W主演を務めた佐藤浩市＆横浜流星が大阪に！
互いへのリスペクトの思いが滲み出る
映画『春に散る』大阪舞台挨拶レポート

沢木耕太郎の集大成とも言われる小説を瀬々敬久監督が映画化した『春に散る』が、8月25日(金)より、TOHOシネマズ梅田ほか全国にて公開される。不公平な判定負けを経験したふたりのボクサーが、共に世界チャンピオンを目指す姿を描く。

佐藤浩市と横浜流星がW主演を務める他、共演に橋本環奈、坂東龍汰、松浦慎一郎、片岡鶴太郎、窪田正孝、山口智子ら豪華キャストが名を連ねている。そんな本作の公開を記念し、8月8日(火)、TOHOシネマズなんばで、W主演を務めた佐藤浩市と横浜流星が先行試写会の上映前に登壇し、舞台挨拶を行った。

まずは、もはや常連と言える瀬々組の現場の雰囲気について佐藤は「あんまり仲良くないんですけどねぇ(笑)」と言いながらも、「なぜかお付き合いは長いですね」と笑顔。一方、瀬々組は初めてだった横浜は「とにかく熱かったですね、瀬々さんが」と言い、「まず、監督から「この本に全てが込められている」と「ＺＥＲＯ」という漫画をいただいて。その後、ボクシングの練習に入ったら結構な頻度で来てくださった」と振り返った。

そして、本作をきっかけに先日、横浜がボクシングのプロテストに合格したことを司会が紹介すると会場からは大きな拍手が。横浜はその理由について「撮影中に浩市さんや皆さんから後押しされたこともありました。撮影が終わってから受けたのは、格闘家への敬意を表したかったのと、単純に、この作品にかける思いを証明したかった」と、作品とボクシングへの熱い思いを力強く話していた。

また、劇中に多数登場するボクシングのトレーニングシーンについて佐藤は「彼は格闘技をリスペクトしている人間なので、パンチが強いし重い」と前置きし、「野球でキャッチャーがピッチャーの球を受ける時に、「きてるよ」と思わせるために、とにかくいい音をさせて獲る。それと同じで、いいパンチがきてると気持ちを盛り上げるための音がいる。だから、いい音をさせるためにはパンチを受けに行く。かなり衝撃がくるので、僕は肩が一番痛かった。これでゴルフができなくなったらプロデューサーを訴えようかと(笑)」と撮影前の練習を振り返りながら語っていた。

一方、横浜は「やっぱり痛みを知っているので躊躇する部分はあった」と前置きし、「それでも、やるたびに浩市さんが「思いっきりこい」と言ってくださるので、その言葉に乗っかって思いっきり。でも、痛そうにされているのも見ていたので「申し訳ないです」と思っていた」と振り返った。さらに続けて、「ミットは信頼関係が成り立たないとできないもので、それを撮影前から練習させてもらえたので、言葉を交わさずとも心で距離を縮めることができたのはありがたかった」と感謝の思いを語っていた。

さらに、本作で描かれる、若い頃に同じボクシングジムで練習していた3人の男達のドラマについて佐藤は「いわば負け犬に近い、人生で一番良かったのがボクシングをやっていた時で、世の中に対して斜に構えているところがある初老の男たち。何かを取り戻したいと思っていることを感じさせてくれる映画になった」と自信を覗かせた。そんな大先輩の姿を見て横浜は「幸せな環境の中で翔吾として生きられた」と感無量。「もっと撮りたかったし、もっと皆さんといたかった。でも、その儚さがいいのかな」と感慨深げに振り返っていた。

この舞台挨拶前に道頓堀の大型ビジョン「トンボリステーション」に生出演したふたり。それについて佐藤は「僕が初めて大阪に伺わせてもらったのが深作欣二監督の『道頓堀川』で、ひっかけ橋で渡るシーンから撮ったはず。多少変わったけど大阪の街の雰囲気が残っていた」と、撮影の思い出を交えて感想を話し、横浜も、「活気づいてきているように感じた。立ち止まって見てくれていて嬉しい気持ちになった。もう少し映画のことを話したかったけど、楽しかった」と感想を語っていた。

最後に、横浜が「存分に映画を楽しんでください。きっと熱い作品になっていると思います」、佐藤が「お暑い中ありがとうございます。映画はもっと熱いです。最後まで観ていただいたら、もっと大きなお土産を持って帰ってもらえる映画になったと思います。お互いに打ち合わせしたわけでもないのにペアルックのようにゆるゆるパンツです。これでもうふたりの関係がわかるはず」と作品をPRし、舞台挨拶は終了した。

取材・文／華崎陽子

（2023年8月 8日更新）