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ホーム > NEWS > 原恵一監督が映像制作を志す学生に向けて 厳しくも温かいエールを送った 映画『かがみの孤城』原恵一監督 トークイベントin大阪芸術大学レポート

原恵一監督が映像制作を志す学生に向けて
厳しくも温かいエールを送った
映画『かがみの孤城』原恵一監督
トークイベントin大阪芸術大学レポート

2018年の本屋大賞をはじめ、数多くの賞に輝いた辻村深月の同名小説をアニメーション化した『かがみの孤城』が、12月23日(金)より、大阪ステーションシティシネマほか全国にて公開される。あることをきっかけに部屋に閉じこもり学校に行かなくなっていた中学生のこころが部屋の鏡に吸い込まれ、おとぎ話のような世界へ向かう様を描く。

『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』や『河童のクゥと夏休み』、『カラフル』の原恵一が監督を務め、當真あみ、北村匠海、板垣李光人、高山みなみ、梶裕貴、芦田愛菜、宮﨑あおいなど豪華声優陣も話題を呼んでいる。そんな本作の公開を前に12月13日(火)、大阪芸術大学で行われた先行試写会の上映後に、原恵一監督が登壇し、トークイベントを行った。

登壇した原監督は「今日は12月13日で、昨日の12日は特別な日」と前置きし、「昨日、初号試写を済ませた」と本作にとっても大事な日であると同時に、「12月12日は、松竹を代表する映画監督である小津安二郎の誕生日であり命日です。今年は生誕120年なので、60年前に60才で亡くなった小津監督の作品は今でも日本の国内の若い観客、それ以上に海外の若い観客に観られ、尊敬され続けています」と日本を代表する映画監督の名前を出して語りだした。

続けて、「僕は、映画というのはそれぐらいの力があると思っています。小津安二郎監督みたいな大監督を例に出すなんて僭越ではありますが、これからこういう世界に入ろうとしている皆さんに向けては、60年前の映画が今でも輝き続けている、映画というのはそれぐらい素晴らしいものだと理解してほしいと思います」と学生に向けて映画への思いを熱く語り、トークイベントは始まった。

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本作をアニメーション化するに当たっては、「すごくシンプル。読者を裏切らないものにしたいと思った」と語り、「居場所のない少女の話ですが...」とMCが監督に話を振ると「そこには別に思い入れはないんだよね。プロデューサーや宣伝の方たちは何かしらワードを付けたがるけど」とぶっちゃけ、「僕なんか居場所なんてなかった。求めちゃだめ。居場所なんかなくて当たり前だから。居場所がないなんて悩むのはやめた方がいい」と監督の持論を学生たちにぶつけていた。

そして、学生から「原作ありきの映画でのアニメ化するメリットやアニメの方が優れているところは?」という質問に対して、「裏切らないとともに、お得感も感じてもらいたいと思いました。原作では出てこない光の階段や願いを叶える部屋の空間などのビジュアルはアニメのオリジナルです。ただ文章を映像化するのが正しい映画だとは思わないので、物語を豊かにするために映像ならではの発想が必要だと思っている」と返答。

さらに、「原恵一監督は長い間、第一線で活躍されていますが、今のお客さんの変化を感じていますか?」という質問に対しては「お客さんの変化は確かに感じています」と前置きし、「お客さんがあまり映画を観て想像をしなくなっていると感じています。わざと曖昧にしているシーンがあるのに、いつの頃からかそれが曖昧でわからないから良くないという印象を持つお客さんが増えているような気がしています」と本音を吐露。

続けて、「出資者側もそれを意識して、ものすごく丁寧にわかりやすく、何の疑問も持たずに観終えるような作品を作るようになっている。僕はそれには断固反対です。映画はわからなくて当たり前なんです。持ち帰ってちゃんと考える。観終わった後に解釈の違いを友だちと言い合いをする。それが健全な映画の見方だと僕は思います。その方が残るんです。モヤモヤするから。わからなかったことが10年後ぐらいに答えが出たりする」と映画の観方に対する持論を熱く語っていた。

最後に、原監督は「この中の多くの人が映像制作の道に進みたいと思っていると思います。全員の夢が叶うことはないです」と断言。「だけど、誰かの夢は叶う。その違いが何なのかを考えてほしい。僕は諦めないことがすごく大事だと思う。日本映画もアニメーションの現場も製作状況は過酷です。人を感動させることを仕事にしたいんだったら、ちょっとやそっとの苦労があって当たり前なんです。若いうちは修行だから、夜寝られないことや怒られることも絶対にある。それぐらいみんな真剣にやっているから。それでも、自分の居場所がたぶんいつか見つかる。それを信じて怯むことなく映像制作の道へ進んでください。もしかしたらどこかで皆さんの中の誰かと仕事で会うことがあると思う。そうあってほしいと思う」と、学生に向けてエールを送り、トークイベントは終了した。

取材・文/華崎陽子




(2022年12月13日更新)


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Movie Data




(C) 2022「かがみの孤城」製作委員会

『かがみの孤城』

▼12月23日(金)より、大阪ステーションシティシネマほか全国にて公開
声の出演:當真あみ 北村匠海
吉柳咲良 板垣李光人 横溝菜帆 ・ 高山みなみ 梶裕貴
矢島晶子 ・ 美山加恋 池端杏慈 吉村文香 ・ 藤森 慎吾 滝沢カレン / 麻生久美子
芦田愛菜 / 宮﨑あおい
原作:辻村深月「かがみの孤城」
主題歌:優里「メリーゴーランド」
監督:原恵一

【公式サイト】
https://movies.shochiku.co.jp/kagaminokojo/

【ぴあアプリ】
https://lp.p.pia.jp/event/movie/228301/index.html