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ホーム > NEWS > 撮影していた友人が、映画の完成を待たずに自殺 3人の若者たちが選んだ“モラトリアム”の行方とは? 異色ドキュメンタリー 『わたしたちに許された特別な時間の終わり』公開

撮影していた友人が、映画の完成を待たずに自殺
3人の若者たちが選んだ“モラトリアム”の行方とは?
異色ドキュメンタリー
『わたしたちに許された特別な時間の終わり』公開

 大阪西成で撮影した『解放区』でも今話題を集めている監督であり、岡田利規が主催する演劇カンパニー「チェルフィッチュ」に俳優として参加するなど、多彩な活動で知られる新鋭・太田信吾による異色のドキュメンタリー『わたしたちに許された特別な時間の終わり』が、12月13日(土)より大阪・第七藝術劇場、京都・立誠シネマにて公開される。
 
 駆け出しの映画監督である太田は、かねてより撮影していたミュージシャンで友人の増田壮太を自殺で亡くしている。本作は、突然この世を去ってしまった増田の遺言「映画を完成させてね。できればハッピーエンドで」という言葉に太田監督が向き合い、増田とバンド仲間の冨永蔵人、そして太田監督自身、3人の若者が夢と現実の狭間で葛藤しながら、それぞれの“モラトリアム”と対峙する姿を映し出す。
 
 本作が長編初監督作となった太田監督は、「映画は、ひとつのメッセージを伝え、他の人を排除したり対立を生むのではなく、対立の中で生まれる議論や、それを生み出す場を作り出すのが大事」と本作の狙いを語る。「例えば、自殺はダメだと言ってしまうのではなく、自殺の細部をもっと見ていく作業が大事。狙って死ぬ(映画では「自殺の才能」と表現)人もいれば、その日の感情で動く人もいる。それを顕在化させたかった」。
 
 2006年ごろから撮影していたという増田のライブ映像を随所に挿入し、その歌声や歌詞から増田のパワーや、戸惑い、そして死に対する受け止め方が感じられる。一方、途中でバンドを辞め、長野県・天龍村で村の人たちの世話になりながら自分なりの音楽を追求する蔵人の生き生きした姿は、疲弊していく増田と対照的に映る。そして、ふたりを映していたはずの太田監督自身も、カメラの主導権を奪われ、自らのみっともない部分をさらす展開が訪れる。ドキュメンタリーとフィクション、現在と過去、撮影者と被写体が緻密に交錯しながら、そこから浮き上がるのは、とても不器用で生々しい若者たちの感情なのだ。
 
 『わたしたちに許された特別な時間の終わり』というタイトルに込められた意味を、「岡田利規さんの同名小説を読んだときに、この映画に出ているキャラクターたちとどこか通じるものを感じた。モラトリアムを引き延ばす人もいれば、それを終わらせたり、まだ終わっていない人もいる。モラトリアムの終わり方や、終わらせなくてもいいのではないかという部分を考えてもらいたかった」と語った太田監督。増田が願った“ハッピーエンド”は、映画の中で完結するのではなく、観客や作り手に繋がってほしいとの願いも込められている気がした。
 

(取材・文/江口由美)



(2014年12月11日更新)


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Movie Data


©MIDNIGHT CALL PRODUCTION

『わたしたちに許された特別な時間の終わり』

●12月13日(土)より、第七藝術劇場、立誠シネマ、
 2015年1月9日(土)より、神戸アートビレッジセンター
 にて公開

【公式サイト】
http://watayuru.com/

【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/165403/

Event Data

舞台挨拶決定!

日時:12月13日(土)・14日(日) 13:30の回
会場:第七藝術劇場
登壇者(予定): 土屋豊(プロデューサー)/冨永蔵人(出演)
料金:通常料金

日時:12月14日(日) 18:40の回上映後
会場:立誠シネマプロジェクト
登壇者(予定):太田信吾(監督)
       土屋豊(プロデューサー)/冨永蔵人(出演)
料金:通常料金