ある種の作家性みたいなものが完成されているので、僕も佑くんもほなみさんも、ただ台詞を言うだけで成立するようにできていた。だから、余計な情報をなるべく削いでいきました」と、脚本の素晴らしさを語ると、監督が笑顔に。すると綾野は「やっと笑いましたね」と嬉しそうに返し、監督も「褒め殺し？(笑)」とまんざらでもなさそうだった。

さらに、共演した柄本佑について綾野は、「そもそも僕は佑くんのファンで。明さんとも時生くんとも共演経験があって、柄本家は映画界には欠かせないファミリー。基本的にはうっとりしてました(笑)」と柄本へのリスペクトを語ると、監督も「天才肌だね。あいつがやると安心感があるからね」と称賛していた。

最後に綾野が「ある種のノスタルジーとエモさがある作品で、どこか懐かしいと感じていただける部分もあって。嗅いだことのある匂いがこの作品にはあるはずです。観終わった後に皆さんの中に育まれるもので完成するように作っているので、皆さんの中で完成に導いてほしいと思っています」と作品をPRし、舞台挨拶は終了した。

取材・文／華崎陽子

（2023年10月25日更新）