『接吻』の万田邦敏監督5年ぶりの最新作
“イヌと飼い主”として共に暮らす男女の姿を描く
映画『イヌミチ』が神戸で公開!
『UNLOVED』(01)や『接吻』(08)など、国内外から注目を集める映画作家・万田邦敏監督が映画美学校とのコラボレーションで作り上げた5年ぶりの新作映画『イヌミチ』が、6月6日(金)より神戸映画資料館にて上映される。
学生から社会人まで幅広い層が通う教育機関・映画美学校の修了生には、『ほとりの朔子』の深田晃司や『Playback』の三宅唱など、映画界で活躍する者が比較的多い。同校で講師をし、本作で監督を務めた万田は「在学中にすごい映画を作るというより、卒業後にその学校で出来た仲間と一緒に続けていく継続力が強いのかも」と分析。また教える側のスタンスとしては、「プロに育てることが目的ではなく、みんなで映画のことを考えて映画を作っていく。ちょっと違う形で映画に関わっていこうよと思っているんですが、生徒もそれを嗅ぎ取ってくれてるんじゃないかな」と述べた。
映画『イヌミチ』は、同校脚本家コースの生徒・伊藤理絵によるもので、様々な選択を迫られ、毎日に疲れを感じてしまった女性と、プライドもやる気もない男性が偶然に出会い、“イヌと飼い主”として共に暮らす姿を描くという内容。“イヌと飼い主”というと、どうしても性的な関係を連想しがちだが、伊藤自身がイヌ好きで、人間に与えられたモノがすべてであり、そこに疑問を持つこともない生き物(=犬)を見ていて、羨ましいと思ったことをきっかけに書かれているため、性的な関係ではない不思議な男女の関係が浮かび上がっている。この脚本を読んで最初は戸惑ったという万田は、「僕には思いつかないし、僕には書けない。僕の世界ではないなと正直思った。本作は、伊藤さんが書いた脚本の面白さを僕がどういう風に描けるかに挑んだ作品」と話し、続けて「どろどろの関係にすると別の映画になってしまう。それはそれで撮りたいですけどね」と笑った。
今回の伊藤、そして『UNLOVED』『接吻』では万田の妻が脚本を担当しているが、女性が描く脚本について訊ねると「妻の脚本だったとしても、自分の知らない世界が書いてあるので最初は反発があるんです。そこから、なんでこうなるのか。なんでこんなこと言うのかと聞いて、納得するまで練っていくという、やりとりが出来るのが楽しい。『イヌミチ』に関しては、伊藤さんとそこまで詰めたやりとりはなかなか出来なかったですが、やっぱり女性の書いたものは面白いなって思います。女性の力は強い。男性とはぜんぜん違う世界観があって驚かされることが多々あります」と話した。
この映画の主人公・響子は不幸せなわけではないが現状に満足が出来ないでいる、どこにでもいる女性。万田は「僕なんかは古い世代の人間なんで、何をやるにも理由を求めちゃうけど、劇中に「理由なんかねーよ」という台詞があって、この映画はまさに理由なんかない人たちの話です」と解説。そして、「今の30代前後の女性が抱えている感覚を持つ主人公が犬になるおとぎ話なんです。変わってはいるけど、変な映画じゃないです。よろしくお願いします」とメッセージを残した。
(2014年6月 5日更新)
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