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原田芳雄がかねてから温めてきた短編小説の映画化
コミカルでありながら、時にシリアスな感動作
『EDEN』初日舞台挨拶レポート

 多くのファンに惜しまれながらこの世を去った名優、原田芳雄。彼がかねてから温めてきた船戸与一の短編小説『夏の渦』を映画化した人間ドラマ『EDEN』が、シネ・ヌーヴォ(九条)と第七藝術劇場(十三)にて大ヒット上映中だ。舞台は、新宿にあるショーパブ“エデン”。今日は、店長で演出家のミロの42歳の誕生日だ。しかし、そんなめでたい日に仲間のノリピーが、ミロの部屋で死んでしまう。その夜、エデンには複雑な想いを抱きながらいつもの仲間が集まってきて、身の上話を始め…

 
 原作が発表された当時大きな反響を呼んだが、登場人物のほとんどがニューハーフやゲイの為、日本での映画化は不可能と言われてきたが、『パッチギ!』『フラガール』等の李鳳宇が製作、羽原大介が脚本を担当、豊富な助監督経験を持つ武正晴が監督、山本太郎が主演を務め、中村ゆり、高橋和也、高岡早紀ら個性豊かなキャストが集まり、コミカルでありながら、時にシリアスな、味わいのあるテイストを生み出す作品となっている。そんな本作で、武正晴監督、木下ほうか、山本太郎、齋賀正和、小野賢章が登壇した、初日舞台挨拶をレポートいたします。 
 
――まずは、それぞれ挨拶から。
 
武正晴監督(以下、武監督):大阪初日、たくさんの人に足を運んでいただきまして、本当にありがとうございます。
 
木下ほうか(以下、木下):大阪は地元なんですが、この劇場(シネ・ヌーヴォ)は、12年前に自分が初主演した映画(『sWinG maN』)の時にも寄せていただきました。それ以来で来れたので嬉しいです。
 
山本太郎(以下、山本):山本太郎の遺作『EDEN』にこれだけの人が~(笑)って、冗談じゃなさそうなのが怖いですね(笑)。本当ありがとうございます。
 
齋賀正和(以下、齋賀):どうもペペロンチーノですー。東京から車でやってまいりました。
 
小野賢章(以下、小野):いきおいで大阪まで来ちゃいました。
 
――齋賀さんと小野さんは普段からそういった格好をしているわけではないんですよね?
 
齋賀:わたしはここ最近ずっとこうです(笑)。東京でこの映画が公開されてから1年ほど。
 
木下:公開中の劇場の近くで普段でもこの格好で宣伝をしてるんですよ。
 
齋賀:勝手にやらせてもらってます。
 
――ははは(笑)。一緒に写真撮っていただいたりしてもいいんですか?
 
齋賀:もちろん。でもひとつだけ条件があります。必ずウェブに載せること!
 
――小野さんは『ハリー・ポッター』のハリー役など声優さんをしてらっしゃいますが、そういう格好は初めてですか? 
 
小野:はい。
 
――似合いますねぇ。
 
齋賀:あら、それ、わたしにはなかったわね(笑)。
 
――すみません。質問に入ります。この映画は原田芳雄さんの企画なんですよね。
 
武監督:原作は90年代の古いもので、その頃に芳雄さんが、(今回、山本太郎が演じた)ミロを演じたいと言っていたところから話は始まったんですが、いろいろ時間が掛かりまして。芳雄さんが亡くなる前にもう一度、映画化の話が出たんですが、さすがに年齢的にミロは難しいから他の役でという話もしていたんですが、亡くなられてしまい間に合いませんでした。芳雄さんは「オカマを演じたい」とおっしゃっていました。
 
――山本さんは、そんな原田芳雄さんが演じたいと言っていたミロ役が来たときどんなお気持ちでしたか?
 
山本:その話を聞いたのは、撮影に入る直前でした。一番最初に、エグゼクティブ・プロデューサーの李鳳宇さんからこのお話をいただいたときというのは、ちょうど僕が原発の発言や事務所を辞めたりして、この先仕事どうなるんやろなと思ってる時に電話で言われたんです。「映画撮るんやけど、協力してくれへんか?」と言われて「もちろん。で、どんな役なんですか?」と聞いたら「主役やぞ!」と言われて腰抜けそうになりましたよ(笑)。使っていただけるだけでも気合入ってますねと言える感じなのに、何かの間違いじゃないかと思いました。放送禁止男が主役を演じてるということで『EDEN』という映画は宣伝に苦戦してるんですけどね。だから出演者が時間あるときは必ず劇場に行ったりしてます。
 
齋賀:ずっと暇やから(笑)。
 
山本:しかも全部、自腹なんですよね。プサン映画祭も自腹で来たんですよ。映画館でこの格好でショーしてね。今回も、予算ないからワンボックスカーにみんな乗り合わせてね。
 
武監督:僕も乗って来ましたよ。
 
山本:監督もですか? 監督にはせめて夜行バスくらい出来なかったのかなと思うんですけど。
 
――ははは(笑)。このミロという役はどんな役でしたか?
 
山本:僕の脱原発がどうしたこうしたというところよりも、単にミロという男とぼくを照らし合わせて合うん違うかと思っていただいた。本物の映画はこの役にこいつは合うか合わないかでしかないんですよね。そういう方々が、ぼくがこの先どうなるのかというところで手を差し伸べてくださったということです。実はこの作品、撮影期間が11日間なんですよ。ありえない殺人的なスケジュールですよ。よくスタッフ内で死者が出なかったなと(笑)。
 
武監督:最後、わたしが倒れそうになりましたけどもね(笑)。
 
山本:この内容を11日間でというのは本当にありえないんです。この分量をこの期間で撮れるのは武さんしかいないですよね。いろんな監督に頼られてますよね。
 
木下:この間ね、ちょっと久々に映画作ったんですよ。その時も来てもらったんですよ。演出部として。武さんいなきゃ出来なかった。本当すごい助かりました。『岸和田少年愚連隊』で出会ってね、当時は怖かったけどよく知ってるんでね。
 
山本:井筒さんからも現場に呼ばれたりね。
 
木下:『黄金を抱いて…』も行ってるし。
 
山本:(観客に向かって)みなさんも映画作る時に声かけてください(笑)。
 
武監督:どうぞお願いします。一生懸命やるタイプです(笑)。
 
――ははは(笑)。現場も楽しそうですね。
 
木下:楽しいことは楽しいですね。でも僕もこんなん(女装)したかったですけどね(笑)。冒険したかったです。
 
――ははは(笑)。では、最後のメッセージをお願いします。
 
小野:僕も自信を持って素敵な映画だと思います。みなさんのお力でもっと広がっていけばいいなと思います。
 
齋賀:東京でも勝手に舞台挨拶をやってましたが、大阪でも勝手に出来たらいいなと思ってます。劇場に行ったらおねぇに会えるかもよと宣伝していただけたら嬉しいです。みなさんの愛で『EDEN』を育ててあげてください。
 
山本:大阪に来れたことも、東京でも上映期間が延長になったり、またアンコール上映になったというのは、この作品を愛した出演者が映画館に毎日通って毎日舞台挨拶してるのもすごい大きいことやと思うんです。大阪で上映してる間も時間が許す限り足を運ぶということですし、ぼくも時間があればまた来たいと思ってますので是非周りにお声がけしていただきたいです。
 
木下:『EDEN』よろしくお願いします。えっと、2月にNGKで『吉本百年物語』という舞台をやっておりますのでよろしかったら是非お越しください。また劇場(映画館)にも来ます!
 
武監督:本作を撮ってつくづく思ったのは、いい映画を作るためにはいい俳優を使えばいいんだなということです。昔から一緒にやってる仲間たちや、今回あたらしくご一緒したメンバーを別のところで見かけることもあると思いますが、是非応援してやってください。
 
 
 にぎやかで楽しい映画の舞台挨拶の終わりに、山本は「あと、業務連絡! 大阪で瓦礫の焼却が始まってます。是非みなさんマスクしていただきたいと思います。」と映画とは関係ないことだが、どうしても伝えたいこととして、ひと言つけ加えた。また、舞台挨拶後は、劇場の前で多数のファンらと気軽に記念写真を撮るなどの盛り上がりを見せていた。



(2013年2月 5日更新)


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左から、武正晴監督、木下ほうか、山本太郎、齋賀正和、小野賢章

Movie Data


(C)2012映画『EDEN』フィルムパートナーズ

『EDEN』

●シネ・ヌーヴォ、第七藝術劇場にて上映中

【公式サイト】
http://sumomo.co.jp/eden/

【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/160529/