寺島しのぶ、豊川悦司らが舞台挨拶に登壇！
映画『あちらにいる鬼』大阪舞台挨拶レポート

直木賞作家・井上荒野が、父・井上光晴と母、父と関係のあった瀬戸内寂聴をモデルに創作した同名小説を映画化した『あちらにいる鬼』が、11月11日(金)より、大阪ステーションシティシネマほか全国にて公開される。それぞれに家庭を持つ作家の男女がひかれ合い、肉体関係だけでなく"書くこと"でより深く繋がり、互いにかけがえのない存在になっていく様を描く。

寺島しのぶが瀬戸内寂聴をモデルにした人気作家の長内みはる、豊川悦司が井上光晴をモデルにした白木篤郎、広末涼子が白木の妻・笙子を演じている。廣木隆一が務め、脚本は荒井晴彦が手掛けた。そんな本作の公開に先立ち、11月4日(金)、大阪ステーションシティシネマで、W主演を務めた寺島しのぶと豊川悦司、そして瀬戸内寂聴さんの秘書である瀬尾まなほが登壇し、上映前に舞台挨拶を行った。

朝早くから大阪で取材を受けていたというふたりに大阪の印象を尋ねると、豊川は「大阪駅の前がこんなに変わっていてびっくり。こんなんやったかな!? と。大阪の街に似合わない気がします(笑)」と大阪駅の変貌ぶりに目を見張ったそう。すると寺島は「案内してもらおうと思います(笑)」と返していた。

まずは、オファーを受けた時の気持ちについて寺島は「廣木さんと豊川さんとは本当に久しぶりで、共演の回数は多いけど年月が経ってしまって。おふたりとだったらぜひやらせていただきたいと、本とキャストで決めた」と力強く語り、豊川も「廣木隆一監督と寺島さんと一緒に仕事ができることがすごく嬉しかったので、ぜひやりたいと思った」と前置きした上で、脚本を読んだ時は、「実在の有名な方々がモデルで、その方に所縁のある方もたくさんいらっしゃるので、そんな中で自分が白木という男にどうアプローチできるのか難しく感じた」と真摯に語っていた。

また、撮影中のふたりの会話について寺島は「私たちあんまりしゃべらないので(笑)」と前置きし、「メールを交わしてひと言「丁寧にやりましょう」と言ったぐらいかな」と語りかけると、豊川は「彼女と仕事をする時は毎回、セッションのように、やっていく中で自分の思いがどう変化していくのかというのを大切にしています」と何度も共演しているふたりだからこその関係性を語っていた。すると寺島は「豊川さんに身を任せていれば何とかなる」と返すと、豊川も「僕の方が身を任せていたと思う(笑)」と言いながら、「僕にとって寺島さんは特別な存在の女優さんで、役や台詞を超えて向こう側にある感触に手が届く感じがする」と絶賛。

そして、瀬戸内寂聴さんの秘書である瀬尾は「こんな豪華な方々と一緒にいるのは場違いだと思いますが」と前置きし、本作の感想について「客観的に観られず、いろんな感情が溢れてしまった」と言い、「私が知る瀬戸内は、88歳の晩年だったので、寺島さん演じるみはるを通して、出家前後の瀬戸内はこんな感じだったのかなと感じた」と感情移入しながら観たよう。続けて、「瀬戸内は映画化を楽しみにしていて、寺島さんと豊川さんが演じてくださることを大喜びしていて、この場にいたら「トヨエツっていい男よ。寺島さんはすごい女優」と言っているように思います」と瀬戸内を思い出しながら語っていた。

さらに、見どころを聞かれると豊川は「物語が40歳から始まるので、もう俺キツイんじゃないかと。そこが一番自信のないところ」と笑わせた上で、「30年近い年月のお話なので、時代背景も含めてキャラクターや関係性が変化していく過程が楽しめる」とPRし、寺島は「3人の人間関係」と言い、「誰にも真似はできないし、他人がとやかく言うことではない。まるで鬼ごっこのような感じで、鬼ごっこのルールを守っている人たちの話。３人の関係性は特別」と独特の表現で説明し、この映画を観た後には「人との出会いや縁は切なくて愛おしくて尊い。自分に置き換えても、廣木監督や豊川さんとご一緒させていただいたことも縁だなと。そういうことを幸せに思いたいと感じられる映画」と作品をPRし、舞台挨拶は終了した。

取材・文／華崎陽子

（2022年11月 4日更新）